第六十六話 巣窟への出発
よ、ようやく更新出来た(汗)
時刻は午前八時。
夜は行き過ぎ、月は落ちる。そして代わりに太陽が昇る。
朝は始まった。
「ん?」
窓から見える太陽の光。
それに気付いたアイーラは目を覚まし、上半身を起こす。
「今日もいつも通りに行こう」
快楽によって不安や劣等感、期待や自信を忘れられている。望み通りになっている今、アイーラは特に思うところもなくベッドから抜け出す。
そのままアイーラは自室を抜け、リビングへと足を運んだ。
「おはよう!」
「おはよう、アイーラ」
パジャマ姿のままリビングに移動すると、早々に元気の良いレイテットの挨拶と落ち着いた雛の挨拶が飛び込んできた。
アイーラは「おはよー」といつもの調子で挨拶を二人に返す。そうして可愛らしげな人形のようにイスにちょこんと座った。
「まだ起きて来てないよね」
レイテットと雛が一緒に地図を見て確認しているのを余所に、アイーラは美保が起きて来ていないのを確認。
美保が起きて来ていない今のタイミングを使って、アイーラは口を開く。
「ね、二人共」
「うん?」
「どうした?」
アイーラに呼ばれたレイテットと雛は地図から離れて、アイーラを見る。
「昨日はありがとう。その、かなり激しくて気持ち良かったよ……恥ずかしかったけど」
頬を赤くさせ、恥ずかしげな表情でアイーラはお礼を言う。
お礼を言われて、レイテットが昨日の夜のことを思い出す。
アイーラの甘い声、遠慮なしに動かし続けた手、垂れ落ちる蜜、深い夜に溺れたアイーラ、それらがレイテットの頭の中にポンポンと出てくる。
「そ、それなら良かった良かった!」
やらしいことが頭の中に出続けるのが流石に恥ずかしいのか、レイテットも頬を赤く染め始める。
そして雛は特に顔色を変えずに平常心を保っていた。しかし顔には出ていないが、昨日のレイテットとアイーラのやり取りを思い出した今、下半身のある部分は正直になっていた。
その正直になった証拠がレイテットの太ももに当たる。
「ほぉ?」
「ごめん」
レイテットに正直になった証拠を気付かれ、すかさず雛は謝る。
その様子で察したアイーラは「雛君のエッチ」と間髪入れずに告げた。
「本当にごめん」
「バーカ、気にしないの!」
「分かった、気にしない」
公務員のわいせつ罪を問われそうな空気になったと思えば、途端にレイテットと雛がイチャイチャし出す。
アイーラから見たら二人は周りの雰囲気や空気を気にしないバカップルだ。そんなバカップルを見たアイーラには妬みや羨ましい気持ちはなく、呆れるほどの穏やかな気持ちがあった。
「おはよう、みんな」
艶やかな声の挨拶をしながらリビングに美保がやってくる。
そして美保の姿は素っ裸だ。そこで飛び込むのがレイテットによる大事なところ隠しである。一瞬でも美保の大事なところが見えないほど、レイテットの隠しは素早い。神業と言っても過言ではないだろう。
「ちょちょちょ……美保さん、服着てください」
レイテットは隠すのを辛そうにして言う。
それに対して美保は相変わらずの様子で「はいはい、服着てくるわよ。でも、この格好の私も素敵でしょう?」と自信満々に告げた。
「ふむ、確かに素敵ではある」
「素敵なのは見た目だけでしょ?」
「美保さん、背中が痛いんです。早く服着てください……」
雛は素直に、アイーラは鋭く、レイテットは怪我した背中を痛そうに、それぞれ反応を示した。
美保はレイテットに大事なところを隠されながら部屋に戻って行った。
そうして十五分後。
今度はしっかり衣服を着て、美保がリビングに戻ってくる。
「ツワブキの魔法姫、生きる希望を伝えるためにささっと参上! どうかしら?」
美保が自信満々に口上を言い、自身の格好を見せつける。
その格好は雛たちが初めて見るものだ。衣服全体の上にも下にもフリルがそこかしこに付いており、黄色を基調にした可愛らしいカラーで衣服が染め上げられている。
アニメに馴染んでいる人間であれば、一見しただけで美保の衣服を魔法少女服だと判断出来るだろう。それほど魔法少女な服なのである。しかし三十代近い人間が着ると途端に可愛いから痛くなる。
「うわ、これは痛い」
「た、確かに……」
アニメに慣れ親しんでいるレイテットとアイーラから見れば、口を開いて一番に痛いと出るのは当然のことだ。
そして痛いという単語が聞こえて落ち込む美保。顔から自信満々な笑顔が消えていく。
「可愛いですよ、美保さん」
落ち込んでいる中、純粋無垢な子供のように雛が言う。
素直で声色に偽りのない雛の言葉は美保の胸の内に広がり、再び自信満々な笑顔が戻ってくる。
その様子を見ていたレイテットとアイーラは苦笑いをしている。
「さぁ、今日はいよいよ街の中心へ行くわよ! みんな、さっさと準備を済ませて!」
雛の言葉で自信を取り戻した美保は張り切って、まるで物語の主人公かのように指示を出した。
素直な雛は指示に従って出発の準備を始める。
「単純だね」
「だねだね」
レイテットとアイーラの小声での会話。
その小声でさえ、美保は聞き付ける。
「ほら、二人も準備を済ませようね?」
スッといつの間にか二人の後ろに移動した美保が顔の表情含めて全体で圧をかける。もはや魔法少女とは思えぬ圧力のかけ方だ。
「あ、はいー!」
「わ、分かったぬん!」
圧力に押されて、レイテットとアイーラは自室に飛ぶように戻って準備を始めた。
「はぁ、美保さん怖い」
圧力をかけられて渋々出発の準備をしているアイーラは、愚痴を溢した。
そしてその愚痴さえ聞き逃さない美保が部屋の扉から顔だけを出して「なにか言った?」と訊いてくる。
まさしく地獄耳。
アイーラは焦った様子で首を横に振る。
「そう、私の聞き間違いみたいね」
美保はリビングに戻って行った。
ホッとするアイーラ。準備は続く。
三十分くらいの時間を要して、生存者たちは準備を終えた。
リビングにはスリーピーススーツを着こなし、リュックサックと武器を持った雛の姿がある。そうして続々とリビングに準備を終えた生存者が部屋から出てくる。
「準備OK! いつでも行けるよ!」
珍しいスカート姿のレイテット。ショルダーバックを肩に掛け、お気に入りのドラグノフを片手で持って戻ってきた。
「さっさと行って終わらせよう」
気だるそうな声でアイーラがリビングに戻ってくる。
衣服はTシャツに短パン、ポンチョをいつものように着ている。なんら変わりはないが、AEK971を両手で抱えている姿は容姿と相まって子供のように可愛らしい。
「私も今準備を終えたわ、生きる希望を伝えるために出撃するわよ!」
美保が戻ってくる。
魔法少女服でリュックサックと軍用の折りたたみ式スコップを持っている姿はどう見ても違和感しかない上に、見ている側はとても痛い。
特にレイテットとアイーラが如実に痛くてたまらない反応を見せていた。ちなみに雛は可愛いとしか思っていない。
「行こうか、明日明後日も生き残るために」
生き延びるための食糧確保。
雛の声と共に生存者たちは家の扉を開けて、敵の巣窟へと出発する。
更新頻度を増やさなければ!




