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【完結】POD Enemy  作者: D-delta
エピソード2 劣等感を抱く小さき子

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第七十三話 曇った心

 時刻は午後の一時を越えた。

 曇り空が広がる街の下、生存者たちは今いる建物を根城にして百を超える『PODE』に攻撃を開始していた。


「ちょっと数が多すぎるんだけど!」


 それぞれの銃声が鳴り響く中、敵の数の多さにレイテットが弱音を漏らした。それに対して雛が「所詮は数だけだ。対処のしようはある」と数に屈しない素振りで告げる。


「私のせいで、こんなに敵が……」


 押し寄せてくる敵の大群と全力で抵抗する生存者たち。

 アイーラの発砲一つでこの状況が出来上がってしまった。アイーラ自身、この状況が出来たのは自分に責任があると思い詰めていた。

 その責任がアイーラの感情を曇らせる。AEK971の引き金を引く頻度が落ちてきて、狙いを付けるのにいつも以上に時間が掛かっている。


「私のせいで……みんなが死んじゃう」


 銃声が鳴り響く中にアイーラの小声が一つ。次第に悪い方向に思考が傾き始め、戦闘中にも関わらず、アイーラの意識は戦闘から少しずつ離れて行く。


「今ので十体目だ! 美保さん、念のために裏口の警戒をお願いします。レイテットはこのまま寄ってくる敵を迎撃、接近戦は銃剣が有効だぞ。アイーラはレイテットの援護と迎撃を頼む。俺は状況に応じてみんなのフォローと敵の迎撃をやる」

「了解、雛君!」

「このツワブキの魔法姫、裏口は任された!」


 蒸発させた『PODE』の数を数えていた雛がみんなに告げる。レイテットと美保は確かに雛の指示を聞き取り、それぞれ行動する。

 レイテットは雛と同じく押し寄せてくる『PODE』に攻撃を継続し、美保は折りたたみ式の軍用スコップを持って裏口を警戒する。


「私のせいで……」


 感情の曇りはアイーラの耳を塞ぎ、自らを自分の世界に閉じ込めてしまう。

 今のアイーラは『PODE』のぬめりとした音も、周りの声も耳に届かない。雛の指示など届くはずもなかった。


「うおりゃぁ!」


 レイテットの雄叫びと共に銃剣が『PODE』の『シールド細胞』を貫き、蒸発させる。もはや大群の『PODE』は建物の入口にごった返しており、一番入り口に近いレイテットに死の危険が迫っていた。


「レイテット、援護する!」


 雛がレイテットの援護に入る。SAIGA20からスラッグ弾が放たれ、複数の『PODE』を貫く。だが、ただ『PODE』の身体を貫いただけではない。しっかりと『シールド細胞』も貫いており、レイテットに襲いかかろうとした複数の『PODE』はあっという間に蒸発する。


「ありがとう、助かった!」

「フォローは任せろ」


 そのまま雛はレイテットの援護を続け、レイテットは接近戦も織り交ぜながら流れ込んでくる『PODE』を蒸発させていく。


「このっ! 来たわね!」


 裏口から『PODE』が入ってくる。しかしそこには美保がいた。

 入り込んだ『PODE』には軍用スコップを用いた美保の歓迎が繰り出され、軍用スコップの鋭い先端が『PODE』の『シールド細胞』に突き刺さる。

『PODE』は裏口から入って早々に蒸発した。


「このツワブキの魔法姫、そう簡単にやられないわよ」


 美保は『PODE』の蒸発を確認すると、再び裏口の警戒を始めた。

 雛、レイテット、美保の三人はそれぞれ役割をこなして『PODE』の攻撃をなんとか耐えている。


「私の役立たず……」


 しかしアイーラは感情が曇っている故に役割が頭に入っておらず、レイテットの援護をしないどころか敵の迎撃も疎かになっていた。


「コイツ!」


 疎かになった分だけ迎撃が追い付かず、入ってきた数体の『PODE』がレイテットに絡み付く。


「レイテット!」


 その瞬間を視界に入れた雛はすかさずレイテットの援護に入る。SAIGA20の引き金を引き、正確無比な射撃でレイテットに絡み付く『PODE』をあっという間に蒸発させた。


