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【完結】POD Enemy  作者: D-delta
エピソード1 強く生きる雛

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第四十八話 決戦の幕

地震があり、停電したこともあって更新が遅れました。


 時刻は午後四時。

 生存者たちは一階に降り、帰り道である廊下を歩いていた。


「はわー、早く帰ってだらだらしたいなぁ」

「後はなにもせずに帰るだけだから、それまでの辛抱!」

「はーい」


 アイーラがあくびをしながらのんびり呟き、アイーラをおんぶしているレイテットが元気に告げる。

 賑やかな雰囲気は崩さず、今日も元気に生存者たちは歩いて行く。生存者たちが歩いて行く内に学校の玄関にまで到着。

 玄関の扉の前。そこで雛の表情は賑やかな雰囲気に癒された笑みからガラリと変わり、戦闘モードに入ったように真剣な表情となる。


「ここから外は敵だらけだ。だが、帰るには外へ出るしかない。警戒は怠らずに来た道を戻るぞ」


 雛の言う事に対して彼女たちはコクリと頷き、先ほどまでの賑やかな雰囲気を崩した。雛の言う通り、学校の外には数え切れないほどの敵が存在する。賑やかな雰囲気のまま警戒を怠って油断すれば、死ぬ確率は飛躍的に上がるだろう。


「よし、外に出るぞ」

「うん!」

「うー!」

「いつでも良いわよ」


 雛は彼女たちと顔を合わせ、レイテット、アイーラ、美保と続いて心の準備が出来ているのを確認する。

 確認し終え、大丈夫と判断した雛は扉のドアノブに手を掛けた。そしてゆっくりと扉を開き始める。

 生存者たちに緊張が走る。

 扉は雛の手によって徐々に開かれていき、雨の降っていない外が見えてくる。


「なんだ?」


 しかし突然のことだ。

 雛は扉を開く途中で違和感を感じ取った。その違和感は扉の下の方、外側から伝わってくる。

 伝わってくる違和感。それを危険なものと判断した雛は扉を開く動作を止めた。雛は動作を止めたまま僅かに開かれた扉の先、外側の下の方を見る。


「!?」


 雛の視界に映ったものは透明感のある緑色のワイヤーだ。

 雛はドアの外側に張られたワイヤーを見て、すぐにワイヤートラップだと悟る。ここでワイヤーを引いてしまえばドアに仕掛けられているであろう爆弾が爆発し、生存者たち全員は確実に吹き飛ぶ。致命傷をもらう確率は高い。

 しかしこのワイヤートラップはこんなにも「これは罠です」と主張しているのだ。素人を除く訓練を受けた者であれば気付ける。後は適切に処理すれば良いだけである。


「このトラップ……もしかして!」


 雛は過去の模擬戦のことを思い出し、正面に目を向けた。

 雛の視界には学校の向かい側にある建物が映る。が、その建物の上に何者かがいる。その何者かを目にした雛は急いで扉を閉めた。


「教室に逃げろ! 敵の攻撃が来る!」


 雛はアイーラをおんぶしているレイテットと美保の手を引いて、急いで教室に退避した。その直後、軽機関銃による弾幕が玄関に訪れる。

 玄関の扉は一瞬で穴だらけになって無残にも倒れる。扉を破った弾幕はそのまま廊下の中を無秩序に飛び交う。まさにキルゾーン、廊下にいれば死は免れない。

 幸いにも弾丸は廊下だけに集中し、教室には入って来ていない。生存者たちは全員無傷である。


「流れ弾が来るかもしれない、伏せておけ」


 雛が指示し、生存者たちは全員姿勢を低くした。

 弾幕を避けた今、状況を知りたいレイテットが声を抑えて「一体なにが起きているの?」と雛に疑問をぶつけた。

 雛はすかさず答える。


「敵が待ち構えていたんだ。しかもこの攻撃は模擬戦で俺のチームを一瞬にして全滅させた戦術。この戦術はよく知っている」


 それは過去の模擬戦。

 雛のチームを一瞬にして全滅させた戦術。

 罠で気を引き、その隙に軽機関銃による掃射で一気に全滅させる。簡単な戦術だが、動き回る敵に対しては有効な戦術だ。敵が動いて罠に引っ掛かれば手を下す必要はなく、敵が罠に気付けば罠で気を引けている隙に軽機関銃による弾幕で全滅させる。仮に罠で気を引けてなくても罠がある時点で敵の機動力を奪える。そして機動力を奪ったところで敵を集中攻撃し、全滅させる。

