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【完結】POD Enemy  作者: D-delta
エピソード1 強く生きる雛

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第八話 暴走車

昨日修正ばっかりやってたので投稿遅れました。

 太陽はホルムスクの街全体を照らしていた。

 動物たちが起きる時間。鳥たちは鳴いて、虫たちは飛んだり跳ねたりをしている。

 もちろん『PODE』も起きている時間帯だ。ぬめりとした音を立てて蠢いていく。そして次なる獲物を探している。主な活動場所など『PODE』にはない。言ってしまえばどこにでも活動していることになるが、獲物を摂取しやすい人の住む場所を中心にして『PODE』は活動している。

 その『PODE』が最も活動している場所に、山を下ってきた生存者四人は足を踏み入れようとしていた。


「そういえば、美保さん。なぜその恰好なんだ? もっと動きやすい衣服の方が戦闘には向いていると思うのだが」


 さっきから美保の衣服のことで気になっていたゼラは疑問を美保に投げかけた。

 美保はニッと笑って「これはファッションなの、ゼラ君に分かる? 戦場に出ようが乙女は着飾るものなの」と自信を持って言い放った。

 ゼラもレイテットもアイーラも美保の言った〝乙女〟という単語が引っかかった。そしてレイテットがツッコむように言う。


「美保さん、もう乙女っていう歳ではないと……」

「なにか言った?」


 レイテットのツッコミに美保は異様な笑みで言うものの、その笑みの裏では確実に怒っていた。まさに地雷を踏んでいるのである。

 異様な笑みで怒っていることを察したレイテットは「な、なんにも言ってないですよ!」と、鉄拳が飛んでくる前になかったことにした。


「とにかく進もう!」


 そう言って先ほどの地雷を誤魔化すようにレイテットは先頭に立って進んだ。

「そうだな、まずは身に付けるものを整えなければ」とゼラがその後ろを付いていき、目的地を頭に入れてこの先の作戦を考えた。異様な笑顔のまま美保とスコープ付きのAK47を大事に持っているアイーラもレイテットの後ろを付いていく。

 生存者四人が向かう先は民家と衣服やカバン、リュックサックを揃えているお店があるショッピングモールだ。向かうのは良いものの途中で民家への道とお店への道が分かれており、ゼラはそのことでこれからの動きと作戦を考えていた。

 そして進んでいく生存者四人は街を目前にした。


「そろそろ街に入る。ここからは『PODE』の巣窟だ、気を引き締めてくれ」

「はいよ!!」

「あーい」

「分かったわ」


 生存者四人はホルムスクの街に足を踏み入れた。ゼラの言うとおりここからは『PODE』の巣窟。ここで油断をすれば昨日のレイテットとアイーラのようにやられかねない。


「死ぬなよ?」


 念を入れてゼラは言う。皆はコクリと頷き、再度気を引き締めた。

 それぞれがそれぞれの武器を構え、道路を道なりにゆっくり進んでいく。

 進んでいる最中に『PODE』の特徴的なぬめりとした音は聞こえてこない。つまり敵は来ていない。

 しかしそれが油断だった。


「ん……なにか来る、敵かも」


 狙撃手として耳の良いアイーラは微かな音を逃さず、遠くでなにかが接近してくる音を聞き取った。そして音が聞こえてきた方向にアイーラは向いた。アイーラの言動が気になる他の三人もアイーラと同じ方向を向いた。

 アイーラが見ている先の遠くには車道と歩道を関係なく走っている交通違反の車があった。その車は生存者四人の方に遠くから近付いていた。

 車の接近に気付いたゼラは〝敵〟と判断し、89式小銃の安全装置を解除した。


「みんな、あれは敵だ。戦闘準備!」

「マジで!? あれ敵なの!?」


 レイテットは目を凝らして見えてきた遠くの車を指差し、驚愕していた。敵に詳しくない人間からしてみれば『PODE』が無機物の車をコピーするなんていうことは驚愕ものである。


「ハッキリ見えてきた。ゼラ君の言う通り、あれは敵」


 四人の中で一番目の良いアイーラが述べる。レイテットと美保はアイーラの目の良さは知っており、アイーラが述べたことは二人にとって信用出来るものであった。

 車が近付いていてくる。この場にいる誰の目からも見てもハッキリ目視出来るほど近付いてくると、緑の体色と二つの核細胞――トラックの形をした『PODE』が見えてきた。

 各々が武器を構える。


「みんな、来るわよ! 敵はトラックなんだから猛スピードで衝突でもされたら異世界に飛ばされるわよ!」

「そんなことは見れば分かる」

「はいよ!!」

「みんなを置いて異世界になんか行きたくない」


 美保の冗談交じりの声が注意を促した。聞き取った他の三人は衝突されないよう肝に銘じる。

 トラックは止まることなくフルスロットルで爆走している。距離は縮まっていき、生存者たちを目前にした。このまま衝突すれば、いくら『PODE』の身体がスライム状で柔らかいとしてもトラックの大きな質量と爆走のスピードで死は免れない。仮に運よく免れたとしても人体に大ダメージをもらうだろう。

