第八十四話 乱れ
今回はKENZEN()回です。
少しの性描写も無理という方はあまり目にしない方が良いかもです。
月は落ち、太陽が昇る。不安な夜は過ぎていき、今日という新しい朝が訪れる。
月と交代するように顔を出したばかりの太陽がその輝きで街や生存者の家を照らしていく。
「朝?」
外に明るさに気付いた美保は、まだ眠たげな目を擦る。そうして段々目が覚めてくると、美保はベッドから身体を起こした。
「今日の朝は静かね」
起きたばかりの声で美保は告げる。
何者の音も届かない静かな朝。ここ最近の頻繁な戦闘行為のためか、鳥や虫の鳴き声は聞こえてこない。窓の外から聞こえてくるのは風が草木を僅かに揺らす音ばかりである。
そんな静かな朝を身に感じる美保は、ゆっくりと空を見上げる。
美保の視界に入る空は青い。薄い雲が空を浮かんでいるだけで、曇る様子はない。
「ほわぁ……起きよう」
口を大きく開けたあくびを一つして、美保はベッドから出る。そして背伸びをしてから部屋を出る。美保はみんなが集まるリビングへと足を運ぶ。
リビングにはまだ誰もいない。
リビングを見回しても誰がいることもない。
「まだ誰も起きていないのかしら?」
美保は呟く。
誰もいない静かさ。どこか寂しくなる静かさに、美保は段々と昨日の不安を思い出す。思い出された不安は次第に肥大して「なにかあったのかしら」と、美保の口から出させるほどみんなの安否が気になり始めていた。
そんな肥大し続ける不安に駆られ、美保はリビングから離れる。離れて向かう先はレイテットの部屋だ。
「生きているわよね」
不安な一言を呟き、美保はレイテットの部屋にノックしようとする。その時美保の背後から「おはようでしゅ」と突然寝ぼけた挨拶が送られてきた。
「ぶぇ!?」
突然の挨拶に美保は声を出して驚き、さっと後ろに振り向く。振り向いて視界に入るのは空色の髪。少し下に視界をずらすと、そこには目を擦って眠たそうにしているアイーラがいた。
「ちょっとアイーラちゃん、驚かさないでよ」
「あう? ごめんなさい?」
アイーラの額をちょこんと人差し指で突いて美保は告げる。アイーラは首を傾げながら謝った。もちろん美保が少し怒っているのに対してアイーラは謝っているつもりなどない。
「とりあえずおはよう、アイーラちゃん」
「んー……改めおはようです」
美保の表情が年長者らしい余裕あるものに戻り、美保はまだ寝ぼけているアイーラとの挨拶を済ませた。
アイーラの可愛らしい寝ぼけ姿を視界に映した今、美保の肥大した不安は消えていく。
「さて、レイテットちゃんと雛君を起こしましょうか」
美保の言った後にアイーラが「はーい」と頷く。そうして美保はレイテットの部屋の扉に手を掛けた。
しかしその時である。
扉の向こう側から微かにギシギシと軋む音が美保とアイーラの耳に入ってきた。明確に正体の掴めない音に美保とアイーラは頭に疑問を浮かばせる。
「なんの音かしら?」
「んー?」
軋む音が気になる美保とアイーラは扉の向こう側に聞き耳を立てる。すると、軋む音と一緒にレイテットと雛の声が聞こえてきた。
「二人でなにやっているのかしら」
「ひょっとしたら、ナニやっているかもです?」
美保の疑問にアイーラがそれと思わせることを言い被せる。
美保とアイーラは少し無言のまま顔を見合わせる。その内に頬が赤く染まり、二人は再び扉の向こう側に聞き耳を立てた。
「雛君……お互い怪我人なんだから、ゆっくり……ね?」
「分かった」
扉の向こう側から聞こえてくるやり取り、しかもレイテットと雛の息が荒い。そしてまたベッドの軋む音が僅かに聞こえてくる。
