第四十二話 次の目的地へ
ちょっと危ない用語が出てくるかな( 一一)
まぁエロくないけど。
晴れ晴れとした空に太陽が光輝く。
光は地上を確かに照らし、生存者たちを照らす。
時刻は午前十時。生存者たちは舗装された道路の上を歩き、学校を目指していた。
「雛君、次はどのルートで行くの?」
次のルートが気になるレイテットは雛に訊ねた。
雛は「今確認する」と一度立ち止まる。リュックサックから地図を取り出し、指でなぞっていくように赤ペンで記したルートの確認をしていく。
その様子をレイテットは見てルートの把握をした。もちろんアイーラと美保も次のルートが気になっており、雛の後ろからそっと地図を見てルートの把握をする。
次の安全ルートは街から離れた人気の少ない林を進み、学校近くの車道から一気に学校へ突き進むというものだ。
「このルートで行く。街の中心から外れているから敵と出会うことは少ないだろう。だが昨日の蜘蛛型の件がある。警戒は緩めず慎重に行くぞ」
「はいはーい、了解!」
「うーす」
「了解よ」
生存者たち全員がルートを確認し終わる。これで後は赤ペンで記したルート通りに進んでいけば良いだけだ。
いつでも応戦出来るようにそれぞれ武器を手に持った生存者たちは再び歩き出し、ルート通りに進み始める。
「また虫か……嫌だなぁ」
アイーラが呟くように愚痴を垂れ流す。その愚痴を聞いていた美保は「また私が潰してあげるから安心して」とアイーラに告げた。
「やったー」
アイーラは安心して、とても子供らしい笑みを見せた。その子供らしい笑みは美保の母性を刺激して、思わず微笑んでいた。
警戒はしているが、どこか和やかな雰囲気でいる生存者たちは安全ルートを突き進んでいく。
「そろそろ虫が大量にいるであろう林の方に入る。美保さん、アイーラを虫から守ってやってください」
「任せなさい!」
美保は胸を張って言う。雛は美保の自信を信じて、アイーラのことを任せた。
生存者たちは安全ルートを突き進み、いよいよアイーラの苦手な虫が多い林に入る。
レイテットと雛は虫のことを特に気にすることはなく、視界の邪魔になる虫は手で振り払うくらいで済ませている。
「美保さん、虫」
「そこね」
アイーラが近付いてくる虫に指を差し、目標を指定。アイーラが指定した虫を美保は一瞬の内に潰す。アイーラと美保はその一連の行動を繰り返し、虫を潰しながら雛とレイテットの後ろを歩いて行った。
生存者たちはなにもないまま林の中を進み続け、数分して車道が見えてくるところにまで到着。そこで雛が「待て」と指示を出し、生存者たちは林に隠れて足を止めた。
「敵が車道にいる。あそこだ」
雛は目を凝らして敵である『PODE』を見つけ、彼女らにも分かるように敵に指差した。彼女らは雛が指差した方向を見つめ、視界に二体の敵の姿を映す。
敵である二体の『PODE』はスライム状の初期の姿だ。
「あれ、なにやっているんだろう」
生存者たちの視界に映る二体の『PODE』はなにやら身体をくっ付け合い、片方の『PODE』がもう片方の『PODE』に白い液体状のものを入れていた。
レイテットはそんな敵のやっている行動が純粋に気になっており、その行動を知っている雛は説明するように口を開く。
「あれは交尾だ。実際に見るのは初めてだが、ああやって一日に一回のペースで子供を産んでいく。しかも交尾したその日に産むんだ、厄介極まりない」
「こ、交尾!?」
交尾という行い。それは人間でいう性行為に値する。
レイテットは顔を赤くさせて驚いていた。レイテットに続いてアイーラが「アイツら、交尾すんの!?」と顔を赤くさせながら疑問を口に出した。
雛はアイーラの疑問にコクリコクリと頷いて「どこで見分けて良いのか分からないが、奴らにはオスとメスがある。特に初期状態のままでは知性の欠片もなく、本能的に子孫を残そうとするから交尾は必然的に行われる」と知っていることを告げた。
