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【完結】POD Enemy  作者: D-delta
エピソード3 疲れと生存

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第八十五話 生きる重たさ

久しぶりの更新です。そろそろ活発に活動したいです……

 太陽昇る静かな朝。

 目を覚ました生存者たちはそれぞれの相手と肌を合わせ、心を寄り添わせる。

 大きくなった乱れは絶頂に至り、火照りが落ち着いていく内に時刻は午前九時。蜜の交わりは一時の終わりを迎える。

 そうして生存者たちはいつものようにリビングに集まっていた。


「おはよう!」


 集まって開口一番にレイテットの元気な挨拶がリビングに響く。それを皮切りに周りも「おはよう」の挨拶を交わす。

 挨拶を終え、生存者たちはそれぞれ楽な態勢でイスに座る。


「さて、今日はどうする?」


 レイテットがいつもの調子で尋ねると、美保が一番に口を開く。


「まずはシャワー浴びるわよ。反対意見は聞かないわ、良いわね?」


 美保がそう強く言う。もちろん〝朝からエッチしていたから〟なんていう恥ずかしい理由は言えず、シャワーを浴びる理由は言わない。

 そんな恥ずかしい理由を隠すためにも、美保は理由を尋ねられないように反対意見は聞かない強行した姿勢を見せた。


「私はオッケー」


 美保と一緒にナニしていたアイーラはなんとなく察し、すぐに賛成を出す。

 後はレイテットと雛、反対意見は聞かないという美保の姿勢にどう反応するかである。


「せっかくだし、シャワー浴びよっか!」

「そうしようか」


 レイテットと雛も賛成を出した。

 この一瞬、美保は平静を装っているが、理由を尋ねられるかと緊張の末に冷や汗をかいていた。


「はぁ……決まりね。先に浴びたい人いる?」


 理由を尋ねられなかったことに安心の溜め息を出し、美保は告げた。

 生存者たちは揃って顔を見合わせる。譲り合いが始まってしまった。

 誰か名乗りを上げるかと顔を見合わせたまま少しの沈黙が訪れる。

 譲り合いの変な沈黙。生存者たちは顔を見合わせる内に可笑しくなったのか、クスクスと笑い出した。


「えーと、いないみたいね。ふふ、じゃあ私から浴びているわね。後の順番は私がシャワー浴びている間に決めておいて」

「はーい、美保さん!」


 笑い交じりに美保は告げる。返事は元気の良いレイテットの声である。

 美保はシャワーを浴びるためリビングから離れ、浴室へと向かう。


「さっきはちょっと危なかったなぁ」


 理由を尋ねられるかという焦りもあって、美保はふと呟きながら誰もいない洗面所に入る。

 肝心の浴室は洗面所の先にある。


「あ、少し痩せてきたかしら」


 洗面所で衣服を脱ぐ最中、偶然鏡に映った自らの身体を見て告げる。そして美保は自信ありげに自らのお腹の肉を摘まんだ。

 その瞬間だった。美保にショックが走った。

 確かにその身体は雛と初めて会った時よりも幾分か痩せている。しかしぷにゅりとしっかり摘まめてしまった。美保が思っているより、肉付きが良いことにはなにも変わりなかった。


「流石にそう都合良く行かないわよね、はぁ……」


 溜め息を吐き、落胆する。

 他人から見ればどうでも良い非情な現実である。そんな非情な現実に落胆しながらも美保は衣服を脱ぎ終え、浴室へと入っていく。


「ん?」


 浴室に入ってすぐに美保の目線は鏡へと移る。

 鏡に映る自らの裸体。美保の目線は自らの股へと行き、まだシャワーを浴びていないのに水が太ももを伝っている。

 その水を視界に映すと、美保はアイーラとの乱れを思い出して顔を赤く染めた。


「ま、全く、淫らね」


 顔は赤く染めているものの、思い出された乱れに呆れるようにしてボソリと呟いた。そうして美保は乱れも汚れも落とすようにシャワーを浴び始める。

 シャワーから出た温水が美保の身体を伝って流れていく。


「この生活、いつまで続くのかしら……」


 シャワーで乱れも汚れも落とされていき、冷静な思考が戻ってくる。しかし戻ってきた冷静さは美保の思考を重たくさせる。

 その内にシャワーの流れは止まり、重たさを拒否するように美保の思考も止まる。

 思考が止まった今、美保はなにも考えずに自らの身体を洗い始めた。

 湯けむりの漂う中でただ黙々となにも考えず洗い続ける。死ぬかもしれないという恐怖から逃れるように身体を洗う手を動かし続ける。


 そして二十分ほどが経った。

 美保の身体は清潔なものとなり、乱れによる汚れは完全に洗い流された。しかし洗っている間に拒否していた重さが再び訪れる。

 美保は勝手に動く思考に対して落ち着けるように座れる場所に腰を下ろした。


「どうすれば良いのかしら、私たち」


 訪れた重たさは美保の目線を下ばかりに向かせ、思考の中を暗く不安なもので満たしていく。

 身体を綺麗に洗い流したばかりで疲れていても、美保の思考が止まることはない。

 餓死の恐怖。いずれ誰か死ぬかもしれない恐怖。殺されるかもしれない恐怖。

 それら恐怖と共に身体の疲れもあって美保は一気に脱力してしまう。


「どうすれば……」


 美保の口から出る弱音。そんな時であった。


「美保さーん! まだですかー?」


 扉を通して浴室にレイテットの声が入ってきた。その元気な声に反応した美保は顔を上げ、視線を扉の方へと移す。

 扉越しに見えるレイテットのシルエット。


「美保さーん?」


 少し心配した声と共に浴室の扉が開かれ、レイテットがひょっこり姿を現す。

 レイテットの姿を見た美保は年長者としての立場を思い出して咄嗟に脱力から立ち直る。そのまま立ち上がって「ごめんなさい。ちょっと長く入り過ぎたかしらね」と疲れを隠すように笑みを見せた。


「あ、いえいえ大丈夫ですよ! 私こそ急かすようなこと言ってすみません」

「上がるわね。次入りなさい」

「はい!」


 交代するように美保は浴室から出て、レイテットが浴室へと入っていく。

 そして浴室の扉が閉まった瞬間、美保の表情は笑みから疲れへと変わる。


「しっかりしなきゃ、年長者なんだから」


 バスタオルで濡れた身体を拭いていきながら美保は自らに言い聞かせ、思考の重たさや恐怖を閉じる。

 美保は辛うじて真っ直ぐに向いた心を持って〝生きる〟と自らに刻む。

 そんな太陽昇る静かな朝。

 ぬめりとした音を出す敵が近付き、同時に戦いも近付く。


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