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【完結】POD Enemy  作者: D-delta
エピソード3 疲れと生存

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第九十五話 決断

やっと更新出来た感。今回は戦闘回というよりはその前段階の緊張した状態。戦闘回詐欺であった。

 続く夜の中、生存者たちは処刑の一部始終を見届けた。順番に人型『PODE』が殺されていき、最後の一体が蒸発したその時、処刑の銃撃は止まる。

 今は環境音だけの静かな夜。それは嵐の前触れか、生存者たちはなにも知らない。


「美保さん、懐中電灯ってどこにありましたっけ? 手元が暗くって……」


 いつでも家を離れられるようにバッグの中身を確認する時、真っ暗で視界の悪さが邪魔をする。手元を明るくする光が欲しいレイテットはすかさず美保に懐中電灯の場所を訊いた。


「確かそっちにあるわ。ちょっと待ってね」


 そう言って美保は真っ暗な中、記憶を頼りに懐中電灯を探る。もちろん視界の悪さのせいで美保は「あれ? これは違う。これでもなくて」と手に当たった物の形から、どれが懐中電灯か判断するしかない。まさに暗いというのはなにかを探す上では不利なものだ。暗い中で見つけるためには光源が必要になる。そしてその光源が命取りになることもある。


「んーと、これだ。レイテットちゃん、あったわよ」


 美保は暗い中でようやく懐中電灯を探り当てた。


「こんな真っ暗な中ありがとうございますー」

「良いわよ、気にしないで」


 そのまま懐中電灯を手に取り、レイテットへと渡される。

 懐中電灯という光源を手に入れた今、生存者たちは光を隠しながら確認を順調に進めていく。


「なんだ?」


 雛の耳がなにかの近付いて来る音を拾う。その雛の意味ありげな反応にレイテットは「どうしたの?」と訊ねた。

 しかし雛はなにかしらの危機感を感じ取り、答えずにひたすら耳を澄ませる。そしてぬめる音と一緒に戦車のキャタピラ音がハッキリ雛の耳に聞こえてきた。しかもそれらの音は街の方とは逆側の森の方から近付いて来ている。


「なに? なんの音?」


 近付く物音にアイーラが一番に反応し、彼女たちは揃って音のする方を見つめる。

 その一方で雛は「まさか……!」と冷や汗が出る勢いで悪い予感を全身に巡らせたその時、雛の悪い予感は現実のものとなる。

 暗い夜の中で家を揺らして近付いて来るもの。生存者たちが揃って窓の外を見れば戦車の姿がその目に映った。それも視界に映る戦車は一両ではなく、八両もいる。


「え、なにこれ……こんなにたくさん」


 突然のことに動揺するアイーラ。レイテットが「味方かな?」と告げる。もちろんこの真っ暗な中では戦車の薄らとしたシルエットだけしか見えず、その戦車たちが『PODE』であるかどうかは判別出来ない。


「味方だったら嬉しいわ! 早速確認してみましょう!」

「美保さん待って――」


 雛の咄嗟の呼び止めに止まらず、美保は確認のために懐中電灯を持って家に一番近い戦車を照らした。

 照らされて形がハッキリ見えるその戦車は、ソ連の戦車であるT-34の形をしている。だが、本来戦車にはないもの――青と赤の二つの核細胞が薄緑のぬめりとした車体の中にあった。


「こ、これ……!」


 懐中電灯で照らした先にいたのはまさしく戦車の形をした『PODE』だった。それをハッキリ見てしまった美保は恐怖で身体が硬直し、その表情は戦車が味方である期待から敵であることの恐怖へと変わる。

 そして戦車型『PODE』は懐中電灯の光に反応して、砲塔を回転させ始める。


「美保さん!」


 咄嗟の判断で雛は美保の懐中電灯を手に取り、光を消した。すると光に反応していた戦車型『PODE』の砲塔の動きは止まった。しかし次は車体の部分が動き始め、戦車型『PODE』は家の周りをぐるぐると回り始める。


「警戒されてる、物陰に隠れろ……!」


 雛の押し殺した声の指示で生存者たちは全員窓から離れ、急いで物陰へと隠れる。もはや撃たれてもおかしくない状況。死の恐怖と緊張が生存者たちに走る。


「まだいる?」

「音が離れてないからまだいる」


 レイテットの確認にアイーラが持ち前の目と耳で答える。

 戦車型『PODE』の警戒は続いている。この状況で下手に動けば家ごと吹き飛ばされるのは明確。生存者たちは物陰で身動き一つせず、じっと隠れていた。

 そして生存者たちが物陰に隠れてから数秒のこと。戦車型『PODE』の警戒が続く中、突然複数の砲撃音が響いた。


「なんだ?」


 突然の砲撃音に、雛は物陰から顔を出して窓の外を見た。その視界に映るのは複数の戦車型『PODE』が一斉に街に向けて砲撃している光景だった。


「また敵同士で潰し合うだと? これは……今こそ家を離れるべきか」


 雛は呟く。視界に映った光景はまさに最悪の光景。この家の近くで戦闘が始まるということは超重戦車型『PODE』にこの家一帯を吹き飛ばされることを意味している。

 しかし戦車型『PODE』が家の周りで砲撃を行い、その内一体は家を警戒している現状では家を離れようにも離れられない。タイミングなど考えなしに外に出れば戦車型『PODE』に撃たれるのは間違いない。


「撃ってる、撃ってるよ」

「どうするのこれ……私たちじゃ止めようがないわよ」


 アイーラは落ち着いた状態で物陰から顔を出し、窓の外を見る。それとは逆に美保は戦車型『PODE』の砲撃で恐怖心と不安を煽られていた。


「雛君、確かここで戦闘が始まったら、街にいる大きいのから攻撃されるんだよね? どうする? どうすれば良い?」


 物陰越しに、レイテットの不安に染まった声が雛に決断を迫る。


「雛君……!」


 大切であり、最愛のレイテットに決断を迫られた今、雛は「よし」と一言告げて即行で決断する。


「レイテット、アイーラ、美保さん、これから家を出ます。俺が戦車を攻撃するので、あらかじめ用意しておいた荷物を持って森の方へ逃げてください。その際は絶対に散らばらないで纏まって動いてください」


 決断した雛は早速家から出ることを伝えた。


「うん、分かった!」

「あーい」

「……了解したわ」


 それぞれ返事を返す彼女たち。

 そうして生存者たちは警戒を続けている戦車型に見つからないまま荷物をそれぞれ持ち、それぞれの武器を手に持った。

 これで生存者たちはいつでも家から出られる。


「全員、荷物は持ったか?」

「OK!」

「レイテットに持たれる身だけど、バッチリ持ったよ」

「私も持ったわよ」


 雛の最終確認に彼女たちは万全の状態で答えた。

 家の外に出れば、待っているのは戦場。

 家から出なければ超重戦車型『PODE』の攻撃で吹き飛ばされてしまい、下手に出れば戦車型『PODE』の攻撃をもらってしまう。

 生存者たちはそのどちらにもならないよう、今まさに家を出るタイミングを探る。


次こそようやく戦闘回。読者の皆様、詐欺って申し訳ない……

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