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【完結】POD Enemy  作者: D-delta
エピソード3 疲れと生存

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第八十九話 籠城戦3

どうにか更新!毎日更新してる人はすごいなぁって思ってます(´ ・ω・`)

 騒がしい発砲音と弾丸の飛び交いが止まった戦場。先ほどまで戦場だった家の周りは静寂に包まれている。

 だが、まだ敵はいる。初期型『PODE』が三体。放っておけば生存者たちに死の危険がある。故に全滅させなくてはならなかった。


「……殲滅する」


 目を鋭く、殺意を強くする雛は残った初期型『PODE』殲滅のために割れた窓から外へと出る。

 外は至って静寂。ぬめりとした音が遠くに、微かに聞こえてくる。MP446をその手に持って雛は微かに音が聞こえてくる方を見た。


「隠れたか」


 音の方を見ても雛の視界に初期型『PODE』の姿は映らない。だが、ぬめりとした音だけは視界の先、草むらから微かに聞こえてくる。特に草むらは『PODE』にとって保護色であり、遠目から見て簡単に発見出来ない。

 もはや近付いて発見、撃破するしかなく、雛は草むらの方へと慎重に足を進めた。

 MP446を構えて銃口の先を常に草むらの中に向け続ける。


「どこだ?」


 雛はまるで獲物を追うように草むらの中を進んでいく。その姿は狩人、あるいは殺人鬼に似ている。草むらの中へ行くほどぬめりとした音が近くなっていくが、視界にはまだ映らない。

 そして残敵という獲物を追う中、ぬめりとした音が二つに分かれた。


「二体いるのか」


 雛は音から冷静にそう判断して二つに分かれた音を追う。すると、追って少し進んだところで草むらの色とほぼ同色のなにかが蠢いていた。もちろん雛の目はその蠢くものを逃がさない。

 この場合の蠢いているものとはまさしく残敵である初期型『PODE』だ。もはや雛はそれを分かっていた。


「そこか……?」


 残敵を見つけたことを呟き、雛は迷うことなどなくMP446の引き金を引いた。放たれた弾丸――9mmパラベラム弾は『PODE』の『シールド細胞』を確実に貫く。

 残敵一体の蒸発。それと同時に雛の左からガサガサと大きな音を出して二体目の『PODE』が襲い掛かる。


「無駄だ」


 右目はなくとも左目はある。左から来る残敵の姿は完璧に見えており、草むらをかき分ける音も相まって姿が見えた瞬間からMP446の銃口は二体目の『シールド細胞』に向けられていた。

 発砲音が鳴り響く。

 トリガーは既に引かれ、弾丸は二体目の『シールド細胞』を貫き、その心臓部を破壊する。

 雛の手によって瞬く間に三体の内二体の残敵は蒸発した。


「残りの一体は、ここにはいなさそうだ」


 耳を澄ましても敵の発する音は聞こえてこない。しかしほんの数秒後に家の方からガラスの割れる音が響いてきた。


「家に行ったか!」


 残り一体の撃破とみんなの身の安全。誰一人犠牲者を出したくない想いで雛は家に戻っていく。



  ※



 時間は少しだけ遡る。外に出た雛が草むらの中で残敵を追っている頃のこと。


「発砲が止まった。終わったの?」


 美保は自身の武器であるブラックバスターこと折りたたみ式の軍用スコップを持ち、最後に鍵を掛けた物置部屋の付近でなにもないまま待機していた。つまり家中の鍵を掛けて以降は戦闘をしていなかったのだ。


「様子見に行こうかしら」


 発砲音が鳴り止んでいる今、戦闘による緊張は解れて、みんなの様子が気になり始めた美保はリビングへと向かおうとした。その矢先、外から発砲音が二つ響いた。


「へっ!?」


 予告のない突然の発砲音に美保は身構えるようにして驚いた。それからの発砲音はなく、美保は溜め息を吐いて緊張した身体から力を抜いていく。

 次こそリビングに向かおうと足を進ませる。すると次は物置部屋からガラスの割れる音が響いた。


「なに?」


 ガラスの割れた音を耳にした美保はブラックバスターを両手で握り直して警戒しながら物置部屋へと入る。物置部屋には古い写真や記念品など普段使わない物が置いてあり、その量は多く、部屋の狭さもあって動きにくい。しかも節電している今の状況では電気を付けられず、部屋の中は足元がよく見えないぐらい暗い。


「窓が!」


 物置部屋の中を進んで行けば、ガラスが床に散らばっているのが見えてくる。そのまま美保の視線は窓の方へと移り、窓が派手に割れているのが視界に映る。


「敵、敵が入ってきたの?」


 ガラスの割れる音と今ここで窓ガラスが割れているという事実。生存者のいずれかがそんなことをするはずがなく、すなわちそれらの事実は家に『PODE』が侵入していることの証明だ。

 美保の警戒は強まり、その場で部屋を見回した。暗さのせいか、初期型『PODE』の姿は一向に見えない。


「どこなの……?」


 ぬめりとした音が物置部屋に響き、美保に仄かな緊張が走った。身構えたまま咄嗟に軍用スコップを強く握り締める。敵はまだ視界には映らない。

 そしてぬめりとした音が背後に近付いてきた瞬間、生温かい気持ち悪い感触が美保の両足を包んだ。


「な、なに!? 敵!?」


 美保が急いで目を下に向ければ足下の暗さ故にハッキリとではないが、透明感のある緑色のスライム――初期型『PODE』が見えてくる。


「この! この!」


 弱点である赤い核細胞『ハルバード細胞』も青い核細胞『シールド細胞』も見えない。それでも美保は夢中になってスコップで『PODE』を刺し、叩いた。


「待って……そんな、ダメだって!」


 どれだけやっても蒸発しない。足元が暗ければ弱点に当たることはなかった。

 美保が通用しない攻撃を何度もしている間に『PODE』は足元から徐々に美保の身体を上っていく。


「え、やめ……! 助けて!」


 上半身にまで上ってきた『PODE』は美保の腕に絡み付き、まともに動かせないぐらい動きを封じられる。もはや一人ではどうにも出来ない。


「美保さん!」


 確かに一人ではどうにも出来ないが、美保の助けを呼ぶ声はレイテットとアイーラに確かに届いていた。

 助けに来た二人はすぐさま物置部屋に入る。そこからは迅速だ。アイーラの射撃はすぐさま『シールド細胞』を貫く。最後の一体が蒸発していき、レイテットは「大丈夫ですか?」と美保に駆け寄る。


「大丈夫よ……なんとか……」


 突然迫ってきた死の危険に声も息も震わせて、美保は告げる。


「レイテット? 今ので最後かな?」

「分からない。とりあえずリビングに行って雛君と確認しよう! それが一番早いと思う」

「だねー」


 軽いやりとりを終えたレイテットとアイーラは、美保を連れてリビングへと向かった。

 誰一人欠けることなく生存者たちは籠城戦を生き残る。それはまた新たな戦いが待っているということでもあった。


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