第九十話 生存
二週間ぶりぐらいの更新です。
やっぱり同時で更新はするもんじゃないと思った今日この頃……
銃声は鳴り止み、戦場となった家には静けさだけが訪れる。その静けさの中、籠城戦を生き残った生存者たちはお互いの生存を確認するためにリビングへと向かっていた。
「美保さん、怪我とかありません?」
「大丈夫。足が少しヒリヒリするくらいだから」
「え、足がヒリヒリするんですか? なにか異常があるかもしれませんし、一応診ないと」
「大丈夫だってこれくらい……」
「ダメです! こういうのはちゃんと診ないと!」
レイテットが美保の身体を心配している内に彼女たちはリビングに着く。
足に異常があるかもしれない美保をイスに座らせて、レイテットは美保の足を診る。手の空いているアイーラは警戒を解いてボーと外の方を見ている。
「レイテット!」
レイテットが美保の足を診てからすぐのこと、雛の声がリビングにまで響いてきた。
「雛君?」とレイテットが声のした方に目を向ければアイーラも美保も声のした方に目を向けた。
そして彼女たちの目に映るのはリビングに大急ぎで戻ってくる雛の姿だった。
「雛くーん!」
レイテットの目に雛が映ると、美保の足を診ることなど頭から忘れ飛んで雛に抱きついた。もちろん雛は咄嗟に抱きつくレイテットをすかさずその身で受け止める。
「無事で良かった……! 家の方からガラスの割れる音が聞こえたものだから焦って戻ってきたんだ」
レイテットはもちろんのことアイーラと美保の無事な姿もある。雛は安堵してレイテットに抱きしめ返す。
そんな心配や焦りから解放された雛に対して、レイテットは「雛君? 雛君ほどじゃないけど私も強いんだからちゃんと信用してよね?」と強気な笑みを浮かべた。
「あぁ、信用するとも! アイーラと美保さんを守ってくれてありがとう。そしてなにより、生きていてくれてありがとう」
抱きしめ合う二人。雛のお礼を言う囁きに、レイテットは嬉しげになって雛の胸元に頬をくっ付ける。
お互いに触れ合い、感じる温もり。大切な人の生きている証を知れば安心感が身体を行き渡る。
「こほん、イチャイチャしているところに水を差すようで悪いんだけど……そろそろ私の足診てくれるかしら、さっきよりヒリヒリしてきちゃって」
美保の若干苦しげな声にレイテットは「あっ!」と足を診ることを思い出す。
「手伝おうか?」
「あ、うん、お願い!」
雛とレイテット、二人で協力して美保の両足全体をじっくり診ていく。その内に二人の目に美保の赤くなっている足が映った。赤くなっている部分はそれほど酷いものではなく、一見して足首辺りの肌の露出した部分が赤くなっているだけで火傷か、はたまた強く擦ってしまっただけなのかは判別出来ない。
「足首のところ赤くなってる。火傷かな?」
両足の赤くなっている部分がなにか分からず、レイテットは告げる。
そこで雛は美保の〝ヒリヒリしている〟という先ほどの発言を元にとある結論に至る。
「さっき美保さんはヒリヒリしていると言った……だったら火傷の可能性もあるはず。レイテット、美保さんが火傷したことになにか心当たりはあるか?」
「うーん……ひょっとして敵に取り込まれそうになっていた、からとか?」
「それだ、レイテット。取り込まれればまずは消化される。そのせいで足に軽度の火傷を負っているんだろう」
思考し、結論とレイテットからの発言を重ねて、雛は軽度の火傷という答えに至った。
雛が「ここまで来れば後は簡単だ」と言えば、すぐ後にレイテットが「火傷したところを冷やせば良いんだよね?」と確認するように告げる。
「そうだ、とりあえずは濡れたタオルでゆっくり冷やせば良い」
「あいよー! 今持ってくるから待ってて」
お互いに美保の容態と火傷の処置を理解、把握。レイテットが洗面所に濡れたタオルを取りに行く。
「ねぇ雛君」
美保の雛を呼ぶ小さい声。雛はすぐ反応して「どうしました?」と目を合わせて訊ねた。
すると美保は途端に俯いた。
「私ね、そろそろ限界感じるの。救援とか救助とか、雛君が来てから近い内に元の生活に戻れると期待してここまでなんとか生きてきたけど――」
年長者故に弱音を見せまいと、その先の言葉を言う前に美保は口を閉じる。もはや雛の前で見せる美保の表情はレイテットとアイーラに見せている表情よりも一層暗い。
「美保さん、必ず救援は来ます。それまで俺たちみんなで生きましょう」
「必ずなんて、無理して言わないで。嘘を吐いて苦しくなる雛君は見たくないの。だからその嘘を吐く口を閉じて」
美保の優しげな言葉が、無理して希望を持たせる雛の言葉を包む。雛は真面目で正直になにも言えず、美保の前で沈黙するしかなかった。美保もまた言葉を続けずに沈黙していた。
そして美保と雛の間に流れる沈黙から少しして――。
「戻ってきましたよー!」
濡れたタオルを持ったレイテットがリビングに戻ってきた。
年長者として心配を掛けたくない美保は暗い表情から一転、いつもの年長者らしい表情に戻った。
「今冷やしますねー」
そう言いつつレイテットが美保の赤くなった足首に濡れたタオルを当て、火傷したところを冷やしていく。
「ふふ、ありがとう」
美保の笑みを浮かべたお礼の言葉。レイテットは美保の笑みに応えるように元気いっぱいの笑みを見せる。
戦いの後、生存者たちは休息に入る。その先にある戦いに備えるために。




