第六十七話 偵察
今回はなんとかそんなに日が立たずに更新完了!
時刻は午前十時。天気は晴れ、しかし雲はそこそこある。非常に微妙な天気だ。
そんな天気の下、生存者たちは事前に決めていたルートを進んでいた。
「また草むらの中?」
事前に決められたルートの中には草むらに入らなければならないところもある。そこに差し掛かったところでいつものように虫が嫌いなアイーラは文句を垂れる。
「アイーラちゃんに近付く悪い虫は潰してあげるわよ! このツワブキの魔法姫がね!」
「はぁ……お願いします」
美保の放つ痛さに耐えながらアイーラは虫潰しをお願いする。
そうして生存者たちは敵が少ないであろう草むらの中に入って行った。後はいつも通りにアイーラが嫌いな虫を索敵し、見つけた虫を美保が潰しに掛かる。
レイテットと雛はいつもと変わらず先頭を一緒に進んでいた。
「あ、そこ」
「アタック!」
アイーラが目標を指定し、美保が潰す。草むらに入ればいつものことだが、今回は美保の痛さが付いて回る。
アイーラは見つけた虫を潰してもらう度に、美保の痛さに耐えなければならなかった。
飛んでくる虫と美保の痛さ。アイーラにとっての苦痛は二重だ。
「また一匹、成敗してやったわ!」
またしても痛さが飛んでくる。
「くっ」と反射的にアイーラが声を出す。もはやアイーラの口から声が出るほど美保の痛さは極限突破しかかっている。
「早く、帰りたい」
二重の苦痛に耐えられそうにないアイーラが弱音を素直に吐く。それでも足は止めず、遅れないように進み続ける。
草むらを進んで二十分が経つ。
生存者たちは敵に見つからず、最初に目指すべき目標地点に迫っていた。
「敵はいたか?」
雛が確認のために訊く。
「いない」
「見てないし、いない」
「私も見てないわ」
彼女たちは敵がいないことを告げる。
「よし、最初の目標地点まで後100mだ。慎重に行くぞ」
「はいよ!」
「うん」
「なにかあってもこのツワブキの魔法姫にお任せ!」
最後の美保の言葉。レイテットとアイーラは内心「痛い」と呟いていた。ちなみに雛は
そんな痛さが浮き立つ中、生存者たちはそれぞれの武器を構えて最初の目標地点に進み続ける。進み続ける生存者たちには戦いへの緊張はあっても、不安はない。
「到着した。早速偵察に取り掛かろう」
生存者たちは最初の目標地点に到着。草むらから出るものの、高さ的に見晴らしが良い。遠くから偵察するには良い場所である。
「はい、これ!」と言って、レイテットがショルダーバッグから双眼鏡を取り出す。その双眼鏡を雛が受け取り、しゃがんで覗き込む。
「アイーラ、そちらのスコープも使って一緒に偵察を頼む」
「はーいよ」
雛の横に座り、アイーラはAEK971のスコープを覗いて偵察を開始する。
目の良いアイーラと鋭い観察を行える雛。偵察を行うにはピッタリな人選である。
「雛君、私と美保さんはどうしていれば良い?」
「引き続き周りの警戒を頼む」
「はいさー!」
「頼りにしてる」
「にひひぃ!」
レイテットと雛、笑みを見せ合ってお互いを信じる。そして背中合わせでそれぞれの役割をやる。
そこにあるのは確かな絆、強い愛。
「本当に熱いわね」
それを横目で見ていた美保は呆れるように笑って、レイテットと同じ役割を始める。
「アイーラ、なにか見つけたら教えてくれ」
「はーいよ」
雛とアイーラ、二人はそれぞれ遠くにいる敵を見つめる。
見えてくるのはそこまで大きくない街並み、そしてそこにいる『PODE』たち。
二人の視界に入った『PODE』は車型から人型まで多種多様だ。もちろん初期型であるスライム状の個体もいる。
「あれは……なんだ?」
なにかを発見したように雛が言う。
アイーラは気になって「どれどれ?」と雛に訊く。
「三階建て、白色の建物の近く」
「んー?」
雛の言う情報を頼りに、アイーラは視界を三階建ての白い建物に移す。
「なにあれ?」
白い建物の後ろから緑色の扇形をしたものが広げられている様子が見えてくる。
それを目にしたアイーラでもなにか判断出来なかった。
「なにかの翼かな?」
「分からないが、微妙に動いているぞ」
「じゃあ敵であることには変わりなさそうだね」
「あぁ、正体が分からない敵である以上は要注意だな」
「うん」
アイーラと雛は緑色で扇形に広げられた翼のようなものから目を離し、そのまま偵察を続ける。
