第四十話 続く探索
いつに間にか四十話到達(゜-゜)
時刻は午後六時。雲に覆われた灰色の空は暗くなり始めている。
生存者たちは建ち並ぶ民家のほとんどを調べ尽くし、残る一軒の民家を探索しようとしていた。
「後はここだけだ、探索に入ろう」
「よっしゃ! ここさっさと終わらせよう!」
「早く終わらせたい……」
「流石に十一軒調べ尽くすのは疲れるわね」
疲れているアイーラと美保を余所に、体力が有り余っているレイテットは最後の民家に入って行く。レイテットに続いて、まだ体力のある雛も最後の民家に入って行く。
「いやぁ、無理。体力お化けと雛君、疲れなさ過ぎ」
「ほら、後ちょっと! がんばるわよ」
疲れが頂点にまで溜まっているアイーラは文句を垂れた。そんなアイーラを、美保は担いで最後の民家に入って行った。
屋内は珍しく埃っぽくなく、綺麗に保たれていた。
「妙だ、この家はどうにも違和感がある」
「そう? どうして?」
雛が違和感に気付く。レイテットは雛の抱く違和感が気になり、尋ねる。
「よく周りを見てくれ。この家は綺麗だ。埃が溜まっていることもなく、散らかっている様子もない。まるで……まだここに人が住んでいたような、そんな感じがする」
雛が言うことを確かめるようにして、彼女たちは周りにあるものを調べる。
「確かに埃は少ししかないわね。でも、この埃の量から察すると溜まり始めているからここにはもう人はいないかもしれない」
美保は埃の量を確かめるようにして、廊下の窓を指で撫でる。美保が言う通り、窓を撫でた指には埃が少し溜まっていた。
「とにかく隅から隅まで探索するしかないな」
考えても進まないことから生存者たちは慎重に探索を始めた。
生存者たちは全員で固まり、敵である『PODE』の奇襲に備えながらリビングへと入って行く。
そして生存者たちはリビングを探索する。しかしあるのは家電や置物など今ここでは必要のないものばかり。必要な物はない。もちろん敵もいない。
「次に行くぞ」
弾倉を込めたSAIGA20を持つ雛を先頭にして、生存者たちは次の部屋へと向かう。次はキッチンだ。
生存者たちはキッチンに入りこむが、あるのは料理するための物ばかり。しかも多少ながら埃を被っている。そして食糧が入っていると思われる冷蔵庫とはいうと、中には腐っていない野菜と鳥肉が入っていた。
「おぉ!!」
「おー……!」
レイテットとアイーラが目を輝かせる。
野菜と鶏肉。今となっては手に入ることはほとんどないであろう珍しい食材だ。
「ふふ、また美味しい食べ物を作れそうね」
美保は冷蔵庫にある野菜と鶏肉をビニール袋に入れる。そしてまだ稼働中の冷蔵庫から保冷剤を取り出し、野菜と鶏肉と一緒にビニール袋に入れた。
この保冷剤を入れたことにより、野菜と鶏肉は腐りにくくなる。これで安心して野菜と鶏肉を長時間持ち運び出来るのだ。
生存者たちは持って行ける物を全て取り終え、キッチンを離れた。
「よし、次だ」
生存者たちは次の部屋へと向かう。
一階の隅から隅まで探索して三十分。
成果は隠してあった缶詰め四個と冷蔵庫にあった食材だ。
「残るは二階だね」
「あぁ、警戒を怠らずに行くぞ」
レイテットと雛は言う。
生存者たちは慎重に二階へと続く階段を上って行き、そのまま二階の部屋を探索していく。
寝室だけを残し、二階の部屋を探索して十分ほど。
探索した成果は9mm拳銃の弾――9mmパラべラム弾が五十発だ。
「この弾、小っちゃいね?」
レイテットは9mmパラべラム弾を手に持ってまじまじと見つめ、思ったことを口に出した。
レイテットのその疑問を、雛は答える。
「俺の持つ9mm拳銃に使う弾だからな、このコンパクトな拳銃に比例して弾も小さいんだ」
