第九十三話 遅いお昼のひと時
超重戦車型『PODE』が現れてから二時間ほどが経った。
生存者たちが早々に家から離れる準備を終えて、時刻は午後の三時。まだなにも食べていない生存者たちは遅いお昼ご飯へと入っていた。
「缶詰め、みんなに」
「一人一つ?」
「そうだ」
雛が棚から缶詰めを取り出し、レイテットは雛から缶詰めを受け取ってみんなの分をテーブルに置いていく。みんなに行き渡る缶詰めの数は雛の言葉通りに一人一つずつだ。
「また街に出れば缶詰めも集められるし、そんなにケチらなくて良いんじゃないの?」
レイテットは一人一つと、消費を抑えているのに対して疑問を投げかける。確かに食糧はまだ潤沢にあり、量を多くして食べてもすぐに減る訳ではない。
そして雛は「レイテット……残念ながらもう街へは出られない」と深刻な表情でレイテットの疑問に答え始める。
「超重戦車型『PODE』がいるということは、その周りに護衛の『PODE』を従えているはずだ。予測ではあるが、数は百体ほどだろう。もしも街で見つかれば護衛役の百体と超重戦車型『PODE』の圧倒的火力の前に殺されるのがオチだ」
雛は続けてレイテットの疑問に答えた。
もはや持っている物資が潤沢でも、街に出て食糧や弾薬などの物資を取りに行けないのが現状なのだ。生存者たちが今を生き長らえるためには嫌でも物資の消費を抑えなければならない。
「ふーん、じゃあ出会う敵を全部殺せば問題なくない?」
レイテットと雛の会話を聞いていたアイーラが横から意見を出した。それはとてもシンプルで頭に入れやすい一つの答えだ。
しかし雛はアイーラの出した一つの答えに反対する。
「それもありだが、敵を全て殺しても俺たちのいずれかが殺されないとは限らない。特に今回は一度に相手にする量が非常に多いし、武器を持った人型『PODE』も多くいるはずだ。交戦すれば死傷の可能性が飛躍的に高まる」
理解してもらうための説明と一緒に雛は反対を示す。
雛の説明で、アイーラはそんな簡単に行かないことを理解して「なんだか難しいね」とだけ告げた。眉間にしわを寄せては難しい表情になり、アイーラはこれ以上の意見が考え付かないかのように口を閉じた。
「とにかく、みんなで今を生き長らえるにはこうして食糧の消費を抑えながら食べなければならないんだ。超重戦車型『PODE』がいなくなるまではしばらくの辛抱になる。それまでみんなにはこんな食事で耐えてほしい」
雛の表情は依然として深刻なもの。今でさえ貧相な食事だというのに、更に貧相な食事にするのは彼女たちにとっても、雛にとっても今を生きるための苦しい選択と決断だった。
そして苦しい選択と決断をした生存者たちは遅いお昼ご飯を食べ始める。
生きるには貧相で苦しいひと時。
そんな時、美保の口が開く。
「ねぇ……戦闘が一回でも始まったら、この家での思い出はこれっきりになるのかな?」
生存者たちがそれぞれ食事をしている中、突然食事の手を止めた美保は重い口振りで周りに問うた。
その重い問いに雛は答えられない。己の中に答えを持っていない。
「この家から離れることになったってこれっきりじゃありませんよ、美保さん!」
「そうそう、私とレイテットと美保さんが覚えていれば心の中に思い出は残ります」
レイテットとアイーラが美保の重い問いに答える。まさに雛が持っていない答えをレイテットとアイーラは持っていた。それは長い付き合いと家族のような絆を持つ彼女たちだからこそ、持っていた答えだ。
「そうね、そうよね」
レイテットとアイーラの答えに美保は心を持ち直して再び食事を進ませる。
そして食事を始めてから少し時間が経つ。
時刻は午後の三時半。生存者たちの遅いお昼ご飯は終わった。
今の生存者たちは食後の片付けを終えて、食後の休憩へと入っている。彼女たちはゲームをして心身共に休んでいるが、雛だけは休憩ついでに双眼鏡を用いて窓から超重戦車型『PODE』の動きを監視していた。
「やはり護衛役、その取り巻きは数が多い。しかも人の頭脳を持った指揮官がいるか」
分析をしてはぶつぶつと呟き、その視界に映る『PODE』たちは街のあちこちに展開している。展開の仕方は超重戦車型『PODE』の安全を確保するようにしており、その様子は人間の頭脳を持つ指揮官の存在を疑わせる。
「ここから逃げ出すか、長い時間を使って敵の戦力を殲滅するか、俺一人ならともかくみんなで生き残るには……どっちを選ぶにしても急がないとならないな」
誰にも聞かれない独り言を呟いては、敵を分析して、戦略を練り、生存者全員で生き残る方法を考える。
それは昼と夕方の間のひと時のこと。圧倒的な脅威が目に見える中で生存者たちは心を保ち、生き続ける。
更新遅い上に内容も大してなくて申し訳ない(;一_一)




