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あの果てしない空の果て  作者: kai
吟遊と安寧編
41/46

41.受難

今回の登場人物

・有巣仁理

現代最強の能力者。能力の性能のみで最強と断定されたことに納得がいっていないため魔法と剣術を極めた。大学を中退したため日中が完全に暇な時間となり、酔っ払いや馬鹿に絡まれて困っている。


・舵原良也

有巣の親友。有巣とは高校時代に知り合ったため旧知の仲というわけではないが、常に冷静沈着な上に有巣の良き理解者であるため、互いに信頼関係を築いている。また、善悪の基準や行動指針を有巣頼りにしている節がある。


・宮本双葉

カス。無堂との特訓によって能力のON/OFF切り替えが可能になったため、能力をOFFにしてパチンコでボロ負けして楽しんでいる。誰とでも打ち解けることが出来る生粋の陽キャだが、何故か彼氏が出来たことはない。無堂の分析では「能力効果によって告白の成功率が5割で固定されているからでは?」とのこと。


・白井響香

有巣らによって救命された、無堂のクラスの学級委員長。物腰柔らかく適度に優しい典型的な清楚。無堂や宮本にもちゃんと品行方正を諭す根っからの聖人。最近、有巣が本当は女の子なんじゃないかと疑っている。

「っかぁ〜!美味い!!」

真昼間からおでんをツマミに日本酒をキメる宮本。

「カスが。」

「へへへヘへ。」

「カタカナを混ぜんな小賢しい。」

かく言う有巣も、平日の昼間からソファで怠けている同類である。

その時、

「やっぱり昼間から浴びるシャワーは気持ちが良いですね。」

トレーニングを終え、上裸のまま部屋に入って来る舵原。

「わ、わぁ!うわああああ!!!イケメンの裸体だああああああ!!!!」

赤面する宮本の隣に舵原は平然と座る。

「おでん、少し頂いても良いですか?」

「お前が用意したんだから一々許可取らなくても良いだろ。」

「では、遠慮なく。」

小皿と箸を取り、迷いなく餅巾着を口に放り込む。

「よくノータイムで行けるな。」

「猫舌は食べ方の善し悪しで決まるからね。」

「にゃ〜ん...」

「ハハ!可愛げがあっていいと思うよ。」

「なっ...え!?なんで!?」

今の今まで硬直していた宮本がようやく事態を理解して口を開く。

「有巣くんは私が全裸で座ろうとしたら烈火のごとく怒るのに...」

「そりゃ怒られるでしょう......」

「汚ぇ。」

「酷い!井桁くんも新城さんも生筋肉で座るじゃん!!」

「生筋肉...?」

「生筋肉......」

「だいたい、有巣が怒ることなんて本当にあるんですか?」

「本当だもん!!『殺すぞ』って言われたぁ!!」

あぁ...と舵原は有巣を見る。

「有巣が言うと冗談にならないね...」

「風呂上がりのびしょ濡れの状態で座ろうとしたら誰だってキレる。」

「ハハ!それは流石に宮本さんが悪いね。」

「くぅ!男同士で結束しやがって!!乳揉んでやる!!」

舵原の胸筋に触れる宮本。

「うわ硬ぁ......」

「鍛えてますからね。」

「有巣くんのおっぱいも触る!」

「ねェよ。」

千鳥足で有巣に駆け寄り胸に触れる宮本。

「......骨格標本?」

「ぶっ飛ばすぞお前。」

「全然柔らかくない...揉めない......」

「自分の乳揉めば良いだろ。」

「何が!哀しくて!自分のおっぱい触んなきゃいけないんだよぉ!!」


新しい酒を持ってきた宮本。馬鹿正直に自分の胸を触っている。

「有巣くん。」

返事をしない有巣。

「有巣くん。」

「んー?」

「有巣くんって彼女作らないの?」

「作らない。出来たことも無い。」

「えぇ意外!モテモテだと思ってた!」

「そもそも、あんま人と関わって来てねぇしなぁ。」

「えーもったいない。」

酒を呑み、宮本は少し考える。

「誰かに告られたら...受ける?」

「受けない。今の所は。」

「ホントに?」

「本当に。」

「ホントのホント?」

「うん。」

「おっぱい大きくても?」

「あ?」

「なんでもないです......」


汗が乾いたため服を着た舵原。ちょうどそのタイミングで戸が叩かれる。

「俺が出ようか。」

宮本は酔い潰れてソファで寝ており、有巣は台所で食器を洗っているため、舵原が玄関へと向かう。

扉を開けるとそこにいたのは白装束の男。

瞬間、

「おっと。」

男が突き出した腕を掴んで止める舵原。

男の手には針が握られている。

「残念でしたね。」

「なんのこれしき。」

男が懐から銃を取り出した次の瞬間、

「“黒鎖(アンブラジェイル)”」

「“射絶(イタチ)”」

白装束の男は黒い鎖で拘束され、真っ二つになった銃を取り落とす。

台所で半分になった割り箸を構えている有巣。そして、ちょうど通りがかった白井が刀を鞘に収めている。

「血の気が多いね。」

有巣が舵原に歩み寄る。

「やっぱ木製は駄目だな。割箸で良かった。」

「たまたま真剣を持ってたので良かったです!怪我はありませんか?」

制服を着たままなのにたまたま真剣を携帯している女子高校生などほぼ居ない。しかし舵原は冷静である。

「大丈夫。助けてくれてありがとうございます。」

「にしても、変な格好ですね。」

