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【完結】POD Enemy  作者: D-delta
エピソード1 強く生きる雛

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第三十八話 捕食者との対決

 彼女たち三人の足音が静まり返った街に響く。

 足音が向かう先は蜘蛛型の『PODE』が隠れている古びた家屋。そこに雛が捕えられている。


「ここを右に」


 蜘蛛型の『PODE』が逃走したルートを覚えているアイーラは次に進むべき道を指差し、レイテットと美保はその道を行く。

 アイーラは行かないのか? と言われればそうではない。ちゃんとアイーラも進んでいる。レイテットのおんぶによって進んでいるのだ。


「そこを左に」


 アイーラの指示で次の道へ走る。

 まだ辿り着くことはない。


「早くしないと!」


 レイテットは焦っていた。己の正義感が仲間である雛を殺すことを許さない。そして正義感とは別の感情が雛を失いたくないと心の内で叫んでいる。それらが複雑に絡み合ってレイテットには焦りが生まれていた。

 その焦りにより、レイテットの足が次第に速くなっていく。


「そこ、右」


 アイーラの指示でレイテットと美保は走る。

 走り、走り、走り。そして古びた家屋に辿り着く。

 家屋からは蜘蛛型『PODE』の蠢く音が微かに出ていた。その微かな音を逃さず聞き取ったアイーラは「ここにいる」と断言する。


「中に入るわよ、良い?」

「はい……!」

「うん」


 彼女たちは覚悟を決めて古びた家屋に入り込む。

 埃だらけの屋内に足を踏み入れ、三人固まって雛の探索を始める。


「ここ?」


 三人は慎重にリビングに入る。が、そこに雛の姿はない。あるのはテレビやテーブルなどなど一般的にリビングに置いてあるものはばかりだ。

 ここに雛がいないと分かると、彼女たちは次の部屋に移動する。


「あ、階段」


 アイーラが崩れた階段の存在に気付き、告げる。レイテットと美保はその階段を見て、上に登れないことを確信。

 階段を諦めて、彼女たちは次の部屋へと移動する。そして一階に存在する部屋全てに移動していく。結果、雛は見つけられなかった。


「後残っているのは二階の部屋とガレージね。階段は崩れているから先にガレージの方へ行きましょう」


 レイテットとアイーラは美保の提案に賛成し、頷いた。

 行く先が決まったところで彼女たちはガレージへと向かう。


「ここにいる」


 ガレージへと近付き、微かに蠢く音と雛の息遣いが耳に入ったアイーラはガレージで間違いないことを言い示す。

 彼女たちは三人固まって慎重にガレージへと足を踏み入れる。

 ゆっくりと、ゆっくりと進んでいく。


「?」


 足になにかぶつかった美保が自身の足下を見つめる。そこにはハエが集る人の心臓があった。

 美保は吐き気を催すが、我慢して立て直す。レイテットもその心臓を見るが、吐き気よりも焦りが加速した。その心臓がもしかしたら雛のものではないか? という悪い予感がレイテットの頭の中に過って止まらないのだ。

 しかしどの道進まなければならない。雛の死を確認するまでは、彼女たちは諦めないからだ。


「雛君?」


 レイテットが呼びかける。レイテットの声がガレージ内に響く。そして声に反応するように、蠢く音が返ってくる。しかしそれだけじゃない。


「ここだ」


 雛の声が返ってきた。

 彼女たちはホッと安心する。そのまま彼女たちは薄暗いガレージ内を慎重に進む。ガレージ内を進む彼女たちの目に映るのは、緑色の蜘蛛の巣に捕えられている雛とその頭上でじっとしている蜘蛛型の『PODE』だ。

 敵を見つけ、彼女たちは一斉に武器を構える。


「待て、まだだ」


 雛の静かな指示が飛ぶ。指示に従って彼女たちは武器を構えたまま雛に近付いていく。

 蜘蛛型の『PODE』は雛の頭上でじっとしている。


「どうする?」


 レイテットが静かに言う。雛は「この巣を切ってくれ」とレイテットに頼んだ。レイテットの持つ銃剣ならばこの巣を切れると判断しての頼みである。

 レイテットは頷き、銃剣で蜘蛛の巣を切り始める。確実に切れて行くものの、ゆさゆさと蜘蛛の巣が揺れる。その揺れに気付いたように蜘蛛型の『PODE』が動き始める。

 生存者たちに緊張が走る。


「う、動いた」

「レイテットちゃん、早くした方が」


 蜘蛛の巣から離れて、その今にも蜘蛛型の『PODE』に食われそうな救出の様子を見ているアイーラと美保は緊張が止まらない。心配と不安が上り詰め、今すぐにでも敵を攻撃して安心したいくらいである。

