第三十九話 探索
時刻は午後一時。
蜘蛛型『PODE』との死闘を終えた生存者たちは建ち並ぶ民家の中を探索していた。
最初に緑の屋根の民家から探索して、キッチンにあった缶詰め五個をゲット。そのまま順調に次の民家を探索する。
「俺とレイテットは一階を探索する。アイーラと美保さんは二階を頼む」
「分かったわ。行きましょう、アイーラ」
「うん」
アイーラと美保は階段で二階に上がっていき、探索を始める。
「探索、始めるか」
「はーい!」
満面の笑みでレイテットは返事をする。雛はその笑みに釣られ、レイテットに笑みを見せた。二人は笑みを見せ合い、心を明るくさせて探索を始める。
雛とレイテットの探索はリビングから始まる。使える物がなにかないか、慎重に隅から隅まで確かめる。結果的に見つけた使える物は脱ぎ捨てられた男物のスリーピーススーツ一式だ。
「雛君、これどうかな?」
「どこも破れてない。十分使えるな、持って帰ろう」
雛はレイテットが見つけた男物のスリーピーススーツ一式をリュックサックに畳んで入れた。
衣服を回収し、リビングの探索を終えた二人は次の部屋へ向かう。が、使える物はなにも見つからない。その次に探索した部屋も使える物はなにもなく、二人は探索を続けていく。
「最後はここか」
「だね……臭くないと良いけど」
最後に探索する部屋。それはトイレだ。
雛は慎重に扉を開ける。レイテットは悪臭が鼻に入らないように、指で鼻を塞いだ。
扉が開けられ、二人の視界に入ってきたのは悪臭の漂う汚いトイレだ。
「うわぁー……」
「相当汚いな」
雛は悪臭など気にせず、明らかに狭い個室トイレの中を探索する。鼻を塞ぎ、悪臭を嗅がないことで必死なレイテットは後ろから雛が探索する姿を見つめていた。
「なんだ?」
雛は凝視して、大量に置かれた予備のトイレットペーパーの後ろに黒い物を発見した。早速雛はその黒い物を手に取った。黒い物の感触は固く、雛にとって馴染み深いもの。黒い物を手元に近付けてみれば、その正体は弾倉だった。
「これは、なんの弾倉だ?」
しかし雛が発見した弾倉は、形自体はAK47やドラグノフとどことなく似ているが、惜しくも一致していなかった。
弾倉の中身を見ればショットガンで使用するスラッグ弾と思しき物が入っている。
「ひょっとしたら」
AK47やドラグノフとどことなく似ている弾倉、弾倉の中身は20ゲージのスラッグ弾。
雛には心当たりがあった。
「どうしたの?」
レイテットが悪臭を嗅がないように鼻を塞ぎながら訊く。
雛は今まさに自身が持っている弾倉の正体が分かり、答えた。
「いや、この弾倉がなにに使う弾倉か分かったんだ」
「ふーん。で、なにに使うの?」
「この弾倉を使うのはSAIGA20。AKシリーズに似た形状の銃だが、ショットガンの分類に入る。そしてこの弾倉があるということは、この家にはSAIGA20がある可能性が高い」
「おー、それなら早く探さないとだね!」
「あぁ!」
雛とレイテットは意気揚々としてSAIGA20の弾倉一つをリュックサックに入れ、トイレから出た。そのまま二人はSAIGA20を探しに二階へと向かう。
二階ではアイーラと美保が一緒に探索している姿があった。
「あら? もう一階の探索は終わったの?」
「既に終わった。後はこの二階だけだ」
「じゃあここら辺は私たちに任せて、雛君とレイテットちゃんは寝室の方を探索してきて」
「分かった」
雛とレイテットは寝室に向かい、入る。
寝室にはベッドや目覚ましい時計、置物など色々ある。しかし一見してSAIGA20の姿は見当たらない。弾倉の姿さえも見当たらない。
「うーん、ないね」
「確かに一見して見当たらないが、こういうベッドの下とかに……」
雛が隅から隅まで探すつもりでベッドの下を覗く。レイテットも一緒になってベッドの下を覗いた。
ベッドの下は薄暗い。しかし確実になにかがあった。
雛とレイテットは期待の胸を膨らませて、ベッドの下にあるなにかを二人で引っ張り出す。
「あれれ? ギターケース?」
レイテットは言う。
二人が引っ張り出して出てきた物はただのギターケースだ。雛とレイテットは首を傾げてギターケースを開き、中身を確認する。
「あ、これ!」
「あぁ、これだな」
ギターケースの中身は隠されていたSAIGA20とSAIGA20の弾倉が五つだ。
早速雛はSAIGA20を持ち、弾倉を付けた。そのまま実際に武器を構え、窓の外に向かって照準を定める。そうやって雛はSAIGA20を手に馴染ませていた。
レイテットは雛のその行動がよく分からず、首を傾げて不思議そうにSAIGA20を構える雛を見ていた。
五分ほどしてSAIGA20の銃口が下げられる。
「よし、アイーラと美保さんのところへ戻るぞ」
「はいはーい!」
寝室の探索は終わり、SAIGA20とその弾倉五つはリュックサックに入れられる。
雛とレイテットは寝室を出て、二階の別部屋で探索をしているアイーラと美保のところへと向かった。
「美保さん、寝室の探索を終えた」
「あら、丁度良いわね。こっちも今終えたところよ」
「それじゃあ見つけた物を出し合いましょう」
雛とレイテットはアイーラと美保に合流し、一度落ち着くために一階のリビングへと降りる。そして生存者たちはお互い見つけた物をリビングのテーブルの上に置き、見せ合った。
「これ、銃!?」
「あぁ、寝室にあった」
美保はテーブルの上に置かれたSAIGA20を見て、喜ぶように驚いた。それもそのはず銃が一つ増えるだけで戦力は大幅にアップするからだ。
美保がSAIGA20に注目している間に、アイーラは男物のスリーピーススーツ一式に目を向けていた。
「これは雛の服にするの?」
アイーラはスリーピーススーツ一式を見て、雛に質問した。
「ふむ、どうしようか」
雛は自らの衣服にしようか悩んでいた。サイズはそれなりに大きく、雛が着て丁度良いくらいであるが、サイズ的にレイテットが着てもなんらおかしくない。
ふと、雛はレイテットの方へ向いた。
「レイテットは着るか?」
雛の質問にレイテットは首を横に振る。そのままレイテットは「雛君が着なよ! 絶対にカッコイイって!」と雛に着ることを勧めた。
「ならば、このスーツは俺が着よう」
レイテットの言うことに乗せられ、雛はスリーピーススーツ一式を自らが着る物にした。
スリーピーススーツとSAIGA20以外でテーブルの上にあるのはアイーラと美保が見つけた非常食である缶詰め四つだ。
缶詰めを見つめたレイテットのお腹が鳴る。
「あら、もうお昼ね」
レイテットのお腹の鳴る音に気付いた美保はふと腕時計の針を見つめ、告げる。
時刻は午後一時半。もうお昼時である。
リュックサックから缶詰めと人数分の水筒を出し、生存者たちはお昼ご飯に入った。
探索は一旦中断される。
今は腹を満たすことが最重要なのだ。




