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ギルド

 隣のギルドランス支店と書かれた建物に入ると、何人もの男が俺を見る。

「新しい『トリッパー』の優だよ。今から登録するから、あんた達は問題を起こすんじゃないよ。優、付いておいで。」

 ネノさん、口調が変わってると思いながらカウンター席に向かう。

「これが登録用紙だよ。ここに貴方の世界の言葉で書いてちょうだい。こっちで確認出来るから。」

 渡された紙に、氏名、年齢、性別を記入する。

「次はこれだね。」

 差し出されたのは白い名刺サイズの紙。

「これに魔力を込めると、得意な魔法の属性と、魔力量が分かるわ。」

「でも、魔力の込め方なんて知りませんよ。」

「簡単よ。紙を持ってそこに意識を向けるだけだから。」

 言われた通りに紙を持って、紙に意識を向ける。

 すると、紙が青と黄色に染まる。そして、中央に4979と数字が現れる。

「得意な魔法の属性は水属性と風、魔力は4979もあるね。」

 ネノさんの言葉に、ギルド内にいた連中から、オォー、と声が上がる。

「得意な魔法の属性は分かりましたが、魔力が4979というの、凄いんですか?」

 テンプレだと、無限とか、測定不能とかある為、あまり実感が無い。

「魔力が100もあれば魔法使いとしてやっていけるわ。ちなみな私の魔力は374。国のお抱えになるなら500は必要になるわ。ちなみに、今までの『トリッパー』の魔力で、最高は2334で、殆どが1000くらいよ。」

 国のお抱えってことは、かなりの魔力になるのだろう。それが10人分とか、チートだな。

 そういえば、神の使いは俺の魔力量が桁違いに多いと言っていたな。

「先に属性について説明をしましょう。」

 属性は、まとめるとこんな感じだ。

・属性は、火・水・風・土・無の5属性ある。

・得意な属性以外の属性も使えるが、やはり劣る。

「まぁ、その辺りは明日以降教えるから、大丈夫だと思います。これからカードを作りますので、少し待っていてください。」

 そう言って、ネノさんはギルドの奥にある部屋へ入って行った。

「よう、兄ちゃん。随分と魔力を持ってるみたいだな。」

 ネノさんの姿が消えた事を確認すると、男が話し掛けてきた。

「けど注意しろよ。今まで何人も『トリッパー』がいたが、どいつもこいつも身の丈に合わない事して死んじまったからな。」

「そうだな。『トリッパー』以外にも、若い奴は自分の力量が分かってねぇからな。死んでいく奴は、大体そんな奴らだ。」

 そう言われて、周りにいた男たちを見ると、ほとんどが中年と呼ばれてもおかしくない年齢ばかりだ。

「若い内に夢を見るのはいいが、あまり無茶はするなよ。死ぬ順番は、年老いた奴からでいいんだよ。」

 ギルド内の雰囲気は思っていた以上に暗く、重いものになっている。

「どなたか亡くなられたのですか?」

「あぁ。20にも成らない若い嬢ちゃんだ。明るくて元気が取り柄のな。俺らからすれば、娘くらいの歳になるからな。アンタも、俺らからすれば息子みたいなもんだ。だから、生き急ぐなよ。」

 その言葉に、この世界での命の軽さを思い知らされる。

 ここは争いのない日本ではない。

 ましてや、自分は勇者に選ばれるような主人公ではない。

 現実見ろよ。脇役上等。臆病結構。

 生き延びた奴が勝者であり、負けた奴が敗者である世界だ。

 勝てば官軍。

 まるで昔の日本だな。

「俺はまだ死にたく無いからな。もし冒険者に成っても、あまり危険の無い依頼しか受けるつもりはない。」

 ケンカ馴れしているとはいえ、所詮平和ボケした日本だけでの話し。

 どれだけ強く成ろうと、人は一発の弾丸に勝てること無く、どれほど強靭な肉体を持とうと、刃物の前では紙と変わらず、どれだけ鍛えても拳は岩を砕く事は出来ない。

 そして何より、人の心など、鍛える事すら叶わない。

 あの日、自分がどれだけ臆病で弱虫か思い知らされた。

 だが、今ではその事に感謝をしている。

 そのおかげで現実を見ることが出来たのだから。

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