 当のレイテットと雛は緊張と焦りに追われているものの、食われる覚悟は既に出来ていた。

 食われてしまうのであれば死ぬ前に全力を尽くす。

 レイテットと雛はその気持ちで今の状況を打開しようとしている。


「出来た!」

「助かった」


 雛が蜘蛛型の『PODE』の巣から抜け出す。レイテットと雛は静かに巣から離れる。

 蜘蛛型の『PODE』は獲物が離れて行くのをじっと見ていた。全くといって動かない。まるで誘い込んだ獲物を狩る一瞬を狙っているのかのよう。


「コイツ、すぐに襲って来なくて気味悪い。撃って良い?」


 生存者たちは全員で固まり、蜘蛛型の『PODE』に向けて武器を構える。そしてアイーラが撃って良いかを訊く。

 雛は「良いぞ、撃て」と告げる。

 アイーラは雛の言葉を聞き入れ、引き金を引く。響き渡る発砲音と共にAK47から弾丸が放たれる。

 しかし訪れたのは『PODE』の死ではなく、一瞬の風だ。


「な、なに!?」


 生存者たちは突然訪れた風によって動けなくなり、美保が思わず声を漏らした。

 そして蜘蛛の巣から『PODE』は消えていた。


「敵が外に出た。しかし弾丸を避けるとは、凄まじい瞬発力だ」


 ガレージのシャッターは一瞬の内に破壊されており、そこから蜘蛛型の『PODE』は逃げて行った。

 生存者たちは警戒を怠らず、慎重にガレージから外に出る。


「あそこにいる!」

「一瞬であんなところに!?」

「しかも私の攻撃を避けるなんて……!」


 レイテットがいち早く発見、指差し、生存者たちは民家の屋根に止まっている『PODE』を見つめる。

『PODE』はじっと生存者たちに四つの目を向けている。


「真正面からの攻撃はすぐに避けられる。ならば隙を作ることが出来れば……」


 雛は思考し、なにか使えないか周りを見る。

 周りには建ち並ぶ民家と先ほどまでいた古びた家屋、付近の腐り果てた道具、道路の上に乗り捨てられたであろう廃車がある。


「あれが使えそうだ」


 雛は廃車に目を付ける。廃車は廃車でもドアが使える。ドアはシールドの役割を果たすことが出来るのだ。

 雛の頭の中で作戦が組み上がる。

 自身がドアを使って囮となり、蜘蛛型の『PODE』が食いついてきたところをレイテットかアイーラに仕留めてもらう。完璧の作戦とはいえないが、幸い敵は単純な思考。囮に食いつく可能性は十分ある。


「やってみるか。レイテット、アイーラ、あの廃車からドアを取ってくる。援護を頼む」

「はーい」

「任せて!」


 レイテットとアイーラに背中を任せ、雛は廃車に向かって走り出す。

『PODE』は彼女たちから離れて行く雛の方へ向き、飛びかかる予備動作を取った。


「雛君は捕らせないよ」


 少しの予備動作も逃さないアイーラは引き金を引く。弾丸は真っ直ぐ向かい、『PODE』の予備動作を無理やり解除させた。

『PODE』は弾丸を一瞬で回避、違う民家の屋根に移る。その間に雛は廃車のドアを力任せに取った。


「よし、後は……」


 雛はドアをシールドとして構え、彼女たちのところへと戻る。


「それでどうするの?」


 レイテットが雛に訊く。


「俺が囮になる。敵が食いついてきた瞬間を狙って、敵を殺せ」

「はいよー」

「了解!」


 雛はドアを構えながら『PODE』に近付いていく。


「いつでも来い。食いついた瞬間がお前の最期だ」


 いつでも踏ん張れるようにゆっくり『PODE』に接近。その接近の様子をじっと見ている『PODE』は飛びかかる予備動作を取った。

 そして風が訪れる。

『PODE』が飛びかかり、囮である雛に食いついた。しかし標的にされたのは雛だけではない。アイーラも標的にされていた。

 一瞬のことである。

『PODE』の尾から出た粘着性のある糸がアイーラにくっ付き、そのまま空中に飛ばされた。


「がはっ!」


 アイーラは勢い良く建物に叩きつけられ、地に伏せた。


「アイーラ!」


 予想外の攻撃に雛は思わず声を出した。そして雛はドアで『PODE』の全体重の乗った牙による攻撃を辛うじて防ぎ、踏ん張ってみせている。

『PODE』は隙だらけになっている。


「これ以上やらせない!!」


 トドメを刺す役目の一人であるレイテットがアイアンサイト越しに『シールド細胞』を見つめ、ドラグノフの引き金を引く。弾丸は放たれ、奇跡的に『シールド細胞』のど真ん中を貫き、破壊した。

 蜘蛛型の『PODE』はよろめく。アイーラにくっ付けてある糸、雛が辛うじて防いでいる牙、それらも含めて蜘蛛型の『PODE』は蒸発した。


「終わったか」


 雛はドアを捨てて、急いで倒れているアイーラのところへと向かう。


「生きているか?」

「うぅ……背中と腰が痛い」

「良かった。生きていたか」

「生きていたかじゃないよ。メチャクチャ背中と腰が痛いんだからなぁ? いててて……」


 雛はアイーラを助け起こした。

 レイテットと美保は雛に続いて駆け付け、アイーラを心配する。


「怪我は!?」

「苦しくない?」


 レイテットと美保の心配の言葉に対してアイーラは緩く「なーい」と、無事であることを答えた。その答えでレイテットと美保の不安と心配は消え、ホッとしていた。


「敵は片付き、全員無事。宝探しの時間を始めようか」


 生存者たちは敵の片付いたこの場所で、武器の調達及びこの先必要な物を漁り始める。


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