「レイテット、大丈夫か?」

「なんとかね……」


 次第に大群の『PODE』は生存者たちを追い詰めていく。しかも生存者たちの抵抗虚しく、数が減るどころか三十体を蒸発させた現状でも押し寄せてくる『PODE』は百を超えていた。

 このままでは弾が尽きて確実に数に押し潰される状況である。


「この建物なら敵の進行方向を絞って対処出来ると思ったが、こうも押し寄せられては死ぬだけだ。四方から狙われるリスクもあるけど早めにここから撤退するしかないな」


 雛は敵の迎撃をしながら少しでも生き残る確率が高い方法を思考し、この建物から離れて撤退するという結論に行き着いた。


「みんな作戦変更だ! このままだと全員ここで殺される、裏口からこの建物を出て敵を撒くぞ!」

「あいさー!」

「了解よ!」


 雛の作戦変更がレイテットと美保の耳に入った。それぞれ行動に移し始め、美保は裏口を確保し続け、雛とレイテットは裏口に向かって少しずつ退きながら『PODE』を迎撃していく。

 生存者たちが生き残るために動き始めている中、アイーラは動かない。もちろん雛の声など届いていない。


「責任は私が取らなくちゃ、私が……!」


 アイーラは押し寄せてくる『PODE』に向かってひたすら引き金を引き続ける。が、いくら正確な射撃で次々蒸発させようとも数が減る気配はない。


「アイーラ、ここから撤退するぞ!」


 雛の声は届かない。

 既にアイーラ以外の三人は裏口におり、無数の『PODE』は一番近いアイーラに押し寄せていた。このまま戦えばアイーラの死は免れないだろう。


「ダメ、殺される……アイーラ!」


 アイーラを救いたいという真っ直ぐな想う気持ちがレイテットを走り出させる。


「『デュアル』だ、援護する!」


 レイテットとアイーラを殺させないように雛の援護が入る。

 右手にSAIGA20、左手に9mm拳銃を構えての発砲。弾丸が飛び、レイテットとアイーラに襲いかかる『PODE』を蒸発させていく。


「アイーラ!」

「え?」

「行く……よ……!?」


 レイテットがアイーラを担ぎ、すぐに裏口にまで行こうとした瞬間のこと。レイテットの視線が建物の入り口に行くと馬鹿でかいトカゲの顔が映った。

 まさしくその顔はこの世のものではない恐ろしい顔である。


「ド、ドラゴン!」


 レイテットの身体を悪寒と緊張が駆け巡る。


「レイテット、早くこっちに来い!」

「う、うん!」


 雛の声が届いた。レイテットはアイーラを担いだまま走り、裏口にいる雛と美保に合流。生存者たちは急いで林に逃げ込む。

 無数の『PODE』たちは建物の中になだれ込み、もうそこにはいない生存者たちを探し始める。


「追って来ているか?」

「大丈夫、来てないよ」


 雛とレイテットは周りを見渡して敵の確認、美保は疲れた様子で息を切らしていた。アイーラは己の責任で自らの世界に閉じこもったままだ。


「よし、このまま家に帰ろう」


 雛がそう言った瞬間「グオオオォォォォォ!」と大地と空を震わす声が響いた。恐ろしい声である。この世のものではない。


「なんだ!?」


 雛はすかさず警戒するが、美保は恐怖で声も身体も固まった。

 そしてみんなの声が届かないアイーラにもその恐ろしい声は届いており、美保と同様に恐怖で固まっていた。


「ドラゴン……」


 恐怖に震えた声で、レイテットが恐ろしい声の正体を告げる。

 先ほどの建物が突然崩れ始める。無論建物内の『PODE』は崩れた際のがれきにやられてほとんどが蒸発する。


「グオオオォォォォォ!」


 再び恐ろしい声が響き、ソイツは姿を現した。

 崩れた建物の煙越しでも分かるぐらいに扇形の翼を広げ、半透明で緑色の巨体を煙から現す。

 その姿はまさしくドラゴン。ドラゴン型の『PODE』である。


「どれだけ強大でも『PODE』であるならば殺せない訳じゃない」


 彼女たちが恐怖にやられている中、雛はただ一人屈しない姿勢で前に出た。

 ドラゴンと雛の目が合う。

 また新たな戦いがここに始まろうとしていた。


そういえばですが、私も懲罰部隊の仲間入りを果たしました……

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