「へー」
「しかし、この9mmパラべラム弾があるということはまだ調べていない寝室に武器がありそうだ」
武器がないのに9mmパラべラム弾があるというのはおかしな話であり、雛はまだ調べていない寝室に武器があると予想。彼女たちは雛の予想を信じ、生存者たちは固まって寝室に向かう。
「慎重に入るぞ」
寝室の扉を前にした生存者たちはそれぞれの武器を構え、警戒しながら寝室へと入って行く。
寝室の中は入ってすぐに異常は見つけられない。しかしベッドの方へ目を向ければ、ベッドの上は紅く染まっていた。その紅はまさしく血、ベッドの上にある死体から出ている血である。
生存者たちはベッドの上で倒れている死体を調べるために近付く。
「完全に死んでいる。死体の様子から見て、一週間は経っていると思う」
雛が死体を調べ、告げる。
死体は男性のもの。状態はベッドで寝転がっており、なにやら悲しげな表情をしている。そして死体の右手には拳銃、左手には血に濡れた遺書があった。
雛は自殺に使われたと思われる拳銃を取る。レイテットは遺書の方を取った。
「MP446バイキング。さっきの9mmパラべラム弾はこの銃のか」
雛は拳銃本体にある名前を読み上げる。その拳銃はロシアが民間向けに発売したものである。
この拳銃の存在。これでなんのために9mmパラべラム弾があったか、簡単な謎は解ける。
後は遺書の方だ。
レイテットがロシア語で書かれた遺書を日本語訳して読み上げる。
「俺はあの化け物がここに来て、一ヶ月半も待った。これだけ待っても救援は来ない。あんなに優しく接してくれたお隣さんも蜘蛛の化け物に全員持って行かれた。もしかしたら戻ってくるかもと思って外を見たら……お隣さんの、お隣さんの姿をした化け物が俺の家にやってきて、扉をノックしてきた……ただただ怖かった。でも、俺は窓からずっと外を見ていて気付いた。生きたまま食われるのと、死んで食われるのでは違うんだ。生きたまま食われると化け物がなにもかも人間そっくりに変身するけど、死んだ状態で食われるとどうやら化け物はゾンビ人間になるみたいなんだ。だから俺は……これを読んでくれている生存者ために死ぬことを選ぶ。はは、ゾンビ人間の方が殺しやすいだろう?」
遺書に書かれていることはこれで最後。
遺書を読み終え、生存者たちは心底暗い気持ちでいた。レイテットもアイーラも美保も心の辛さが込み上げてくる。だが、雛だけは別だった。
「生きよう。この人の分まで」
遺書から伝わってくる「生きてくれ」という本質。雛は遺書を書いた人間が本当に伝えたかったことを理解し、生きる決意を更に固めた。
MP446バイキングの弾倉を外し、拳銃本体と弾倉を別々にしてリュックサックに入れる。雛は今出来ることをやるだけだった。
「そうだよね、生きるしかないよね」
レイテットはボソリと呟く。雲と雲の隙間から顔を出している寂しげな夕日がレイテットの影を大きくしていく。
「もう夜遅いわね。夜間で行動するのは危険だから今日はここで休みましょうか、死体と一緒っていうのはやや気が引けるけど」
美保は時計で時刻を確認し、ここで休むことを告げる。
時刻は午後七時。
生存者たちは建ち並ぶ民家全てを調べ終わっている。後は、もう一つの目的地である学校に行くだけである。
生存者たちは疲れを癒すため、この家で一夜を過ごした。
今回は本来入れる話じゃなかったんですが、フォロワーさんと会話している内に色々と気付き、入れた話です。
本文に入れておくべきPODEの設定の一つが中々出せなかったので、この際だから入れてしまえと思った話でもあります。
なので、だいぶ更新が遅れてしまいました。