「そうか、白井は知らねぇのか。」

有巣が鎖を掴み男を引きずり込む。

「取り敢えず中に入りましょう。外では目立ちます。」

「はい!」


ステンレス製の箸を回すのに失敗して落とす有巣。

「刀は職質されるだろ流石に。」

「はい...ここに来るまでに5回されました......」

「残当だな。」

白井は能力免許により独断での実力行使と一部武具の携帯が許可されているため、刀の携帯は合法である。

また、能力免許を所持している者の監督下であれば所持していない者も実力行使のみ可能である。白井を救出する際に免許を持っていなかった宮本が能力を使用したのは、免許を所持している斑目・綾取・有巣の監督下にあったためである(なお、無堂はSクラスなので例外)。

男を部屋の端に放り投げ尋問を始めようとしたその時、部屋に鋭いガス漏れの音が響く。

(空気...?)

舵原が不審に思ったのも束の間、

「術式展開」

「おっと。」

「え」

「不味い!!」

白装束の男を中心として陣が展開する。

(魔力じゃない!霊力!俺が対応出来ない領域!)

男が展開したのは術式結界。固有の能力を拡張し押し付ける能力結界とは異なり展開時の優位性は低いものの、消耗が少ない上に難易度も低い。

その上、男が使用したのは霊力を動力源とする霊術。魔術よりも使用者はおろか、認識出来る者すらほとんど居ない稀有な術式。

しかし、展開が完了する前に男の結界は崩壊した。

「なっ...!?」

有巣の魔力によって相殺されたのだ。

「甘いな。」

有巣もまた、陰陽省と提携している霊術使いの一人。小細工で易々と突破されるレベルではない。

「遮断服は用意したのに相手の得意技を調べて来ないとは。」

遮断服とは、陽杯教信者が用いていた白装束と同一のものである。

「遮断服?って何です?」

「能力効果を遮断する布を使用した服です。あくまで遮断するだけで無効化するわけではない、というのがミソですね。」

「不織布みたいなものですかね?」

不織布とは、繊維を織らずに乱雑でランダムな構造のまま重ね合わせることで隙間を減らした素材のことである。

「はい。概ね。」

無論、この手の情報は仲間内で共有済である。白井に共有されていないのは、単にアジトに来る頻度が低いためだ。

「甘いのは、其方じゃないのか?」

直後、男の口元を覆う布が赤く染まる。

瞬間、

「っと、危ねぇな。」

男の居た位置で赤い球体が出来ている。

「えっと...有巣、何した?」

「小型の爆弾でも隠し持ってたのか知らんが、部屋を汚したら無堂に怒られるからな。能力で止めた。」

「自爆の方を止めることは出来なかったんですか...?」

「無理。遮断服着てるし。」

「あぁ...確かに......」

有巣の能力の本分は「止めること」である。故に、有巣は男の周囲の空間に対して能力を使用し、爆発の衝撃を止めたのだ。

当然、遮断服により爆弾に爆発前から効果を適用することは出来ず、爆発後では遅い。そのため、有巣は「空間の連続性を0にする」という回りくどい手段を用いた。なお、この手法は能力効果以外の遠隔攻撃を止める際にも用いている。

「というか、そんな小さな爆弾なんてあるんですかね...?」

「さぁ...詳しくないからわからん。」

球状の爆煙は閉じ込められているため消えない。空間を完全に分断してあるため、内部の音も聞こえない。

「これ大丈夫?」

泥酔から復活した宮本が有巣の肩に顎を置いて訊く。

「もうこの際だから窒息死させよう。毒ガスとか撒かれたら嫌だし。」

「うっわぁ卑劣。」

「言ってろ。」

有巣は10分ほど放置した後、中身の爆煙ごと陰陽省に引き渡したのだった。


その日のうちに陰陽省直轄の鑑識機関による検死が行われたものの、白装束の男の死体は上半身が激しく損壊していたため死因は不明のまま。また、出自や生前の行動の一切も判明しなかった。

しかし、陰陽省宗主の影山神子からある一点のみ、留意すべき点として有巣仁理に告げられた。それは、白装束の男の肉体が高密度の霊力により変質していたという点である。この変質はおよそ神格実体に見られるものと酷似しており、エネルギー暴走現象の防止に向けた重要な手掛かりである、と評議会では議論されている。



「有巣くん。」

宮本の呼び掛けに反応しない有巣。

「有巣くん!」

「んー?」

「どこ行ってたの?」

「んー...」

少しの間首を捻って考える有巣。

「...ちょっと言えないトコ。」

「やましい事はしてないだろうね?」

舵原が問いかけるが、有巣は即座に否定する。

「そんなんじゃない。けど詮索されるのも良くない。内緒にしておきたいからな。」

ふーん、と怪訝な顔をする宮本。

「それより、」

しかし有巣は意に介さず、上着の内ポケットからある文書を取り出した。

「全員集めろ。今すぐに。」

Tips:「評議会」

正式名称は「超常・特異対策評議会」。能力に関する法案の最終決定権や神格実体出現時の防衛指揮権などを持つ。メンバーは超能力委員会委員長、魔法省代表、道術院代表、陰陽省宗主とその4人が指名したSクラス能力者の計5人で構成されている。なお、メンバーの内訳はほとんどの国民に秘匿されている。

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