第八十一話 戦いの終わった後
更新長くなりました……やはりしばらく書いていないと分からなくなりますね(;一_一)
様々な激戦が終わり、生存者たちは家へと着いた。
時刻は既に午後六時。空が夜へと変わっていく時間帯だ。
「レイテットちゃん、私を自室に運んでくれる?」
家に帰って開口一番に美保が疲れた様子でレイテットにお願いする。もちろんレイテットは嫌がる素振りはなく「分かりました!」と、いつもの元気な笑顔で頷いた。
「レイテット、荷物をこっちに。美保さんを運んであげて」
「お、気が利くね。じゃあお願い!」
「うん」
雛が柔らかな表情で声を返すと、レイテットは自らの荷物と美保が持っている分の荷物を雛に預けた。
雛は受け取った荷物をリビングに持って行き、レイテットは美保を部屋へと運んでいく。
「ごめんね、レイテットちゃん」
「いえいえ! 構いませんよ!」
今日の激戦で心身共に疲労している美保に、全く疲労を感じさせない元気さでレイテットは答える。そうして美保は自室へと運ばれていく。
「ベッドに寝かせます?」
「お願い……」
お願い通りにレイテットは美保をベッドに寝かせる。
身を落ち着かせてくれる柔らかいベッド。美保は身体をベッドに沈めていく。
「はぁ……」
美保が溜め息を一つ吐いた。ようやく心身共に落ち着けるひと時の訪れである。
「私はこのまま休んでいるわ……たぶん動けないから、夕飯はみんなの好きなように食べて」
「はい!」
レイテットが元気な返事をして美保の部屋から出て行く。
電気を点けていない暗い部屋。疲れた身体をベッドに沈めたまま美保はそっと天井を見上げる。
「疲れたなー」
疲れた目を天井に向けたまま、美保は呟いた。声は重く、美保の身体も次第に重くなる。そこから段々と意識が削れる。
「こんなボロボロじゃ、ツワブキの魔法姫なんか名乗れないわね」
意識が途切れる前に今の自分の状態を笑い、美保は目を閉じた。そのまま寝息を立てて意識を落としていく。
※
美保が眠りについた頃、雛とアイーラの二人はリビングで怪我の治療をしていた。
「あいたたた……」
アイーラが怪我したところを手鏡で探っている。
「気付かない内にこんな怪我があったなんて、絆創膏貼っとこう」
手鏡に映る身体のすり傷や切り傷。アイーラはそこを消毒して絆創膏を次々貼っていく。
そうして傷は絆創膏によって隠れる。
「あー! 消毒液が沁みる! はぁ……雛君そっちは……って、グロいねぇ」
「見ない方が良い。吐き気を催してしまうぞ?」
雛が自身の失明した右目の流血を包帯で塞ごうとしている最中、ポロリと右目の一部だったものが落ちているのをアイーラは見てしまった。
雛の右目は神話型『PODE』のゲイボルグによって完全に失明しており、怪我の具合はアイーラの比じゃない。これから雛は右目なしで戦わなくてはならない、戦う者にとっては致命的な後遺症だ。
「帰っている時、雛君の右目のこと気付いてあげられなかったけど……本当に大丈夫?」
「大丈夫だ、心配するな。今まで右手右目で敵を狙っていたのを、右手左目に返れば良いだけだからな」
「それってかなり狙いづらくない?」
「まぁな。しかしみんなを守るためにも戦わなければならないんだ、右目が一つなくなったぐらいで俺が戦いから外れる訳にはいかない」
雛は平気な顔をして、包帯を巻きながら告げる。アイーラはそんな平気な顔をしている雛が心配でしかなかった。事実目の一部だったものが落ちているのを見て、心配しない方が難しい。
「とりあえずこれで良いか」
応急処置程度に包帯で雛の右目が塞ぎ終わる。
「美保さん運び終わったよ」
雛が右目を塞ぎ終わって丁度、レイテットが戻ってきた。
アイーラは「あ、戻ってきた」とレイテットを見て告げる。
雛もレイテットを見るが、もう右目でレイテットの姿を見ることは出来ない。残った左目だけがレイテットの姿を見つめる。
「二人共、怪我はどう?」
レイテットが雛とアイーラに問う。
アイーラは「私は軽い怪我だけだから大丈夫。それよりも雛君の方が怪我は重いと思うよ」と雛を見ながらレイテットに告げた。
レイテットは雛を見る。
血の滲む右目の包帯。怪我の重さがハッキリと表されている。
「右目……もう見えないんだね」
「うん」
「私があの敵を倒せていれば、雛君が怪我しなくて済んだよね」
責任を感じているレイテット、それに対して雛は首を横に振った。