そしてその頃、二人の後ろではレイテットと美保が周りの警戒を続けていた。
「敵が来ないわね」
「来なくて良いですよ!」
「それもそうね」
「そういえばなんですけど――」
二人が会話を弾ませようとした瞬間、レイテットと美保の前方にある草むらからガサゴソと音が鳴った。
レイテットと美保は無言で警戒心を強め、身構える。その後ろにいるアイーラと雛は異変に気付く。当然ながら偵察の手を止めて、草むらへの警戒を強くした。
「来ますよ……!」
草むらのガサゴソ音は止まらず、徐々にガサゴソ音が近付いて来る。
「来るか?」
雛が呟くと同時にガサゴソ音が止まった。
いつ敵が出てくるかも分からない緊張した状況。緊張が張り詰める。
張り詰めた緊張を打ち破るように、草むらから何者かが飛び出す。
「きゃっ!」
押し倒された美保の短い悲鳴。その悲鳴と一緒にベチャリという音が鳴る。
見れば、美保を押し倒したのは緑色をしたスライム状の物体だ。
「『PODE』だと!? 敵だ!」
雛がそう言うと、レイテットとアイーラは美保を押し倒した『PODE』に銃口を向ける。もちろんそのまま撃てば貫通して美保の身体をも貫く。それを理解している雛は「待て!」と強く言った。
「でも、コイツを殺さないと美保さんが!」
「狙いは外さないから任せてよ」
レイテットとアイーラは銃口を向け続け、完全に撃つ気でいる。
「いくら『PODE』でも捕えた獲物の消化は三時間以上掛かる。だからここは俺に任せろ」
「……分かった」
「うん」
雛の説得でレイテットとアイーラの銃口が下がった。これで美保の死傷リスクはなくなる。
こうして雛は『PODE』の対処に掛かる。
「この……ぬるぬるしてる」
魔法少女服には似合わないムッチリとした美保の身体がスライム状の『PODE』に絡まれて、四肢の動きが封じられる。
抵抗しようがない美保は雛の対処を待つしかなかった。
「くぁ……雛君」
「大丈夫です。すぐに対処します」
ぬめりとした『PODE』が美保の身体を這って、粘り気のある体液が太ももを伝って垂れる。
今にも蹂躙されるか、凌辱されるかのような雰囲気だ。
しかしその雰囲気を壊してしまうのが雛だ。
「!」
手刀の構え、雛は『PODE』に手を勢い良く刺し込む。そして『PODE』の体内に侵入した雛の手は命を狩り取る死神が如く心臓部である『シールド細胞』に迫り、鷲掴みにする。
「終わりだ」
雛は握力だけで『シールド細胞』を握り潰した。体内にじわりと血が広がって『PODE』の身体も血も蒸発する。
これで対処は終わった。
『PODE』の捕食から解放された美保は上半身を起こして、雛たちを見た。
「終わりました。身体の方に異常はありませんか?」
「どこもおかしくないわ、たぶん大丈夫よ……」
「良かった」
雛はホッと息を吐き、安心する。
雛にとって美保は恋人でもなんでもないが、失いたくない大切な人の一人には違いなかった。
「さて」と雛は頭を切り替える。
頭を切り替えてすぐにリュックサックから地図を取り出し、広げる。
「残念ながらここからでの偵察ではまだ不十分だ。だから俺たちは街の中心に近付いて偵察をするしかない」
「具体的にどこで偵察するの?」
レイテットの鋭い質問が飛んでくる。
雛は頭を悩ませながらも偵察の結果から次に目指すべき目標地点――つまり偵察地点を導き出していく。
「ここだ」
雛は地図に描かれている街近くの林に指差す。
「ここからならこちらの姿を隠したまま敵を偵察出来るし、敵に出会ったとしても数はいないだろう。ルートは偵察した結果敵の数が少ないここを行く。なるべく最短ルートになっているはずだから時間は掛からないはず。以上だ、なにか質問と反対意見はあるか?」
「私は特になし! 雛君のこと信用してるから!」
「難しいことよく分からないからレイテットと同じく特になーし」
「私もレイテットちゃんとアイーラちゃんと同じく特に問題はないわよ!」
すんなりと次の作戦が決まった。
これが間違いということはないが、雛は少し不安だった。それでも雛も、彼女たちも信じて前に向かって進むしかない。
「行こうか、俺たちがこれからも食っていけるために」
生存者たちに今更迷いはない。再びその足を進める。
このままこのスピードを維持して更新したい……!
余談だけど一期目の鉄血のオルフェンズ見返していて楽しい。二期目には目を瞑るとして、ね。