 そんな簡単で殺意の高い戦術を使う人物は雛が知る所、一人しかいない。


「敵はたぶん『PODE』に取り込まれたゼラニウム1……俺の隊長だった男だ。それとゼラニウム3も敵にいるはず、さっきの攻撃は軽機関銃のものだからな」


 雛は他のゼラニウムの持っていた銃器を思い出す。

 ゼラニウム1が持っていたのは89式小銃だ。先ほどの弾幕は生み出せない。しかしゼラニウム3の持つミニミ軽機関銃であれば先ほどの弾幕は生み出せる。よってゼラニウム3も『PODE』に取り込まれ、敵として存在していることになる。


「雛君、結構厄介な敵?」

「あぁ、かなり厄介だ。敵の数が把握出来ない上に戦術に長けたゼラニウム1がいるんだからな」


 レイテットが訊き、雛が答える。

 敵は最低でも二人。数では生存者たちの方が勝っているが、戦術と位置もあって有利なのは敵側だ。


「勝つためにはどうすれば良い?」


 さっさと敵を撃って帰りたいアイーラが訊く。


「まずは建物の屋上にいるゼラニウム3を二階から狙撃し、弾幕形成を止めさせる。そこから先の作戦は敵の出方次第だ」

「分かったよん、じゃあ撃ってくるわ」


 今は弾幕が収まっている。これをチャンスとしてアイーラは早々に片を付けるつもりで二階へ移動し始める。


「レイテット、美保さん、アイーラになにかあったら援護を頼みます。俺は一階で敵の迎撃と出方を窺いますので」

「はいはーい、アイーラのことは任せておいて!」


 雛の頼み事をレイテットは元気よく受け、アイーラと一緒に二階へと移動していく。

 美保もアイーラと一緒に二階へ移動していく。が、美保は一度足を止めて雛の方へ振り返った。


「雛君、あなたにはレイテットちゃんがいるんだから絶対に死んだり、重症を負ったりしたらダメよ? もしも雛君にそんなことがあったら私は激怒するから……分かった?」


 真剣な口調で美保は述べる。そこにからかうような様子は一切ない。表情は真剣そのものであり、雛の目を見つめている。

 もちろん重症を負うつもりも死ぬつもりもない雛は「分かりました」と返事を返した。その返事を聞き取った美保は真剣な表情を崩し、微笑みを見せた。


「じゃあアイーラのところへ行ってくるわね」

「はい」


 美保は先に行っているアイーラとレイテットを追って、二階へと移動していった。

 彼女らが二階へと移動したことを確認し、雛は教室に隠れながら外の様子を見て敵の出方を窺う。


「さてどう来る、隊長」


 雛はいつでも戦闘出来るようにSAIGA20を構えた。

 その途端である。


「こう来るさ、ゼラニウム4――いや、雛」


 教室に隠れている雛に渋い声が向けられた。それはまさしくゼラニウム1の声だ。


「どこにいるのかは分かっている。さっさと姿を現せ」


 既に発見されている。

 そう判断した雛は大人しく隠れるのをやめて、廊下に出た。廊下は先ほどの弾幕で穴だらけ、傷だらけである。

 そんなボロボロの廊下に立つ雛の前に声の主は現れる。雛の目の前、玄関に立つのはゼラニウム1だ。雛が予測した男で間違いない。しかも全身が緑色であり、『PODE』に取り込まれているのも間違いない。


「あなたらしくないですね、隊長。いつもならお得意の戦術で潰してくるというのに」

「ふん、お前が成長していることは把握済みだ。もうお前にこちらの戦術が通じないのは分かっている。だからこうして実力頼みの真っ向勝負をやろうという訳だ」

「受けて立ちますよ……!」

「その意気だ、雛……俺を殺しに来い! そしてお前を殺してやる!」


 驚異的な成長を見せる雛――ゼラニウム4と『PODE』に取り込まれ、敵となったゼラニウム1の戦いが始まる。

 そして二階にいる彼女らも時を同じくして戦いが始まろうとしていた。

 これは雛にとって過去を超えるための決戦となるだろう。

早く北海道全域復旧してほしいですね(´・ω・` )

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