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【完結】POD Enemy  作者: D-delta
エピソード2 劣等感を抱く小さき子

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第七十四話 虚構を表す者

長いこと更新に時間が掛かりました(汗)

このままエタらずに更新を続けて行きましょう

 灰色の雲が太陽の光を遮り、大地には雲というフィルターを通して少ない光が届く。

 強かな風、恐ろしきドラゴン型の声、銃口の先、決戦の場は自然的に作られていく。


「みんなは逃げろ。このドラゴンは俺が殺す」


 雛の指示が飛ぶ。

 巨体を持つドラゴンである。巨体を活かしたドラゴンの攻撃に巻き込まれて、彼女たちの誰かが死ぬ可能性は極めて高い。

 それ故に自分一人で戦うという判断を雛は下した。


「でも、それじゃあ雛君が!」


 レイテットの声。恐怖に震えながらも心配の色を見せる。

 そんなレイテットに対して雛は自信のある笑みを見せた。


「俺は死なない」

「でも敵がこんなに大きくちゃ!」

「どれほど敵が大きくて強大でも、倒せないと決まった訳じゃない。レイテット、アイーラと美保さんのことは任せた」

「雛君のバカ野郎……生きて戻ってくるって信じているからね! 死んだら絶対に許さないから!」


 レイテットは複雑な気持ちになりながらも雛の言葉を信頼し、恐怖で固まったアイーラと美保を連れて逃げて行く。

 そうして雛と彼女たちの距離は離れていき、決戦の場にいるのはいよいよ雛とドラゴン型だけとなった。


「グオオォォォ……!」

「食えるなら食ってみろ、食えるものならな」


 半透明で緑色のドラゴン型『PODE』の前で堂々とリロードする雛。明らかに隙だらけだが、ドラゴン型は攻撃をしない。それは巨体を持つが故の余裕ではなかった。


「グオォォォ……」


 ドラゴン型の目には雛が攻撃を誘っているように見えており、攻撃出来ずにいるのだ。


「カウンターを恐れているか。感情があるということはお前も生きた人間を食った個体だな」

「今の行動一つで私が人間を食ったと見抜くとは中々鋭い。だが、ドラゴンである私が言葉を話せるのは想定外だろう?」

「…………」

「話す舌は持たんという訳か」

「これから殺し合う相手に話したところでなにかあるのか?」

「あるとも、言葉は最強の武器だ。貴様の意識がある内にあの娘たちが食われる瞬間を見せてやる」

「レイテットたちを殺させはしない」


 雛の目が殺意あるものに変わり、彼女たちを殺させまいと闘志が湧き上がる。そして右手にSAIGA20、左手に9mm拳銃を持ち、スタイルを『デュアル』に変えた。

 対してドラゴン型は巨体を動かし、緑色で半透明な牙と爪を雛に向ける。

 両者共に戦闘態勢を出来上がらせる。


「貴様も絶望に堕ちろ。そして私の糧になれ」


 ドラゴン型が牙を剥き出しにして、雛に襲いかかる。ドラゴン型の牙は大きく鋭い。人間である雛などあっという間に貫くだろう。


「お前の糧になるつもりはない」


 雛はドラゴン型のかみつきを甘んじて受けるつもりなどなく、後ろに飛んで回避する。

 ドラゴン型の巨体から放たれる攻撃がどれだけ強力でも当たらなければ意味はなく、回避されてしまえば大きな隙が生まれる。

 もちろん雛はドラゴン型の大きな隙を逃さない。


「もらった」


 SAIGA20を連続して発砲。スラッグ弾がドラゴン型の身体を貫通するものの、人間の知能を持ったドラゴン型は心臓部である『シールド細胞』を動かしてスラッグ弾を避けた。

 隙を突いた雛の攻撃は失敗に終わり、次の行動のために発砲を止める。


「もう少しばかり遊んでやろう」


 ドラゴン型の長い尻尾。付近の建物よりも長い尻尾で攻撃を繰り出す。その攻撃は周りの建物をも巻き込み、崩れた建物の瓦礫も尻尾と一緒になって雛に迫った。


「攻撃範囲は大きいが……!」


 迫り来る建物の瓦礫と巨大な尻尾。どちらか一つにでも巻き込まれれば死は高確率で訪れるだろう。

 だが、簡単に当たる雛ではない。

 雛はなだれ込んでくる瓦礫群に巻き込まれる前に全力で走り飛ぶ。一瞬の間だけ宙を舞う雛に瓦礫群から飛ぶ殺傷性の高い欠片は当たらず、ドラゴン型の尻尾は宙を舞う雛の下を通って行った。


「今のを避けたのか!?」

「次は当てる」


 雛は地面に着地すると同時にSAIGA20と9mm拳銃を発砲し、放たれた弾丸は動揺するドラゴン型の『シールド細胞』に擦った。


「なっ!?」


 雛の小さな攻撃が巨体を持つドラゴン型に命の危機を感じ取らせる。

 ドラゴン型は雛の攻撃が恐ろしくなり、何歩か後ずさりした。完全に威勢を崩してしまっている。


「遊びは終わりだ!」


 もはやドラゴン型には余裕がなくなり、恐ろしき者となった雛に立ち向かうため真の力を見せ始める。


「私の作り出す絶望に貴様も堕ちろ!」


 ドラゴン型の頭上に現れた魔法陣。禍々しく黒紫に光っている。

 程なくして魔法陣から一人の女性が現れた。

 黄色髪でポニーテール、動きやすい軽い服装、雛と同じくらいの身長。


「雛君! 助けて!」


 雛にとって聞き覚えのある声、雛にとって見覚えのある容姿、雛が最初に心を許した女性。

 魔法陣から現れたのはレイテットだった。

 そのまま身動き一つ出来ないレイテットはドラゴン型の巨大な手に容易に捕まる。


「レイテット!? 魔法を使ってここまで転送したとでも言うのか……」

「ふはははは! 貴様の言う通り私は魔法を使える。あの娘たちをここまで転送することなど実に容易だ。さぁ、私の言葉を実現させてやろう!」

「まさか……やめろ!」


 レイテットがドラゴン型の口に運ばれ、口が開かれる。そしてレイテットの身体に牙を突き立てた。


「うああぁぁぁっ!」

「レイテット!」


 レイテットの悲鳴が雛を絶望へと誘う。

 レイテットの肉体が裂かれ、血に染まり、ドラゴン型の腹に入る。


「そんな……」


 食われている様、大切な人が無残な形になっていく。

 雛の戦意は奪われ、やっと色付いた世界が灰色を通り越して真っ黒になる。

 涙が雛の視界を遮る。もはやなにも見えない。


「良い味だぁ、実に素晴らしい」


 ドラゴン型が味わうように言う。

 絶望はここに始まった。だが、同時に虚構は脆さを見せ始める。


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