第四十一話 深まる夜
今回はちょっとしたエロ回。そこまでエロくないよ(^○^)
雲と雲の隙間から顔を出していた夕日はいなくなり、外は真っ暗になっていた。ここで明るいのはこの家だけだ。
時刻は午後十一時。
保冷剤と一緒にリュックサックに入れてあった野菜と鶏肉は一旦冷蔵庫に戻し、夕飯を食べ終わった生存者たちは休んでいた。
「……いないな」
雛はイスに座って窓から外を覗き、敵がいないか監視していた。外は真っ暗。空に見える星々がよく見える。
ただただ時間は過ぎて行く。
敵は見えない。まさしく平和な一時である。
「雛君」
レイテットの声を聞き、雛は視線を窓から表情の暗いレイテットに移した。
「どうした? なにかあったのか?」
「いや、なにもないんだけどね」
「?」
「そのさ、私たちがもっと早くここに来てればあの自殺した人は助かったのかなって思って……」
「助かった、かもな。だが時間は巻き戻らない。俺たちは死んだ人間の分まで生きなくてはならない」
「そうだよね。でもさ、私、遺書読んでいて苦しかった……あの人はあんなに苦しい思いをしていたのに助けられなかったのは悔しくて」
レイテットは顔を俯かせる。その表情にある影は次第に大きくなっていく。
暗く悔しい感情。レイテットの正義感が悔しさを搾り出していく。
もっと早く来ていれば助けられたのではないか? レイテットの自問は答えが出ないまま繰り返され、終わらない。雛に答えを出してもらってもレイテットの悔しさは搾り出され続ける。
「雛君……私は、必要かな?」
搾り出される悔しさの末に出たレイテットの答え。苦しんでいる人を助けたいという気持ちの大きさが悔しさを病みへと変えていく。
「必要だ。誰一人欠けさせたくない」
雛は違う答えを言った。トラウマから救い出してくれた恩、自衛官として民間人の命を最優先にする心、そしてなにより心の底からレイテットを必要とする感情。
それらが雛の優しさと合わさって答えは想いのあるものへと変わる。
「必要なんだね……」
「あぁ」
俯いたままのレイテットに雛は言い続ける。
「俺はレイテットが好きだ。絶対に欠けてほしくない」
「え?」
咄嗟に出た雛の告白。レイテットは思わず顔を上げる。その表情からは影がなくなり、ただただ雛の告白に驚いていた。
そしてレイテットの視界に入る雛の表情は至って真面目だ。しかし少し顔が赤い。流石の雛でも告白は恥ずかしい。
「話が脱線したな」
「え、うん……」
雛は自らの告白を逸らし、話を戻す。
雛とレイテット、お互いの顔は少し赤くなっていた。
「…………」
「…………」
二人から全く言葉が出ない。
雛はこのまま慰めるか、告白の続きをするか、口は閉じられたまま悩んでいた。レイテットも口は閉じられたままであり、それまで搾り出されていた悔しさは驚きと恥ずかしさに上書きされていた。
「え、えっとさ、もう寝よっか」
「そうだな」
どうやって会話して良いか分からなくなった雛とレイテットはとりあえずといった様子でリビングへと移動する。
リビングにはゲーム機を持ってテーブルの上で寝落ちしているアイーラと寝袋の中でぐっすりと眠っている美保がいた。
二人は誰も起こさないように静かにリビングを進んでいき、レイテットは靴を脱いでソファに寝転がる。
「雛君、こっち」
雛が床で寝ようとした時、レイテットは雛を呼んだ。
呼ばれた雛は静かにレイテットの方へ近付いて行く。
「どうした?」
「私のこと、好きなんでしょう?」
「あ、あぁ、そうだ」
「だったら一緒に寝よ」
「え――」
雛はレイテットに手を引っ張られ、二人の身体は重なり合う。
一緒に寝るということが分かってくると、雛は急いでボディアーマーなどの装備を床に置き、靴を脱いだ。
