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フォックスの翼  作者: ジョニー
第1章
30/46

30.旅の計画

30


「コン、今日も良いのをやろう」

約束の時間通りに来た翔に、小鳥の体調が良くなったことを伝えると、翔はバックから何かを取り出した。


「これ、青森のマップ。前に一度行った時のやつだけどまだ使えると思う」


「ありがとう」


「出発はいつ?」


「まだ決めてない」


「なら急いだ方がいいな。小鳥のこともあるだろ?」


「分かってる。ただ、何をすればいいのかも、どこで絵を描けばいいのかも分からなくて」


「最初はそんなもんさ。逆にやることが全部決まってて、それ通りに行動しなければいけないのとかつまんねぇだろ? 自分でいろいろ決めるから楽しいのさ」


経験者は語った。


「あと、コンに会うのも今日が最後になる」


「え?」


「明日から出張で広島に行くんだ。帰って来るのは8月半ばぐらいになる」


「そっか…」


「落ち込んでくれるのは嬉しいけど、直接アドバイス出来るのも今日までだから、分からないことは今の内に聞いとけよな」


「そっか。ちょっと待って」


唐突に舞い降りた明日からいなくなる宣言。


急いで携帯のメモ機能を起動した。


「まぁ最悪、携帯は繋がるから。何か困ったことあったら電話してくればいいよ」


「分かった。ところで青森行きの飛行機って何時?」


「それは自分で調べろ。あと徳島から直接青森まで飛ぶ飛行機はないからな」


翔は旅行カバンの正しい選び方から飛行機の予約の仕方、旅に必要な必需品に至るまで事細かく丁寧に教えてくれた。


旅の出発日を明後日に決定した。


「今言ったやつは100均とかで揃うから、明日行けばいい。それと初日は移動とかで絶対疲れるはずだから今のうちにホテルを予約しといた方がいい。俺が使ってたホテルで良ければ教えるよ」


「ありがとう」


「ちなみに今何時?」


「え? うわっ、21時45分」


「がっつり話したな。他に聞いておくことは?」


「今は思いつかないかな。こういうのって、家に帰ってから『あれ聞いとけば良かった』とかない?」


「あるある。コンの場合、帰ってからの方が多いかもな」


「確かに」


バカにされた気がしたけど、言い返さない。旅に関しては翔の方が先輩だ。


「あ、カメラのことだけど、ちゃんとした使い方が分からなくて。いつか聞こうと思ってたんだけど、家に置いてきちゃった」


「なら使う時になったら電話して。今ここで口で説明しても分からないだろ?」


「わかった。いっぱい写真撮ってくるよ」


「写真は二の次でいい」


「そうはいかない。約束は守る」


「ありがと。そろそろ店出るか?」


「そうしよう」


僕はレジで2人分のお金を払った。


「大丈夫なのか?」


「うん。実は今日、親父から臨時収入があってさ。いつも奢ってもらってばかりだから」


「それじゃあ、お言葉に甘えて」


支払い金額は972円。安いものだ。


「ごちそうさま。ところで、旅の話は親に言ってあるのか?」


「母さんには言ってあるけど、親父にはまだ」


「今日帰ってすぐに言った方がいい。急に言ったらびっくりするはずだから」


「分かった。そうするよ」


「お金はあるのか?」


「翔、うちの親父みたいだな。バイト代があるからそれを使うよ。多分大丈夫」


「何かあったらすぐ電話してこいよ。8月2日から『ねぶた祭り』が始まるだろ? ホテルはすぐに埋まっちゃうから早め早めに予約した方がいい」


「ほんと色々知ってるな。丸1日かけて聞きたいぐらいだよ」


「じゃあ、またな。必ず電話してこいよ」


翔は自転車に乗って帰って行った。


その後、家に帰ってすぐ、リビングでくつろぐ父に旅の話しをした。


だがすでに母から話しを聞いていたようで「ちょっと待て」と言って二階に上がり、すぐさま降りてくると封筒を僕に手渡した。


後で分かることだが、中には5万円が入っていた。


「足りなくなったら言いなさい」


「ありがとう」


父はコクリと頷いてまた二階に上がって行き、今度は降りてくることはなかった。


その様子を台所で見ていた母が「フフッ」と笑っていた。

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