美保とアイーラが興味津々で耳を澄ませていると、ベッドの軋む音以外に水音と喘ぐ声も聞こえてきた。
「これは確実に、ナニやってますね」
聞き耳を立てたままアイーラが確信したように告げる。事実扉の向こう側ではレイテットと雛がお互いを求めて止まらないくらいに盛っている。
「なんだか邪魔するのも悪いし、二人の時間を大切にしてあげましょう」
「そうと決まれば撤退、撤退です」
美保とアイーラは愛し合う二人を邪魔しないよう、こそこそとレイテットの部屋から離れてリビングへと移動していく。
しかし離れたところで美保とアイーラはすることがない。その上、扉の向こう側から諸々を聞いた後だ。二人の気分は昂っている。
「アイーラちゃん、この後どうする?」
「い、いつも通りに過ごすのが良いと思います!」
昂りを誤魔化すように告げるが、思考は一向に淫らな方から戻ってこない。
そして顔を見合わせれば共に乱れる相手として意識してしまう。頬は赤く染まったままである。
「や、やります?」
アイーラの口から途端に告げられる。
抑えられない昂りは相手への意識となって緊張が走る。心音は大きく、身体は疼いて、頬の赤染めは身体を火照らせていく。
「女同士よ? アイーラちゃん、それで良いの?」
「よ、予行演習ってことで」
二人は今にも獣のように求めそうで目を合わせない。
少しの沈黙が流れた後に美保が「行きましょう」と告げて、アイーラを自室に連れていく。
手を引き、手を引かれ、心音を大きくしながら二人は美保の部屋に入る。そしてなにも会話なく、二人はベッドに横になる。
「やるわよ? 覚悟は良いわね?」
「はい、お願いします」
少し緊張の入った声色。ベッドに横になっている二人は向かい合って身体を寄せていく。
二人はお互いの身体に手を伸ばし、緊張混じりにゆっくりと抱き合う。
「美保さんの身体、とても温かくて柔らかいですね」
美保の肉付きの良い身体にアイーラはゆっくりと沈む。その華奢な身体が美保の温もりに包まれていく。
「そう言うアイーラちゃんは小さくて、とても素敵」
少しの乱暴で壊れそうな華奢で小さい身体なのに、確かに心臓は動いていて温もりがある。そんなアイーラの身体を、美保はその身に感じる。
「美保さん、今日だけは特別に……私のことを好きなようにしてください」
アイーラの恥じらいが混ざった誘う声に対して、美保は「本当に好きにしちゃうから」といつになく妖艶な表情で告げる。
昂りのままに身体が疼く二人。美保の手は咲いたばかりの百合の果実へと触れ、アイーラは果実から走る刺激を受け取る。
「美保さん……!」
小さく叫んで媚びる声。アイーラの顔はほんのりと赤く染められ、走る刺激に耐えるように歯を食いしばる。
次第に果実はアイーラの肌を伝って蜜を垂らせていく。
「頂くわね、アイーラちゃんの甘い蜜」
美保は妖艶な口振りで蜜を垂らす果実に口を付けた。求めて止まらない舌は確かに蜜穴を味わう。
蜜の味わいの果てに果実からは一本の薄赤い枝が生えてくる。その枝からも蜜の匂いが漂っている。もはや乱れの者と化した美保は薄赤い枝も口に咥えては舌を絡み付かせる。
「ん、はぁ……」
「あ……ぁぁ! くぁ、んぅー!」
息は荒く、蜜は二人の肌を伝う。
蜜が尚も垂れる中に疼きは生み出される。そうして二人が重なると、人という獣の乱れは大きくなる。
こうして静かな朝は大きくなった乱れで始まる。しかしその乱れに誰も気付くことはない。誰かの耳に聞こえることも、誰かの目に入ることもない。
静かな朝の中、生存者たちはひたすら乱れのままにお互いを確かめていく。
プロットって大事だよねって毎回思う。それはともかく完結目指して更新がんばりますか。