「雛君のこと、好き」
レイテットは雛を抱き締める。お互いの身体には温もりが広がり、これまで感じたことのないものを感じる。それはお互い初めての恋。
相手の肌から感じられる温もり。
好きな相手を求めて止まない感情。
二人はソファの上で抱き合い、唇を重ねる。
唇の柔らかさ、温もり、相手の息遣い。そのどれもを二人は感じる。
暗い室内で二人の恋は深まっていく。
時間は経っていく。
時刻は午前零時。
二人の恋は止まらない。
二人は唇を重ねたままで息を荒げていた。
それはお互いの奥深くを絡めるキス。二人の身体は火照り、心音は大きくなっていく。
火照りと大きくなる心音は興奮となって二人の性を刺激する。夜が深まるにつれて二人は自分の性に正直となり、自分自身を快楽へと導いていく。
誰にも悟られないように漏れる声を抑える雛とレイテット。
二人は深い夜の末に絶頂へと行き着き、身体の一部が快楽によってしっとりと濡れていた。
行き着いた二人は息を荒げ、身体を疲れさせる。そのまま雛とレイテットは意識を失うように眠りに入った。
深まった夜は過ぎて行く。
地平線の向こうに月が落ち、代わりに太陽が現れる。暗かった外は晴天の空に上がった太陽の光で照らされる。
新しい朝がやってきたのだ。
時刻は午前八時。美保の腕時計のアラームが室内に鳴り響く。
「ん?」
アラームの騒音で雛は目を覚ます。目の前にはレイテットの幸せそうな表情を浮かべた寝顔がある。雛はその寝顔に笑顔を浮かべ、レイテットの肩をポンポンと優しく叩いた。
「なーに?」
レイテットは寝ぼけたまま目を開ける。目の前には雛の子供のような笑顔があった。その笑顔を向けられていることが恥ずかしくなったレイテットは顔を赤くさせ、慌てて一気に目を覚ました。
「お、おはよう!」
「おはよう」
レイテットの慌てた大きな声の挨拶は、美保の目を覚ませる。
「あら、あらあら」
美保の視界には仲良く身体を密着させている雛とレイテットの姿がある。美保はその姿を見て微笑んでいた。まるでその微笑みは雛とレイテットをからかっているように見える。
「わわっ! これはその……!」
「言わなくても分かるわ。詳細は分からないけど、夜はお楽しみだったんでしょう?」
「うわぁぁぁ!!!」
美保に全て知られた感覚になったレイテットは恥ずかしさのあまりに叫んだ。
叫びは部屋中に響き渡り、咄嗟のうるささにアイーラが目を覚ました。
「うー、おはよ――!?」
目を覚ましたアイーラの視界に飛び込んできたのは雛とレイテットが密着する姿だ。アイーラはただただ驚くしかなかった。
「アイーラ、見なかったことにしておいて」
「わ、分かった」
顔を真っ赤にして言うレイテットに対してアイーラは驚きの表情のまま、返事をした。
そうやって美保とアイーラにとっては衝撃的な朝、レイテットにとっては恥ずかしさのある朝、雛にとってはただの朝が始まった。
「さて、雛君とレイテットちゃんのお楽しみな一件は置いといて、次の目的地に向かうわよ」
美保のその言い様にレイテットはムッと頬を膨らませる。変わって雛は真面目な顔をしてただ話しを聞いていた。
「あぁ、次は学校だ。支度をするぞ」
生存者たちは冷蔵庫に入れてあった野菜と鶏肉も含めた持ち物を忘れずに、支度を進め始める。
そして支度が整った生存者たちは玄関の扉を開けた。
「それじゃあ気を取り直して、今日も元気に行くよー!!」
元気なレイテットを先頭にして生存者たちは外へと出た。生存者たちは気持ちの良い陽射しに照らされ、差異はあるものの誰もが笑みを見せる。
生存者たちは気持ちの良い陽射しに照らされながら次の目的地――学校へと出発した。
はい、エロいです。ギリギリを狙ってやってます。




