ギルドのテンプレ
「オイオイ、随分と湿気た空気じゃねぇか。今日は誰かの通夜だったか?」
男たちと話していると、耳障りな声と共にギルドの扉が開かれる。
入って来たのは、身なりの良い優男。
だが、その態度はあまりにも傲慢で、好きそうになれない。
「お、見ねぇ奴がいるな。何て名前だ?」
何故だろうか。俺がこいつを殴っている未来がイメージ出来る。
「初めまして。柿野瀬 優と言います。新しい『トリッパー』と言えば通じますでしょうか?」
この男を見た瞬間、今まで話していた男たちが舌打ちをした。
この男はやはり好かれていないのだろう。
「へぇ、『トリッパー』ねぇ。よし、お前、俺の下僕になれ。」
その言葉に流石に耳を疑った。
「今日下僕が一匹死んじまってよ、数が足りねぇんだ。俺の下僕になれるんだ。光栄に思えよ。」
「いや、遠慮します。」
俺の返答に、男は不思議そうな顔をする。
「オイオイ、せっかくこの俺が下僕にしてやるってのに、断るなんてどうかしてるぜ?」
「そう言われても、俺は今日ここに来たばかりで右も左もわからないんだ。そんな奴、足手まとい以外何でもないだろ?」
こういった輩は絡むな絡まれるなが基本だ。
さっさと諦めてくれないかな。
「何の騒ぎだい?」
そう思っていると、ネノさんが奥から出てきた。
「これはこれは、ギルドマスター。お久しぶりですね。」
「あんたか、ダダイ。」
ネノさんの眼が鋭くなる。
ダダイと言えば、サーノが言っていた奴だな。
というか、口調がよく変わるな。口調くらい統一しろよ作者。
閑話休題
「それよりも、先日の一件、考えていただけましたでしょうか?」
先日の一件という言葉を聞いて、ネノさんが顔をしかめる。
「残念だけど、無理だよ。確かにあんたの実力ならBランクになれるだろうが、一体何人があんたのせいで犠牲になったと思ってるんだい?」
「犠牲とはひどい言い方ですね。私が私の下僕をどう『使おう』と、貴女には関係の無い事だと思いますが?」
「何度も言うが、冒険者ってのは、信頼があって仕事を頼まれるんだよ。仕事を受けているんじゃない。もらってるんだよ。あんたみたいに仲間を死なせてばかりだと、信頼なんてされないよ。」
「その信頼も、実績あっての事ですよ?」
「冒険者として、実績は確かに大事だよ。でも、私は人としてのあんたを信頼してないからね。」
二人が沈黙し、言い争いが止まった為、俺はネノさんに話しかける。
「ところでネノさん、俺のカードは?」
「あぁ、できたよ。ギルドのランクは明日説明をするから、今日はもう休みな。あんた達も、冒険者は身体が資本なんだ。休める時に休みな。」
「その通りですね。では、私はこれで。」
そう言って、ダダイは真っ先にギルドから出ていった。
「優、あまりアイツに関わらないようにしなよ。アイツのせいで未来ある若いのが何人も潰れたんだ。『トリッパー』ってのは珍しいし、仲間にいるだけでステータスになる。だから昔は脅してでも仲間にしようとする奴がいた程だからね。」
どうやらというか、やはりというか、『トリッパー』とは面倒事に巻き込まれるようだ。




