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【完結】POD Enemy  作者: D-delta
エピソード3 疲れと生存

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第九十四話 暗い夜

今回は『PODE』の設定を少し押し出した回。

ちょっと間延びしている感は感じる。

 生存者たちの遅いお昼のひと時から時間は経ち、夕方となった現在。昇っていた太陽は沈み、夕焼けの輝く時間帯。沈んでいく太陽に代わって空に薄らと現れる月。夜は近付く。

 そんな夜が近付く夕方の時間帯、生存者たちは休憩を続けていた。


「ねぇ、この壁どうする?」


 ふと気になったレイテットは籠城戦で穴だらけになってしまった壁を指差して告げる。そのレイテットの言うことに対して一番に反応したアイーラは「転がっている破片拾って穴のところに埋めてみる?」と携帯ゲーム機片手に安易な答えを告げた。


「破片じゃ穴は埋められないわよ。木の板とか、そういう代わりになるもので塞いだ方が確実だし、手っ取り早いわ」


 安易な答えを出すアイーラに対して、美保は攻略本を読みながらも確実な答えを出した。

 これにはレイテットもアイーラも「なるほど」と納得する。


「雛君の意見はどう?」


 レイテットから唐突に意見を求められた雛。すかさず窓から見える超重戦車型『PODE』から目を離し、レイテットを一目見てから穴だらけの壁を見る。

 そこから雛の動きは止まり、穴だらけの壁を見続けた。もちろん動きは止まっても思考は超重戦車型『PODE』のことから穴だらけの壁のことに切り替わり、解決策を考え始めている。

 そして少しの沈黙後、解決策が出たと同時に雛の身体は動き始めて口を開く。


「美保さんと同意見だ。今の状況では木の板とかで塞ぐのが一番だと思う」


 解決策が述べられる。その結果、雛の意見は美保と同意見だった。

 この時、攻略本に隠れた美保の顔はドヤ顔を決め込んでいた。いつもは雛が最適な答えをすぐに見つけているのに対して、今回は美保が先に最適な答えを言えたのだ。まさに美保のドヤ顔は「んふっ」という声と共に優越感駄々漏れのものだった。


「うん、雛君も同じ意見なら大丈夫だね! もしもこのまま家を離れなかったり、また戻って来れたら壁の穴を手っ取り早く塞いじゃおう」

「おーそうしよ」


 前向きにこの後のことを告げるレイテットと、それに乗るアイーラ。その突き抜けた前向きさに雛と美保は笑みを浮かべる。しかし今の状況を真っ向から受け止めて理解している雛と嫌でも今の状況を理解している美保は素直に前向きにはなれなかった。

 話題が一段落すると、生存者たちはまた休憩に入る。

 雛は身体を休めながら超重戦車型『PODE』の動きの監視、彼女たちはゲームをして遊ぶ。


 それから時間は経つ。時刻は午後六時。

 夕焼けの輝きから次第に暗くなり、夜の変わり目に月がハッキリとその姿を空に現す。夜が訪れる。

 街も雛たちのいる家も夜の暗さに包まれていく。


「暗くなって来たわね、部屋明るくしないと」


 美保がそう言って部屋を明るくしようとしたその時、雛が「待ってください」と美保を止めた。


「急にどうしたの? 明るくしないと周りが見えないじゃない」

「ダメです、敵に見つかります」

「敵に?」

「はい」


 暗い夜の中の光はよく目立つ。距離が離れていても光源はよく見えるものであり、敵はその光を容易に見つけるだろう。


「もしもこの家の光が見つかれば、敵の偵察が来ます。敵の偵察自体は迎撃すれば良い話ですけど一度でも戦闘が始まると」

「あの大きいのがすぐにこっちに撃ってくるかもしれないんでしょう? 分かったわよ」


 雛の説明に美保は少し不満ながらも理解を示す。食事や外に出ることも制限され、部屋の電気を点けることも制限されれば不満を見せるのも当然だろう。美保は元から当たり前に生活していた民間人で、雛はしばらく特殊な訓練を受けていた自衛隊員なのだから。


「レイテットとアイーラも電気なしで大丈夫か?」


 雛がレイテットとアイーラに向けて問う。ここまで戦っているとはいえ、二人も美保と同じ民間人。職業として人を守る立場にいる雛はどんな答えでも親身に聞くつもりでいた。


「敵に見つかっちゃうんなら仕方ないよね。私は大丈夫だよ」

「お化けがちょっと怖いけど、まぁ大丈夫かな」


 そしてレイテットとアイーラから答えが返ってくる。もちろん不満は抱えているが、雛の言うことを理解してそれ以上のことは言わなかった。


「ありがと――」


 雛がみんなの理解にお礼を言おうとしたその時、複数の銃声が突然この家にまで響いて来た。

 何事かと、みんな目の色を変えて身構える。


「今の銃声!?」

「美保さん、落ち着いてくださいです。銃声は遠いですよ」


 美保の慌てて身構えた様子に、雛が言葉通りに落ち着かせるように告げる。

 そして身構えた状態から雛は双眼鏡を使い、窓から銃声のした方向を見る。視界に入るのはなんの変わりもない自然の光景ばかりだが、もっと遠くを見れば人型『PODE』が同じ人型『PODE』に対して一体ずつ銃殺している光景が見えてくる。


「あれではまるで処刑だな、仲間割れか?」


『PODE』が『PODE』に対して攻撃するなど今まで見たことのない光景だ。雛が見るには初めてであり、まさに不思議な光景だった。

 その光景が気になる彼女たちも窓から雛の見ている先をじっと見る。


「なになにどうなってるの?」

「見えないわね」


『PODE』たちの不思議な光景は遠くにある。もちろんなにも使わず見ようとするレイテットと美保にはその光景は見えない。

 彼女たちの中で唯一AEK971のスコープを覗いて見るアイーラには、その光景が見えた。


「なにあれ……同士討ちしてんの?」


 不思議な光景を見てのアイーラの感想。その声は見たことのない光景に対して困惑している。


「レイテットも見るか?」

「あ、うん!」


 雛の手からレイテットの手へと双眼鏡が渡る。雛が「赤色の建物がある場所だ」と告げながら赤色の建物に指を差すと、レイテットは雛に示された場所を双眼鏡で見る。


「一人ずつ順番に殺してるね。確かに処刑みたいかも」


 雛と似たレイテットの感想。その見方に間違いはなく、まさに処刑の光景だった。


「美保さんも見ます?」

「見る見る、見るわよ」


 そう言って美保はアイーラに代わってスコープを覗く。覗いた先にある処刑の光景を見るや、美保は「本当に処刑ね」とだけ素直な感想を述べた。


「とにかく同士討ちのような処刑で良かった。俺たちの居場所が見つかった訳じゃないからな」

「そうだね……」


 雛とレイテットは告げ、生存者たちは自分たちに向けられた銃撃ではないことに安堵する。

 暗い夜。処刑のための銃撃がただ響く。

 その中、戦闘の気配は生存者たちにゆっくり近付いていた。


次の回でようやく戦闘回。三章の大きな山場となるところに突入します

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