 しかし簡単に衝突する生存者たちではない。


「回避!」


 ゼラの掛け声に合わせて生存者たちは横へ飛んで回避した。回避され、トラックは行き過ぎていく。

 トラックがサイドブレーキを利かせて、タイヤの激しい音を出しながら向きを反転し始める。


「隙だらけ!」


 いち早く回避からの態勢を直したレイテットが銃剣付きのドラグノフを構え、アイアンサイト越しに隙だらけの敵を見つめる。そして引き金を引いた。マークスマンライフルならではの高威力の弾丸が風を切って飛んでいき、トラックをコピーした『PODE』の身体を貫通した。しかし狙いは外れて、敵の心臓部にはヒットしなかった。


「うわヤバ、外した!」

「レイテット、ここは任せて」


 外したことで焦っているレイテットの横で、アイーラはAK47に取り付けられたスコープを覗いた。スコープのレティクルを敵の心臓部である『シールド細胞』に合わせる。

 トラックは反転し切って、再度生存者たちに向けて爆走を始める。


「その心臓、頂き」


 真剣みのある気だるそうなアイーラの声と共にAK47の引き金は引かれた。

 敵との距離は100mある。AK47の命中精度は良くなく、100mの距離にある標的を確実に射抜くのは難がある。しかしそこをどうにかしてみせるのがアイーラだった。

 トラックにコピーした『PODE』が爆走しているところに放たれた7.62mm弾がスライム状の身体を貫通、心臓部である『シールド細胞』を確実に射抜いた。

『PODE』はトラックの形をボロボロと崩していき、爆走中に蒸発した。


「良い腕だ」

「さっすが! いつも通り凄いよ、アイーラ!」

「ふふん、スナイパーだもん」


 ゼラとレイテットに褒められ、アイーラは機嫌を良くして鼻を高くした。


「異世界行きトラックに化けた敵は死んだんだし、先へ進みましょう」


 美保が先導するように言い、美保を先頭にして生存者一行は分かれ道の場所は進んでいく。

 そして進んで数十分。分かれ道の場所まで到着した。


「ここからは戦力を二つに分けたいと思う。片方は民家の方へ、もう片方はショッピングモールへ。合流ポイントはこの別れ道。合流時間は午後の五時だ。合流時間までに来なかった場合は片方のチームが片方のチームを捜索するという形にさせてもらう。これで効率的に準備を進められるが、みんなはどう思う?」


 分かれ道でゼラは作戦を提案した。作戦は効率的ではあるが、かなりの危険が付いてくる。逆に安全性重視でやれば効率が落ちて地対空ミサイル破壊作戦実行が遅れてしまう。

 そしてゼラの提案した作戦の危険性をいち早く理解した美保は「どういう分け方にするの?」とゼラに問うた。

 ゼラは自分以外の安全性を考慮して「俺一人、そちらは三人行動だ」と述べた。


「それでゼラ君は大丈夫なの?」


 美保の表情が険しくなり、真剣な眼差しがゼラに向いた。他の二人は心配そうな目でゼラを見つめていた。


「大丈夫だ、問題ない」

「問題あるわよ! 一人ってことは誰も助けてくれないのよ?」


 ゼラの言うことに美保は心配して怒るものの、ゼラは表情を一つも変えずに「そこはよく理解している」と言った。


「……それで、私とレイテットちゃんとアイーラちゃんはどっちに行けば良いの?」

「民家の方に行ってもらう」

「分かったわ」


 一番年下のゼラが言うことを信じて、美保は了解した。そのまま美保はレイテットとアイーラを連れて、民家のルートへと歩き出す。


「ゼラ君、絶対に死なないでね!!」

「そうだよ、死んだら駄目だよ。死んだら無能自衛官って呼ぶからね」


 レイテットとアイーラが振り返り、ゼラが死なないように祈りながら言った。

 その想いの込められた言葉を耳にして、ゼラは無口無表情で歩き出した。


「生きる」


 今この時もう一度決意を固め、ショッピングモールのルートへ歩き出す。


ここからルートがショッピングモールルートと民家ルートに分岐します!

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