第七十六話 重荷
遅い更新の割に、今回は短いです……
雲は厚さを増すばかりで天気は責任を感じているアイーラのようにまだ晴れることはない。
彼女たちはドラゴン型から逃げ切り、姿を隠すことが出来る草むらの中で一度休憩を入れた。
「はぁ……はぁ……逃げ切ったわね!」
走り疲れたように草むらの中で座り込む美保が息を切らしながら言う。
「はい、後は雛君が来てくれれば一緒に帰れます!」
息を切らす様子もなく、レイテットは雛が戦っている方を心配そうに見る。
どれだけ雛の言葉を信用しても本当は死んでしまうのではないかという不安。それがレイテットの心の中で広がっていた。
「…………」
アイーラは息を小さく切らして、下だけを向いていた。頭の中には後ろ向きなことばかりが流れてくる。
――あの時、発砲しなければ
事実アイーラの発砲が更なる敵を呼び寄せた。
――あの時、私がもっと早く動けていたら
感情の曇りがアイーラの耳を塞ぎ、自らの世界に閉じ込めた。
雛たちの言葉はまるで届かなかった。もしも雛たちの言葉が届いてれば、もっと早く建物から脱出出来ただろう。しかもドラゴン型に発見されることもなかった。
――この事態を私が招いてしまった
アイーラの失敗、その失敗に伴って起きたことは全て事実。
仲の良いみんなに死の危険を背負わせたこともまた事実。
たくさんの事実はアイーラを苛む。
感じている責任は更に重くなり、罪の意識は高く積み上がり、みんなとの絆が崩れていくのを感じる。
「全部私のせいなの……私が音を立てなければ……」
自己嫌悪に陥ったアイーラが呟く。
「でも、私を守ってくれたじゃない」
美保のフォローする言葉。レイテットと美保はまだアイーラのことを失望しておらず、絆はまだ繋がっていた。
しかしその言葉も、失望していないことも絆もアイーラにとって重荷であり、恐れであった。
――そんなこと言わないで
アイーラは最初から自分に失望してほしかった。そうすれば失う痛みはなく、痛みを恐れる必要もなかった。
それほど期待や絆はアイーラにとって重荷なのだ。
「それで……ここまで逃げてきたけど、この後はどうする?」
「私はここで雛君を待っていようかと思います。あまり離れると雛君と合流出来なくなるので」
「相変わらず熱いわね。じゃあ、私とアイーラちゃんは先に戻っていて大丈夫かしら?」
「はい、大丈夫です! アイーラのこと……お願いします」
「このツワブキの魔法姫、任されたわよ!」
レイテットが雛を待ち続ける気持ちを見せる。その一方で美保は息を整え終えて立ち上がり、アイーラを抱きかかえた。
「行くわよ、アイーラちゃん」
「…………」
アイーラは自分の世界に閉じこもったまま、美保の言葉もレイテットの言葉も届かず無言である。
その様子から察して美保は特になにも言わない。そのままアイーラを抱きかかえて家に帰ろうとしていく。
しかし彼女たちの運は底なしに悪い。
美保は帰ろうとして足を進め、前方を見つめた。視界に映ったのは草むらとその後ろにある街並み。そして槍を持った人型の『PODE』だ。
「こんな時に……! レイテットちゃん!」
「はい!」
「敵が来たわ!」
「了解です!」
彼女たちは集まり、銃口と折りたたみ式軍用スコップの切っ先を向けて戦闘の意思を見せた。
戦いに次ぐ戦い。
槍を持った人型の『PODE』との戦い、神話の者との戦いが始まる。




