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をぐらのさうし 巻之弐十六  作者: 小椋夏己
2026年 5月

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橋の下で拾った子

 SNSでちょっとどうかなという話題を目にしました。


 子どもに対して親が、


「おまえは橋の下で拾った」


 という話です。


 元の記事を書いた人は、もしかしたら毒親と呼ばれるかも知れない親だったようで、言われたその人が泣きながら「本当の親に会いたい」と言ったら、親に対してと叱られたらしい。


 その記事にいくつかのコメントがつき、他の人はその人の弟が、


「僕は橋の下で拾われた」


 とご近所に自慢してまわり、コメント主にも「おまえたちとは違う」みたいに言ったりしていたとか。


 そのコメントに「いつか本当の親が迎えに来てくれるかも」と喜んだという人もあり、親が無責任にそういうことを言うのはだめだろうと思いました。


 うちの親はそういうことを言ったことはないんですが、こんなことを言ったことはありました。


 小学校の3年生か4年生あたりだと思います、妹が母に、


「パパとママはなんで結婚したん?」


 と聞いたところ、母がこんな話をしたんです。


「ある時会社から帰ろうとしたら途中の橋の下で泣いてる人がいて、どうしたのかと聞いたらお腹が空いて泣いてますと言ったので、連れて帰ってそのまま一緒に住んでる」

 

 初めに言っておきますが、うちの母親は冗談としても人を傷つけるような言い方をする人ではなかったです。この時はどういう流れでそうなったのか覚えてませんが、私は聞いて大笑いしました。冗談を言ってからかわれたなと。


 ところが私よりもまだ1年小さくて、そしてかなり真剣に聞いた妹は号泣して、


「なんでそんなこと言うんよー!」


 と、畳の上に泣き伏したんです。


 母が慌てて、


「ごめんごめん、嘘や」


 となだめたんですが、しばらく泣いてたなあ。


 まあ妹が泣いたのも分からないではないです。というのが、なんというか、母の語り口がかなり流暢で、妹がしっかりその世界に入り込むような「物語」として語っていたからです。上には簡単に書きましたが、私も途中まで結構真剣に聞き、オチであはははと笑ってしまいました。なんというか、お腹が空いて泣いてたという段階で、嘘じゃないのかと思った部分もあったので、やっぱり嘘だと笑ったという感じですか。


 母としては、まだ小さかった妹のまじめに父との馴れ初めを語るのも恥ずかしくて、それでそういうことを言ってしまったんじゃないですかね。冗談でかわそうとして、思わずそういうことを言ってしまった、そういう感じかも。


 さて、その父と母の馴れ初めですが、


「職場結婚」


 です。

 

 もっと大人になってから、色々と話を聞いたりもしましたが、まあ普通の出会いをして普通の結婚をした普通の二人だったんじゃないでしょうかね。面白い話もいっぱいありますが、それは家族だけの秘密ということで。


 なんにしても、小さい子に冗談でもあまり傷つけてしまうような可能性のある話はしない方がいいということでしょう。たとえ悪意でなかったとしても。

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