第八十七話 籠城戦1
久しぶりの一週間更新出来たぁ!
ぬめりと音を出す『PODE』と美保の叫びが、静かだった朝を戦場へと変えていく。
「みんな聞こえた!? 敵が来たわ!」
急いでリビングに戻ってきた美保が声を大きくして伝える。リビングにいるレイテットとアイーラは即座に反応して席を立った。
「こんなところに!?」
「今武器持って来ます!」
レイテットが驚いている間にアイーラは自室へと武器を取りに行く。
アイーラがレイテットの部屋の前を通り過ぎる頃、着替え終わった雛も美保の声を耳にしていた。すかさず雛はまだ一度も使っていない拳銃であるMP446とレイテット愛用の銃剣付きドラグノフ、それらに対応した弾薬を持ってリビングへと戻る。
「レイテット、武器と弾薬」
「お、流石雛君!」
「美保さんの声は部屋まで聞こえてきたからな」
雛は銃剣付きのドラグノフをレイテットへと渡し、MP446一丁をその手に持つ。そしてそれぞれに対応した弾薬は一つのテーブルへと区別しやすいように置かれた。
急いで戦闘態勢へと移行し終えた雛は「美保さん、敵はどこから来ていますか?」と冷静に尋ねる。
「あっち!」
敵が見えた窓の方に指を差して美保は答える。指の差された方向は街の方、つまり街から来ているということになる。
「街から偶然ここまで辿り着いた。と見るのが、自然か。ともかく美保さんも迎撃準備をしてください」
「そうね、今武器持ってくるわ」
窓から敵を確認して思考を動かしている雛。迎撃のために美保はブラックバスターこと軍用の折りたたみ式スコップが置いてある自室へと向かう。
そして急ぎ自室に入ると、迷わずブラックバスターを手に持った。その瞬間、これから始まる戦いの緊張感が美保を包む。
〝生きる〟と決意した後でも死の恐怖は思考に入り込む。
「今は生き残らないと!」
ブラックバスターを握る力が強くなり、美保は恐怖を打ち消すように声に出して〝生きる〟決意を更に固める。
そうして美保は自らの武器を持って自室から出た。
「あ、美保さん」
自室を出てすぐに聞こえてくるアイーラの声。美保は声のした方に目を向ける。美保の視界に映るのはAEK971と弾薬箱を両手で抱えているアイーラの姿だった。
「美保さんも武器を?」
「もちろん、武器がなきゃ戦えないもの。さ、戻るわよ。雛君たちが待ってる」
「はい……!」
それぞれの武器を持ち、アイーラと美保はリビングへと戻る。
リビングではレイテットがドラグノフの弾倉に弾薬を込めており、雛は双眼鏡を手にして偵察をしていた。
迎撃の準備を進めている最中のリビングにアイーラと美保は戻ってくる。
「お待たせ、今はどんな感じ?」
状況把握のために美保が尋ねる。次いでレイテットが作業をしながら「雛君、どう?」と尋ねた。
「敵との距離は約300m。俺たちの存在にはまだ気付いていないのか、ゆっくりこちらに接近してきている。敵の数は二十四体。その内、二十体がスライム状の初期型。後の四体はナチスらしき軍服姿で銃器を持った人型だ。敵が銃器を持っている以上、外に出て戦うのはおすすめしない。ましてや接近してくる敵の数は多い、数の多さに気を取られればこちらが撃たれるかもしれない。それに敵が持っているのは銃器だけ、しかも気付かれていない今の状況ならこちらから仕掛けることが出来る。ここは籠城して先手を取るのが良いと思う。みんなの意見は?」
双眼鏡を下ろした雛は敵の詳細な報告と戦術の提案をして、彼女たちの意見を求めた。
「私は雛君に賛成、なにも考えてないって思われるかもしれないけど雛君のこと信じているから!」
レイテットはいつもの元気さで賛成意見を出した。その賛成意見に乗るようにアイーラも「雛君がもう答え言ったようなものだし、私も雛君に賛成するよー」と賛成を示した。
「私も……雛君のこと信じる」
美保も賛成を示した。しかしその口はどこか、雛に対して疑いを持っている。
救援が来ると言っても結局来ないこと。雛の立案した作戦が必ずしも安全ではないこと。
もちろん全世界が戦場となっている状況で救援や安全が必ず保障されることはない。民間人であり、外で戦った経験の少ない美保はそれを知らない。
「全員の賛成を聞けたところで、急ぎ役割を決める。アイーラは銃器を持った『PODE』を最優先で狙撃してくれ。美保さんは家の戸締りをしながら入り込んだ敵の撃破をお願いします。俺とレイテットは接近する敵を迎撃だ」
「OK!」
「ほーいよ」
雛の決めた役割にレイテットもアイーラも返事をするが、美保は疑うままで黙っている。
「では籠城戦を始める! レイテット、敵の目を引き付けるためにもリビングで迎撃するぞ」
「おうよ!」
「アイーラはレイテットの部屋に行ってくれ、そこなら狙撃しやすいはず。狙撃のタイミングは俺とレイテットの迎撃が始まってからだ」
「あーい」
雛の指示を聞き、レイテットとアイーラは籠城戦に向けてそれぞれ動き始める。
雛の指示が行き渡る中、美保は戸締りのために家のあちこちに走った。敵が入って来れないように窓や扉の鍵が掛けられていく。初歩的だが、鍵を掛けてしまえば敵が簡単に入って来ることは出来ない。
「これで、最後っと」
家の中を走ったために少し息切れを起こしているものの、美保は一通りの戸締りを終えた。
これで籠城戦の準備は整った。後は迎撃するのみ。
生存者たちの生き残りを賭けた籠城戦が始まる。