「ほへー……」
全く知らない情報はアイーラの頭に負担を与え、すぐに整理出来ず、ただ圧倒されているしか出来ないでいた。
変わってレイテットと美保は粗方理解出来ていた。
「とりあえず敵を叩くぞ。これ以上敵を増やしては手間も弾もかかる上にこちらがジリ貧になる」
彼女らは頷き、それぞれの武器の矛先を交尾している最中の『PODE』に向ける。が、ここで銃声を起こせば確実に付近にいる『PODE』が寄ってくるだろう。そこで雛はなるべく音を立てないやり方を取り始める。
「美保さん、ブラックバスターを貸してください。ここは静かに仕留めます」
「分かったわ。上手く使ってよね」
「了解です」
雛は美保からブラックバスターこと折りたたみ式軍用スコップを受け取り、粗末に扱わぬようしっかりと握り絞める。
そのまま雛は指示を出した。
「アイーラはバックアップを、美保さんはなにかあった時のためにアイーラの援護をお願いします。レイテットは俺と一緒に突撃する。大丈夫か?」
「OK!」
「ほい、大丈夫」
「了解よ」
生存者たちは動き始める。
雛の指示通りに、アイーラは林に隠れてバックアップを、美保はアイーラのすぐ隣で待機する。そしてレイテットは雛と共に林から這って出ていく。
『PODE』は交尾に夢中になっており、草むらの中に隠れたレイテットと雛の接近に気付いていない。
「可能な限り近付いて音を立てずに一気に殺す」
「はいよ……!」
レイテットは声を静めながらも闘志を奮い立たせ、ドラグノフに付いた銃剣の切っ先を『PODE』に向けていた。雛は軍用スコップを展開して突撃の準備を完了させている。
息を潜める二人。敵の心臓部を見つめ、殺す瞬間を待っている。
そしてその時は来た。
「今だ!」
「!」
雛とレイテットは一気に走り出す。草むらを抜け、舗装された道路を駆ける。まさしく突撃。まさしく急襲だ。
交尾中の二体の『PODE』は急いで交尾を止めて戦闘態勢に入るが、既に遅い。レイテットの銃剣突撃により『シールド細胞』を貫かれ、切り裂かれる。『シールド細胞』を損傷した一体目は蒸発。二体目は雛の軍用スコップにより、一撃必殺をもらう。『シールド細胞』はその一撃必殺によってたった一発で損傷、二体目も蒸発。
「上出来だ、レイテット」
「えへへー、ありがとう!」
結果的に雛とレイテットの急な突撃に対応出来なかった『PODE』は二体揃って蒸発。しかも派手な音は立ってないため、『PODE』が寄ってくることはない。
これでルートの安全は確保された。
「美保さーん! アイーラ! 終わったよー!」
レイテットの呼び声に反応し、美保とアイーラは林から出て雛とレイテットに合流する。
「雛君、レイテットちゃん、大丈夫?」
「大丈夫です!!」
「こちらも大丈夫です」
雛とレイテットは美保に答える。
彼女らは和やかな雰囲気になる一方、雛は周りに目を向けて索敵する。結果的に視界に敵が入ってくることはなく、雛は緊張をほぐした。
「美保さん、これ中々良い武器ですね。お返しします」
「ふふ、私のお気に入りの武器は伊達じゃないわよ?」
雛は美保にブラックバスターこと折りたたみ式軍用スコップを返す。粗末に扱われなかったことを証明するように軍用スコップは凹みの一つもなかった。
返す物を返し、ルートの安全を確保した今、雛は告げる。
「さぁ行こう、次の目的地へ」
雛が告げることに彼女らはコクリと頷く。
時刻は午前十一時。太陽は流れてくる薄暗い雲によって隠れ、空は灰暗くなっていく。それはなにかの予兆か。
その先で起こることを知らない生存者たちはただ安全ルートを進み、次の目的地である学校へと向かう。




