第八十八話 籠城戦2
今回は1話が長くなってしまったので2話ずつにして短めにしました。
次は更新早く出来るかもです。
発砲音のない緊張漂う静かな戦場。
敵となる『PODE』は全部で二十四体。その内の四体は第二次世界大戦時のドイツ製の銃器を持っている個体である。
生存者たちはいち早くそれらの敵の存在に気付き、迎撃態勢を取って待ち伏せていた。先手を確実に取れる状況で生存者たちは敵に目を向けたまま殺意を忍ばせる。
「頃合いだな。レイテット、合図と同時に撃て」
「OK!」
リビングに立て籠もっている雛とレイテット。二人とも窓から銃口を向けて発砲を待つ。
敵は待ち伏せされていることに気付いていない。なにも知らずに家に近付いて来る。
「今だ!」
敵との距離が100mになったその時、雛は叫んだ。同時に二つの銃口から弾丸が飛び出し、発砲音が響く。
戦闘が始まったのだ。
「敵襲! あの家からだ!」
突然の発砲音と撃たれた個体の蒸発に『PODE』たちはたちまち慌て始める。しかし人型の一体が叫びと家に近付く『PODE』全体に伝わったのか、初期型は家への侵攻を開始、人型は地面に伏せて初期型の侵攻を援護し始める。
『PODE』の態勢の立て直しは早かった。生存者側が先手を取ったはずが、巻き返されるように四体の人型から弾幕が繰り出される。しかもその弾幕は雛とレイテットが作る弾幕よりも厚く、脅威だ。
「レイテット、頭を出すな! 敵に優秀な奴がいる!」
「くっ!」
薄い壁や窓を貫通してリビングに弾幕が押し寄せる。下手に顔さえ出せないレベルの弾幕。飛び行く破片や入り込んで来た弾丸が雛とレイテットのすぐ近くを何個も通り、二人はすぐさま窓から離れて壁の陰に隠れた。
リビングに厚い弾幕が集中し、雛とレイテットは迎撃するどころではない。そして迎撃されない間に初期型は確実に家に近付いて来る。まさに危機的状況だ。
「一体目」
重なる発砲音の中に一つの発砲音が混ざる。アイーラの発砲音である。
アイーラの狙撃は人型『PODE』の『シールド細胞』を確実に貫き、口に出した通りに一体目を蒸発させた。
弾幕が生む騒音のせいで人型『PODE』は味方がやられたことに気付かず、弾幕を作り続ける。
「二体、三体」
アイーラは敵の数を口にし、その度に一つの発砲音を混ぜる。放たれた弾丸は確実に『シールド細胞』を貫く。一撃必殺とでも言える狙撃が繰り出されて人型『PODE』は蒸発していった。
こうして弾幕が足りなくなっていく異様な状況がアイーラ一人によって出来上がる。残り一体となった人型『PODE』は流石にこの異様さを感じ取り、すぐにその場から動こうとする。しかし既に遅い。アイーラの目は残り一体になった『PODE』を捉えている。
「ラスト」
アイーラがそう告げると同時に発砲音が鳴り響いた。弾丸は残り一体となった人型の『シールド細胞』を貫き、蒸発させた。
人型『PODE』は全滅。残るは二十体の初期型『PODE』だ。
「敵の攻撃が止まった!」
「たぶんアイーラがやってくれたんだろう。今の内に迎撃するぞ」
「はいよ!」
弾幕がなくなった今、雛とレイテットは壁の陰から出てきて迎撃を再開する。二人は視界内にいる敵を捉え、近い敵から狙って引き金を引く。放たれた弾丸は波のように押し寄せる初期型『PODE』に次々と直撃し、蒸発させていく。
「手伝うよー」
独り呟くアイーラ。最優先の標的となる人型『PODE』は全て蒸発させ、次は押し寄せる初期型『PODE』に向けて引き金を引く。
雛とレイテットの迎撃にアイーラの迎撃も加え、初期型『PODE』の数は大きく減っていく。
そして発砲音が鳴り止む。その時には目に見える敵は全て蒸発していた。
「今撃破した敵でおおよそ十七体目、後三体足りない。俺は外に出て確かめる。レイテットはアイーラと美保さんのところへ行ってくれ」
「待って、私が行ったら雛君が孤立しちゃうよ!」
「分かってる。でも接近戦が得意じゃないアイーラが襲われるかもしれないし、敵が三体揃って美保さんに襲い掛かるかもしれないんだ。俺は三体を一気に相手に出来る自信はある。いつも俺を信用してくれているなら今の俺も信用してくれ」
レイテットの心配に対して雛は説得する。少しの間を置いて、レイテットは「分かった。絶対に死なないでね!」と割り切っていながらも心配を抱えたまま答えた。
心配はあっても二人はお互いを信頼して別々の行動に出る。
雛は外へと出て敵の残りを探しに行き、レイテットはアイーラと美保のところへ向かうために家の中を走る。
生存者たちの籠城戦は続く。




