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炎垂れて、命燃ゆ ─炎宿す少女、灯火を掲げる─  作者: 東歌
生存適性統理育成選抜試験編
13/25

それは何を焼く

モニターの向こうで、トモリの炎が揺れている。


ただし、色が異なる。


「なんだあれ……」


いつもの朱色ではなく、深い蒼色になっている。


そして目の色は、いつもの淡い紅色ではなく透き通るような蒼色になっていた。


髪の色も、いつもはグレーを基調とした髪に、淡い紅色なのに、紅色の部分が炎と同じく深い蒼色になっている。


それだけじゃない。何も燃えていないのだ。


意味が分からなかった。


いつもの朱色の炎だったら他の物も燃えていたのに今は、床も壁も、ガラス片も。


「何あれ……ルーカス、あの権理のこと知ってた?」


隣にいるダリアが呟く。


その声には、困惑と、驚きの感情が混じっていた。


「いいや、知らない」


「双権理が今覚醒したってこと?」


「……分からない。けど、双権理を持つ人なんてかなり稀だ」


ノアが呟く。その目には、「ありえない」という文字が刻まれていた。


「炎、だよね?」


誰かに向けた訳ではないダリアの問い。


だが誰も答えられない。


「違うんじゃないかな」


そう言ったのはノアだった。


「え、どういうこと?」


「風の流れがおかしいからね」


「風……」


「そう。普通炎が揺れれば空気も揺れる」


ノアが目をモニターに向けた目をより細めて言う。


「でもあれは違う。空気が動いていない」


炎なのに、熱がない。


炎なのに、空気を乱すことはない。


ありえない状況が起きている事実。


俺は直感で感じた。


俺たちは今、とんでもないものを目にしているのではないか、と。


モニターの中でタイルが言う。


「Stop」


一瞬だけトモリの身体が硬直する。


だが、すぐにまた動き始めた。


「消えてる……」


ダリアが声をあげる。


違う。


消えているのではない。


あれは────


「焼かれてる……」


「焼かれてる?」


ノアが聞き返す。


自分でも何を言っているのか分からなかった。


だが、自分の中ではその表現がいちばんしっくり来たのだ。


「いやでも、炎じゃない……?」


俺は自分で言ったあと、すぐ思い直した。


炎ではないものが、何かを焼けるわけがない。


「何言ってんだ、俺」
















【残りグループ数:3】


俺の左腕についた腕時計に、そう表示された。


「グレイス、残りのグループは見つかったか?」


俺は窓から情報収集をしているグレイスに話しかけた。


「ちょっと待って……あ、いた。ちょうど戦ってる最中」


「じゃあそこに行く」


俺はグレイスに呼びかける。


だが、グレイスはのりで貼り付けられたかのように動かない。


「どうした?」


俺はグレイスの視線の先を追う。


そこには静かに佇む銀髪の少年、白髪を一つに結んだ少女に、グレーの髪をした少女が跪いていた。


グレーの髪の少女の手には朱色の炎が浮かんでいた。


「あのグレー髪の女の子、見える?さっきから炎の動きがおかしい」


俺は彼女の炎に注目する。


確かに、その炎は普通では考えられないほど大きく揺れ動いていた。


やがて、炎は紫色へ変化する。


段々と、紫色の中に蒼色が混ざっていく。


そして、完全に澄んだ蒼になる。


「色が変わった……髪も目も。さっきの炎とは違いすぎる……双権理?」


グレイスが言う通り、これは双権理である可能性が高い。だが……


「本当に双権理なのか?」


「え、これが双権理じゃないならなにになるの?」


この現象を双権理以外で片付けられることはないだろう。


『権理って言うのはね、世界の法則に触れて干渉する力のものなんだよ』


かつての祖父の言葉を思い出す。


だとするなら、あれば何に触れている?


いや、違う。


きっとこれは、そんな単純な話ではないのだろう。


あとで解析すればいい。


俺は最後に蒼色の炎を目に焼きつける。


「いい。もう行こう」


俺がそういうと、グレイスはしばらく間を置いてから返す。


「……わかった。アッシャー」

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