第九十六話 戦争の中の夜戦
ようやくの戦闘回&逃走回。このままのペースで更新していきたい。
輝く星空の下、暗い夜の中で戦いは始まった。
『PODE』同士による予想外の戦闘だ。
それはかつて敵同士だった旧世代の兵器を取り込んでしまった故か、はたまた人の知能を持ってしまったがためか。
そのどちらだとしても事実として今この時、超重戦車型『PODE』のナチス一派と戦車型『PODE』の旧ソ連一派は雛たち四人の生存者を巻き込んで戦争を繰り広げていた。
「次に戦車が裏に回ったら一気に出るぞ。目指すのはあの森だ」
雛の声、それを静かに聞いて彼女たちは頷く。
生存者たちが息を潜めている中、一向に警戒を解かない戦車型『PODE』は尚も家を回り続けている。
「よし、今だ!」
そして逃げるタイミングは来た。戦車型『PODE』が裏へと回った瞬間、生存者たちは一気に家から飛び出た。
当然この瞬間、八両の戦車型『PODE』は今まで息を潜めていた生存者たちの存在に気付いた。しかし存在に気付いたところで八両の戦車型『PODE』はすぐに攻撃出来ない。それもそのはず超重戦車型『PODE』に攻撃中の車両は生存者たちに対して背を向けている状態であり、警戒中の残り一両は家の裏側にいるのだ。
今の戦車型『PODE』は攻撃出来ないどころか、生存者たちに対して無防備な状態を晒してしまっている状態である。
「先に行ってこちらの援護を! 敵はこっちに引きつける!」
雛は彼女たちを先に森へと行かせて、自らは戦車型『PODE』の目を引き付けるためにMP446で攻撃し始める。
戦車型『PODE』の砲撃音に重なって雛の発砲音が響く。
そうして雛の放った銃撃は一両、また一両と戦車型『PODE』を蒸発させる。戦車の形をしていようと所詮は『PODE』である。コピーの特性上戦車の装甲そのものまでは再現出来ず、銃撃を止められない。心臓部である『シールド細胞』への直撃を許してしまう。
「こっちだ、俺を見ろ」
雛の攻撃で八両いる内の四両が蒸発した。背面からの攻撃に戦力の半数を失った戦車型『PODE』は森へ逃げる彼女たちから目を離し、真っ先に雛を狙う。
「撃てる」
森へと逃げながら銃口を向ける雛に一両の戦車型『PODE』の砲口が向く。
その直後、発砲音と砲撃音が重なる。
放たれた銃弾は一両の『シールド細胞』を貫き、戦車型『PODE』は見事に蒸発する。しかし同時に放たれた戦車型の砲弾は雛のすぐ横に着弾した。
「ぐぁっ!」
着弾による衝撃波は咄嗟に出た声を押し潰し、雛の身体を吹き飛ばした。一瞬宙に浮いた雛の身体はそのまま地面に叩き付けられてしまうが、大したダメージではない。しかし足を止められてしまうのは痛手だ。
「雛君!!」
レイテットの呼ぶ声と同時に響く銃声。そのどちらもが、衝撃波のせいで雛の耳にはどこか遠くに聞こえていた。
だが、その耳にはしっかり届いている。
「ぐっ……まだだ……」
雛はすぐに身体を動かし、彼女たちのいる森へと走った。
森の方からは逃げ切れたレイテットとアイーラの援護が飛んでくる。が、二人の援護入って尚も雛への集中的な砲撃は続く。そしてまた吹き飛ばされる。
これで吹き飛ばされるのは二度目。流石に雛の身体には負担が来ているが、構わずまた立ち上がり、再び森の方へと走り始める。
「よくも雛君を……! このクソ緑戦車!」
「あ、レイテットの口が悪くなった」
罵倒と共に銃弾を叩き付ける勢いのレイテットの援護は五発中四発を当てて、三両の戦車型『PODE』を蒸発させた。
アイーラの方は笑みを浮かべながら冷静な援護を行い、戦車型『PODE』が家の裏から姿を見せた瞬間に心臓部である『シールド細胞』を撃ち貫く。
雛の攻撃、レイテットとアイーラの援護によって戦車型『PODE』はあっという間に全滅。それでもまだ超重戦車型『PODE』の脅威が残っている。
「アイーラ、美保さんと一緒に少し先に行ってて! 私は雛君と一緒に行くから!」
「あーいよ。美保さん、一緒に行きましょう」
レイテットに理解を示すようにアイーラはグッと親指を立てる。そのまま言われた通りに、アイーラは美保と一緒に森の奥へと逃げていく。
その一方で雛も森へと入った。
「雛君!」
「ここはもう危ない、行くぞ!」
「うん!」
合流出来てすぐにレイテットは雛を抱きしめる。愛ある温もりがレイテットと雛に広がっていくものの、今はそれどころじゃない。
雛はレイテットを連れてアイーラと美保の後を追って森の奥へと逃げる。直後、凄まじい砲撃音――超重戦車型『PODE』の砲撃が轟いた。
「敵弾来る! 伏せるぞ!」
「うぇ!?」
着弾まで余裕があるこの時、雛はレイテットに覆い被さるようにしてその場に伏せた。
「ちょ、ちょっと雛君!?」
「こうしていれば負傷するのは俺だけで――」
レイテットの動揺に対して雛が告げようとしたその瞬間、生存者たちの家に超重戦車型『PODE』の砲弾が着弾した。その着弾音は生存者たちの声さえもあっという間に掻き消していく。
しかもそれだけでなく着弾による衝撃は地面を揺らした。それから威力が分かる通り、生存者たちの家は木端微塵となり、木ごと地面を吹き飛ばす。
「うっ……! 雛君大丈夫!?」
圧倒的な破壊力のある着弾によって飛散した土や石は、レイテットに覆い被さっている雛に当たってしまう。その身体にダメージが蓄積していく。それにもかかわらず、雛は「大丈夫。目立った怪我はない」と告げて無事なことを示した。
「今ならいける?」
「次弾の装填には時間が掛かるはずだ。第二射はまだ来ない」
「じゃあ今の内に行こう!」
「うん、そうだな」
レイテットと雛の二人は森の中を走り、アイーラと美保のところへと向かう。
かくして生存者たちの逃走は見事に成功した。しかしこれからどうするか、生存者たちには選択が求められる。
疲れと生存。
更なる困難が近付く。




