表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
炎垂れて、命燃ゆ ─炎宿す少女、灯火を掲げる─  作者: 東歌
生存適性統理育成選抜試験編
18/25

放っておかない

一年生フロアの空き教室の一角。


私たちは青白い画面を囲んでいた。


「ルーカスから見るか」


スマホを片手に操作しながらダリアさんが言う。


「なんで俺?」


「なんとなくかな」


ダリアさんは統理庁の公式アプリを開いた。


そこに表示される検索欄。


【統理データベース(TDB)】


【閱覧権限:学生(制限)】


【検索対象:個人評価ページ/班評価ページ】


「これ、班評価も見れるんですね」


ダリアさんが検索欄にルーカスさんの名前を入力する。


するとすぐに評価が表示された。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【個人評価ページ】

氏名:ルーカス・アゼリア

学年:1年

班:第七グループ

━━━━━━━━━━━━━━━━━━


権理出力:A

権理制御:A

機動力 :A

耐久力 :B

戦闘センス:A

継戦能力:B


総合評価:A

━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「うーわ」


ルーカスさんが眉をひそめる。


「なんかこう、ここまで記録されるとなんとも言えない気持ちだよな」


「でも総合評価Aなんだからいいじゃん」


ダリアさんはそうフォローを入れながら、自身の名前を入力する。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【個人評価ページ】

氏名:ダリア・フローレンス

学年:1年

班:第七グループ

━━━━━━━━━━━━━━━━━━


権理出力:B

権理制御:A

機動力 :B

耐久力 :B

戦闘センス:A

継戦能力:A


総合評価:A

━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「あ、権理制御Aか……。水の能力だからもっと評価つくと思ったんだけど。まあ、今回あんまり水の力使ってないし」


「水は繊細だしね」


そしてノアさんの評価。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【個人評価ページ】

氏名:ノア・ベネディクト

学年:1年

班:第七グループ

━━━━━━━━━━━━━━━━━━


権理出力:B

権理制御:A

機動力 :S

耐久力 :B

戦闘センス:A

継戦能力:B


総合評価:A

━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「機動力S……」


ルーカスさんが小さく漏らす。


「まあ、風理だからね」


ノアさんが当然のように言う。


「それでもSはやばいだろ」


「ていうかさ、この文章、なんか気味悪くない?」


ダリアさんはそう言うと、画面の下部を指さした。


【※一部情報は統理庁権限により非公開】


「僕たちが見れる情報はどうやら限られているようだね」


「非公開」という言葉に隠された情報は、一体何なのか。


知りたいような、知りたくないような、複雑な気持ちになった。


「トモリのも見ていい?」


ルーカスさんやノアさんの評価を見るときとは違い、明らかに気を使っているのが分かった。


私は少し迷った。


けれど、逃げるほうが怖かった。


「……はい」


ダリアさんが、私の名前を入力していく。


そして、私の評価が映し出された。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【個人評価ページ】

氏名:トモリ・アーレント

学年:1年

班:第七グループ

━━━━━━━━━━━━━━━━━━


権理出力:S

権理制御:C

機動力 :B

耐久力 :D

戦闘センス:B

継戦能力:A


総合評価:S


【※測定不能項目あり】

━━━━━━━━━━━━━━━━━━


最初に私が抱いた印象は、思ったより評価の差が激しい、ということだった。


他の3人はほとんどの評価がA、Bで構成されていて、安定感があった。


でも私の評価はバラバラだ。むしろ全体的に見るとBやDが多い。ところどころで出てくるS評価が、私をこの評価に押し上げたのかもしれない。


「耐久力がDなのに評価はSなんだね」


ダリアさんが驚いたように言う。


きっと私と同じような感想を抱いたのだろう。


ノアさんが小さく息を吐いた。


「矛盾しているね」


私は画面を見つめたまま動けなかった。


耐久力や権理制御が低いのに、火力は異常に高い。


「つか、おかしくねえか?ノアもトモリもSが一個ずつ入ってるのに、ノアの総合評価はAで、トモリがSって」


「非公開情報の中に、私がS評価の理由があるってこと、ですかね」


「気持ち悪。何隠してんだよ」


ルーカスさんが吐き捨てるように言った。


統理庁は知っているのだ。


私が何を持っているのか。


私の知らないところまで。


全てを。


静まり返った教室の扉が、突如として開いた。


私たちは、反射的に振り返る。


センター分けの赤髪に、紫色のメッシュが入っている。


左右で違う目の色。


今回の試験で二位を取った、第十グループのメンバーの一人だった。


彼は私たちを一瞥する。私の方を見て、表情が少し動いた気がした。


「自分を客観的に見るのは面白いだろう?」


赤髪を揺らして尋ねた。


「第十グループの人だね。自己紹介ぐらいしたらどうだい?」


少し前に出てノアさんが言う。


「アッシャー・カーシー。これでいいか?」


簡潔に自己紹介を終えると、ノアさんの横をするりと通り抜けた。


私の前で、立ち止まる。


「俺は試験中、お前の蒼い炎を見た」


心臓が跳ね上がった。


タイルさん、アリシアさん以外にも、あの炎を肉眼で見た人がいたから。


「あの炎は─────」


言いかけて止まる。


ほんの一瞬、アッシャーさんの目が鋭く光った。


「無理に使わないほうがいい」


「……どういうことですか」


「理由が知りたいか?」


私は頷いた。


「今はいい。そう遠くないうちにでも話す機会はやって来る」


アッシャーさんは部屋を出る。


扉を閉める直前、私の方を振り返り一言言った。


「統理庁は、お前を放っておかない」


扉が閉まり、静寂が戻る。


「変なことだけ言って帰っていったぞ、あいつ」


ルーカスさんが苛立ちを露わにする。


「近いうちに、って……」


ダリアさんも険しい表情で言った。


総合評価S。


非公開の評価。


答えはでない。


でも確かに。


運命の歯車は、少しずつ動き始めていた。


胸の奥が冷たい。


まるで、心にあの蒼い炎が宿っているようだった。

生存適性統理育成選抜試験編、これにて一区切りです。

ここまで読んでくださりありがとうございました!

次回から新章に入ります。引き続きよろしくお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