第八十六話 襲来してくる者たち
更新早くしたい(定期)
時刻は午前十時。
生存者たちは朝からシャワーを浴び、乱れて汚れた身体をスッキリさせ終わっていた。そして今、生存者たちはリビングにてテーブルを囲んでいた。
「さーて、シャワーを浴びたことだし今日はどうする?」
「まずは次の物資確保のために次の目標と作戦を決めるのが良いだろう。救援がまだ来ない以上はここで耐え忍ぶしかないからな」
レイテットの言うことに雛が一番に答えた。その次に美保が「雛君の言うこともその通りだけど、家事や身の回りこととかも忘れないでよね」と答え、レイテットと雛はハッと家事のことを思い出す。
そんな様子をアイーラは部外者のようにボーと見つめる。もちろんアイーラは部外者ではない。
「あ、二人共忘れていたわね?」
「は、はい……」
「右に同じくです」
二人の様子から察して美保は言うと、図星のようにレイテットと雛は正直に告げる。
「まぁここ最近戦いと物資集めに集中していたから忘れていたことは許すわ。だけど作戦や目標を立てるのは家事をやった後よ? 分かった?」
「はーい」
「はい」
美保の注意深く告げることにレイテットはいつも通りの元気な返事をし、雛は条件をのむようにしてしっかりと返事をする。
そんな様子を見ているアイーラは全くの部外者面だが、不意に美保に肩を掴まれて「アイーラちゃんもね?」と忘れられずに引き込まれる。
「おっと、美保さん忘れてなかったー」
「忘れると思う?」
「思いません」
乱れの時の甘さから一転、逃がさないと言わんばかりにアイーラの肩を掴んでいる美保。それでもどこか優しさのある美保に、アイーラは親しみのある怠け癖を見せながら告げていく。
「こほん、それじゃあまずは洗濯から始めましょう。みんな結構服汚れていると思うし、特に雛君とか」
美保のジト目が雛へと向き、次第にレイテットとアイーラの視線も雛へと集中する。
全員の視線が集中していることから雛自身も衣服の汚れが気になり始め、確かめるように臭いを嗅ぎ始めた。
「それほど強烈な臭いはしません」
「臭いじゃなくて汚れよ、汚れ。そこまで臭いがないからって汚れがない訳じゃないの。まぁなんにせよ、洗濯なしにずっと同じ衣服は汚いわよ」
臭いの感想を言う雛にすかさず美保はツッコミを入れるが、すぐに真面目な顔の雛から「確かに」と天然めいた発言が飛び出してくる。
早々にツッコむのも疲れてきた美保は心配な溜め息を吐き出すしかなかった。そんな二人を余所にレイテットとアイーラはクスクスと笑っていた。
「ほーら、洗濯さっさと始めるわよ。まずはそれぞれの部屋から汚れた下着や衣服を持って来てね」
美保が仕切り直すように言う。今度は真剣な面持ちであり、冗談めいたものは一切ない。
レイテットとアイーラは美保の指示に従うように動き出して下着や衣服を取りに自室へと向かう。
そして雛はというと、汚れているものは全て身に付けている状態である故にその場で下着諸とも衣服を脱ぎ出そうとし始めた。
「雛君、それはダメ! 今ここで脱ぐのは!」
脱ぎ始めの雛を目にし、裸体の雛が勝手に頭の中に入ってくると美保の顔を途端に赤くなる。そんな美保に対して雛は平気な顔をして「見られるくらいなら平気です」となんの恥ずかしさもなしに告げた。
「こっちがダメなのー!」
乙女な声で美保は、雛の裸体を見ないようにと手で視界を覆って塞いだ。今まさに雛の裸体を見れば変な妄想が止まらなくなるだろう。
そんな美保の事情を分からない雛は現状に戸惑いながら衣服を脱いでいく。
「雛君、全部脱いじゃった?」
「はい」
美保の質問に真面目な返事が返ってくる。ここまで来るとどうなったか、美保の中で興味が湧いてきていた。
「見ちゃうよ? 大丈夫?」
「大丈夫です」
雛の返事を信用して、美保は手の隙間から覗く。隙間から見える光景は男らしい筋肉の付いた雛の全裸だった。もちろん謎の光で隠されてしまいそうな部分も表に出ている。
「あわわわ、最初の触診で見た時もそうだったけど本当に良い筋肉付けているわね」
雛は特に恥ずかしくもしていないが、美保は顔を赤くさせながらその全裸を見てしまった。
美保の変な妄想が加速しそうなまさにその時である。
「美保さーん、洗い物持って来ました!」
「持って来ましたー」
レイテットとアイーラが洗い物を持ってリビングに戻ってきた。
美保の頭の中で悪い予感が稲妻めいて走る。
そしてその予感は早々に現実のものとなった。
「雛君……なんで全裸なの?」
レイテットがジト目で質問を吹き掛けてくる。それと同時にアイーラのジト目も突き刺さり、気まずさが漂ってくるかのように訪れる。
もはや美保に質問に返せるぐらいの返事はない。しかしこの気まずさの中、雛は「洗濯するらしいから脱いだんだ」と直球で答えた。
直球過ぎるその回答に、レイテットは「あー……それなら仕方ないっか」と困った表情を見せる。
「今から雛君でも着れる服持ってくるからちょっと待ってて!」
そう言って、レイテットは自室へと戻っていく。
雛たちは少しの間戻ってくるのを待った。
「持って来たよー!」
少しして元気なレイテットがリビングに戻ってきた。その左手には無難なTシャツとジーンズ、そして右手には明らかに女性物のパンツを持っている。
この時アイーラと美保の視線は左手の衣服よりも右手のパンツに集まっていた。女性物のパンツを男である雛に穿かせようとしていることに、アイーラと美保は「え?」と困惑を隠しきれない。
「これ着てみて! 私と雛君、身長そんなに変わらないから着れるはずだよ!」
「ありがとう、早速着てみるよ」
レイテットから衣服とパンツを受け取り、言葉通りに早速着始める雛。着ているところをみんなに見られても雛は気にしていない。しかし見ている側であるアイーラと美保は雛の裸体が気にしないなど出来なかった。特に美保が雛の姿を気にして若干興奮しており、女性物のパンツを穿いている雛の姿に新たな性癖の目覚めを迫らせていた。
「雛君……別の部屋でお願い出来るかしら」
流石に新たな性癖は気持ち悪い。美保はそう判断して封印するように告げた。
雛は「はい? 分かりました」と素直に聞き入れ、レイテットの部屋へと向かった。
「はぁ……洗濯するわよ」
疲れるように溜め息を吐き、美保は洗い物を持って洗濯機に向かう。洗濯機は自家発電のおかげでまだまだ動いてくれる。
洗濯機のところに来た美保は衣服をよく確認してから次々と洗い物を放り込んでいく。洗濯機に入れなかった分は手洗いだ。
「?」
手洗いの分の洗い物を持って美保は何かに気付く。視線の先は窓の外、草の緑に混ざってなにかが動いている。
「あれ、まさか……!」
美保はハッキリ見た。草の緑の中で蠢く者。
その蠢く者はまさしく『PODE』だ。
しかも一体のみならず、二十体ほどで拠点である家に近付いて来ている。
「みんな! 敵よ!」
美保は全員に知らせるように叫ぶ。
安全地帯であったはずのこの家で戦闘が始まろうとしていた。
ダクソが面白い……!!