「終わったものは仕方がない。それに右目を失う程度で済んだんだ。俺はレイテットとこうして一緒にいられるだけで十分だよ」
雛の表情に右目を失った悲しみはない。むしろその表情には喜びがあった。
レイテットはなにも言わずに雛を強く抱きしめる。雛もまたレイテットを抱きしめる。
「ごめんね」
「謝らなくて良い。みんな、今持っている力で最善を尽くした。それだけのことだ」
「ありがとう」
大事な人を傷付けさせてしまった涙。それがレイテットの目から頬に伝っていく。
雛はその涙を払い、レイテットの全てを許すように胸元に抱き寄せる。
「誰のせいでもない。結果がこれというだけだ」
雛の優しい言葉。安心感に包まれたレイテットは涙が枯れて、落ち着いていた。
夜は深さを増す。
「ちょっとちょっと、いつまでイチャ付いているの? レイテットも怪我しているんだし、絆創膏貼ったら?」
雛とレイテットが程良くイチャ付いているところにアイーラがムッと横やりを入れ始める。
アイーラの横やりをきっかけに二人は頬を赤く染めながら離れた。
「ほらほら、頬を赤く染めてないで絆創膏貼るよー?」
「う、うん」
アイーラは呆れながら絆創膏を持って、レイテットの怪我した場所を探す。もちろん衣服を着たままでは怪我の具合を知ることが出来ないため、アイーラは雛の目の前でも問答無用でレイテットの着ている衣服を脱がそうとした。
「な、アイーラ!?」
「怪我が見れないじゃんよ、レイテット」
「それは分かっているけど、だからって雛君の目の前でやらなくて良いじゃん! それに自分で出来るし!」
頬を更に赤くさせて、レイテットが恥ずかしそうに声を大きくする。
レイテットにしては珍しく羞恥している。それをじっと見つめるアイーラの表情は次第にいじわるなものに満ちたものになっていく。
「あー! 私、怪我が痛くて絆創膏を貼れなくなったわ!」
突然アイーラはわざとらしく怪我の痛さを大げさに言って「雛君、私の代わりにレイテットに絆創膏貼ってやって」と絆創膏を雛に渡した。
急なことに雛の頭の中はハテナだらけ、とりあえずといった様子で雛は渡された絆創膏を持ってレイテットに寄る。
「レイテット、俺が怪我を診る。身体全体の怪我を発見するためにも服を脱いでくれないか?」
「う、うん、まずは上からね」
どこまでも真面目な雛に従い、レイテットは上半身の衣服を脱いだ。
美保ほどでなくても十分にある控えめな胸、程良くスタイルの良い上半身がハッキリと雛の視界に映る。
「変なこと、しないでね?」
「大丈夫だ。俺は消毒と絆創膏で傷を塞ぐぐらいしかしない」
雛はレイテットの上半身の隅から隅まで見つめ、怪我がないかの確認を行う。結果的に見つかった怪我は六ヶ所。どれも大きな怪我でなく、浅く小さいものばかりだ。
「あちこちに怪我しているな」
「マジ? 私、大丈夫かな?」
「この程度なら大丈夫だ。すぐに処置する」
雛は怪我の一つずつを丁寧に消毒して、絆創膏を貼っていく
「んっ……!」
雛の手が肌に触れ、消毒で沁みた傷口に絆創膏が貼られる度にレイテットは甘い声を出した。甘い声が立て続けに出る間に六ヶ所の怪我は全て絆創膏によって塞がれていた。
「次は下半身だ」
「そこも見るの?」
「もちろんだ」
羞恥を露わにして、レイテットは頬を赤く染める。そして雛の従うままに下半身の衣服も全て脱いだ。
下着で隠れている部分以外の素肌が全て表に出ている状態。レイテットの羞恥は限界にまで達していた。
「は、恥ずかしい」
雛に怪我がないか、じっと見つめられている。レイテットの羞恥はいよいよ甘い声となって表に出て来るようになった。
「こことここか」
羞恥でいっぱいいっぱいのレイテットを余所に、雛は脚に明確な怪我を二か所発見した。もちろん怪我は浅く小さい。致命的な傷ではなかった。
雛は迷いなく慎重な消毒を施し、絆創膏を貼った。これで二つあった傷は隠れた。
「よし、これで良い。服着て大丈夫だぞ」
「ありがとう」
限界に来た羞恥から出るぎこちないレイテットのお礼。
「なんだか、気疲れしちゃった」
「あぁ、少し休憩を入れるか」
再び抱き合う雛とレイテット、それをニヤニヤとアイーラは見ている。
生存者たちの夜はこれからだ。
とりあえず完結目指して頑張ります。
それと『EDF:IR』終わりました(特にいらない報告)




