第七十話 力
更新頻度上がったと思ったら、年明けの忙しさで更新頻度がまた落ちた……悲しい
街の中に銃声が響く。
レイテットと雛、二人の戦いは続いていた。
向かってくる人型と初期型の『PODE』には発砲を繰り返して蒸発させ、接近戦になれば手刀と銃剣で『シールド細胞』を貫く。
「今ので何匹目!?」
再び背中合わせの状態となり、レイテットが訊く。
それに答えるように雛は発砲しながら口を開く。
「既に四十体は殺しているはずだ。この調子で殺し続けて、敵を引き付けることが出来ればそれで良い」
「アイーラと美保さんの方は上手くやれていると良いけど!」
「やれているはずだ。今は信じて引き付けるしかない」
会話が途切れると、再び銃声だけがこの場を包む。
迫ってくる『PODE』を片っ端から蒸発させ、二人が殺した数は全部で五十体を超えた。もはや『PODE』たちの数は最初より大きく減っている状態だ。
「騎士が動き出したか」
雛が告げる通りに、今まで戦いを静観していた騎士の姿をした『PODE』が動き出した。
重い足音、丸型の盾を左腕に付けて、剣を引き抜く姿はまさに騎士。そうして剣を構えて、今にも突っ込んでくる姿勢を取る。
「来るか、レイテット!」
その様子を見ていた雛は直感的に死の危険を察知し、背中合わせの状態となっているレイテットを突き放した。
その瞬間のことだ。
騎士型『PODE』の足元のアスファルトが砕け飛び、欠片が宙を舞う。突然発生した凄まじい衝撃波と共に騎士型『PODE』はレイテットと雛目掛けて弾丸のように飛んだ。
「やはりか!」
「え?」
雛が察知した死の危険は見事に的中した。
突き放されたレイテットと雛の間を騎士型『PODE』が高速で飛んでいく。後少しでも突き放すのが遅れていればレイテットは敵の突進による直撃で死か重傷、そして雛自身は突進に巻き込まれて重傷を負うことは確実だった。
「うわぁぁ!!」
「なんて速さだ」
衝撃波を耐える二人。
唐突に訪れた衝撃波である。
レイテットはなんの衝撃波か分からないでいた。唯一衝撃波の元を理解している雛は行き過ぎた騎士型『PODE』の方を見る。
建物が崩れる様子が雛の目に入った。その場所は先ほど騎士型『PODE』が突っ込んだ場所である。雛の目に映る建物が崩れる様は騎士型『PODE』の圧倒的な攻撃力を証明していた。
「レイテット、他の敵を全部任せて良いか?」
「別に良いけど……雛君はどうするの?」
「さっきの衝撃波を出してきた騎士を潰す。ここで潰さなければいずれ俺たちが奴に潰される」
「はーいよ! ほんじゃあ他は任せて!」
「頼む」
雛は騎士型『PODE』に向かって歩き出し、レイテットと距離を離す。これでお互いの援護が届きにくくなったが、先ほど騎士型『PODE』が放つ圧倒的な攻撃にレイテットを巻き込まないで済む。
雛にとっては望むところだった。
「貴様、私の攻撃を避けるとはただ者ではないな?」
建物が崩れて出来上がった視界を遮るほどの埃の壁から騎士型『PODE』がもう一度姿を現す。しかも今度は渋い男性の声での言葉付きだ。
重々しい見た目と渋い声は騎士型『PODE』を歴戦の勇士と印象付けさせるほどの説得力があった。
しかし雛は恐れない。それどころか、騎士型『PODE』の前に堂々と立った。
「俺はただの自衛官だ。余計な前口上はいらない、さっさと殺し合いを始めよう」
「良かろう。その自信、貴様の命ごと叩き斬ってくれるわ」
雛の後ろでレイテットの銃声が鳴り響く。レイテットはレイテットで戦っている。
そして雛の戦いの火蓋は騎士型『PODE』の斬撃を皮切りに斬って落とされた。同時に周りの建物もバターのように斬って落とされる。
「行くぞ! うおぉぉぉ!!」
建物を斬り落とすという軽いウォーミングアップを終わらせた騎士型『PODE』は雄叫びを上げ、雛に向かって電光石火の如く飛ぶ。
稲妻が走ったような高速接近、雛と騎士型『PODE』の距離は一秒も掛からず斬撃が届く位置にまで縮まる。そこから剣が光を帯び、騎士型『PODE』は斬撃を繰り出した。
「なに!?」
騎士型『PODE』が驚く。
それもそのはず、雛は常人では到底避けられないであろう高速接近からの斬撃を避けたのだ。
避けられた斬撃はアスファルトを割り、他の『PODE』諸とも建物を真っ二つにして崩れさせる。しかしどれだけ攻撃が圧倒的でも回避されれば無意味なものである。
「私のライトニングスラッシュを避けるだと……!?」
「高速接近に続いて剣の振り下ろし、どんなに速かろうが単調な攻撃は見切れる」
「貴様!」
「残念ながら早々に終わりだ」
雛が終わりを宣言するとSAIGA20の引き金が引かれた。
隙の大きい攻撃を避けられ、明確な防御手段を持っていない騎士型『PODE』にもはや防御の術はない。
SAIGA20の銃口から放たれたスラッグ弾は難なく騎士型『PODE』の身体を貫通し、心臓部である『シールド細胞』を貫く。
「この私が、負けるとは……!」
それを最期の言葉にして、騎士型『PODE』は蒸発する。
雛の一騎討ちは終わった。
しかし戦いはまだ終わっていない。すかさず雛はレイテットのところへ戻る。
「レイテット!」
「うはぁ……助かったぁ」
この数分で一気に追いつめられていたところに雛の援護が入り、レイテットは態勢を立て直す。
「大丈夫か?」
「大丈夫だけど、ちょっとヤバかったかも」
二人は並んで、銃口をまだまだ数の多い『PODE』に向ける。今にも引き金が引かれようとしている。
その直後のこと、銃声が鳴った。だが、二人は引き金を引いていない。
「今の銃声は!」
「間違いない、アイーラの銃声だ」
二人の予想した通り、銃声を鳴らしたのはアイーラだ。
「最悪の事態だ、これは……」
雛が言うように最悪の事態である。
新しい銃声に反応した『PODE』がアイーラと美保のところに向かって行くのだ。その数は五十体を余裕で超える。
しかもレイテットと雛の前にいる『PODE』はいくら数を減らそうともまだまだ数はいる。もはや壁と言っても良い。
その壁の影響で生存者たちは完全に分断された状態となってしまった。今すぐに合流しようにも『PODE』のぶ厚い壁が邪魔をする。
「ど、どうする? 雛君……」
「まずは目の前の敵を出来るだけ避けて、アイーラと美保さんに交信出来るぐらい近付く。もうこの際収穫はなくて良い。生き残ることが優先だ」
「了解、生きていてよ……アイーラ、美保さん!」
戦いが続く街の中心。
生存者たちはみんなで生き残るために抵抗する。




