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【完結】POD Enemy  作者: D-delta
エピソード1 強く生きる雛

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第三十四話 誰も訪れない静かな日

たった静かな日。

 地対空ミサイルを破壊してから四日が経った。

 救出部隊が来る気配は全くなく、航空機が発する音さえも聞こえない。

 残酷にも時間は進み続ける。

 月は沈み、雲に隠れた太陽が昇ってくる。ゲームの日は終わりを告げ、新しい朝の始まりだ。


「四日目か……」


 時刻は午前八時。

 生存者たちは全員リビングで寝落ちしており、その中で雛は誰よりも早く目を覚ましていた。

 だが、目を覚まして感じているのは気持ちの良い朝ではなく、救出部隊が来ないという軽い絶望。


「行動に移さねば」


 この先『PODE』の巣窟であるホルムスクで生き残るためには武器の調達が不可欠。そして武器の調達のために、武器がありそうな場所と目的地までの安全なルートをマークした地図がある。

 準備は万全、後は行動に移すだけ。それ故、雛は焦らない。


「……!」


 全身に力を入れて、雛は身体を動かす。そのままリビングに放置されていた自身の装備を確認し始める。

 まず雛が手に取ったのはガスマスク。しかしガスマスクはスペツナズナイフを扱う『PODE』によって壊されており、もはやガスマスクとしての役割を果たせていない状態になっている。


「捨てるしかないか」


 雛はガスマスクを諦め、リビングに放置した。

 そして残りの戦闘用ヘルメットとタクティカルグローブを確認し始める。雛はマジマジと見つめ、結果的に壊れているところはないことが分かる。まだ問題なく使用出来るため、雛は戦闘用ヘルメットとタクティカルグローブを装着する。

 いつも通りの格好となった雛はリビングで寝ている彼女たちを起こし始める。


「起きる時間だよ」


 爆睡しているレイテットの肩を優しく叩き、幼さのある口調で言った。

 レイテットは肩を叩かれ、目を半開きにして身体を起こした。


「んにゃ? なーに?」

「朝だ」

「朝だー! 雛君おはよう!!」


 雛の朝という単語を聞いたレイテットは一気に目を覚まし、朝一番の元気の良い挨拶を出した。

 雛はいきなり出たレイテットの元気の良い大きな声に少し身体をビクリとさせた。


「おはよう」


 雛はレイテットに挨拶を返す。レイテットはニッコリと笑顔を向け、雛も自然と笑みを浮かべていた。


「むにゃぁ……なんだよー」

「レイテットちゃん、声大きい」


 レイテットの元気の良い挨拶でアイーラと美保も目を覚ました。しかしぶつぶつと文句を言っている。それほどアイーラと美保は気持ち良く寝ており、いきなり起こされたことによって機嫌を少し悪くしていた。

 まだ眠そうにしているアイーラと美保はなんとか身体を起こし、二人揃って身体を伸ばした。


「さーて、今日はなにをしようか!」


 レイテットが元気いっぱいに言う。

 特になにをするか決めていないアイーラと美保は雛の方に視線が向いた。

 そして雛は言う。


「地対空ミサイルを破壊して今日で四日目だ。未だ救出部隊が来る気配はない。だから生き残るためにも武器の調達を行動に移す、反対の者はいるか?」

「私は大丈夫!」

「私もー」


 レイテットとアイーラは反対せず、雛に賛成する。しかし美保は違った。


「雛君……やっぱり救出部隊は来ないの?」

「来ないと断定した訳ではないが、このままでは来ないだろうな」

「そう、分かったわ。それなら私も一緒に行くわ」

「分かった」


 美保は不安を払いのけるようにして告げ、雛に賛成した。

 全員が賛成したところで、彼女たちはそれぞれの部屋で準備を始める。


「今日はこれ!」


 レイテットは身軽なTシャツと短パンに着替え、脚の怪我を抑えるためにストッキングを履いた。

 そして一度部屋に置いてある鏡で自身の姿を見る。自身の格好に納得行くかの確認だ。


「よし!」


 レイテットは自身の格好に納得して、鏡から離れる。

 そのまま美保から借りっぱなしのショルダーバッグを持ち出し、その中にドラグノフの弾薬を入れた。

 準備が出来たレイテットは銃剣付きのドラグノフを持ち、自室から出る。


「雛君! 準備出来た!」


 レイテットが元気いっぱいでリビングに戻ってくる。


「あら、遅かったじゃない」

「うんうん」


 今回はレイテットが一番遅かった。

 先に戻ってきていたアイーラはいつも通りTシャツと短パンを着込み、上にポンチョを着ている。そしてAK47の弾薬が入ったウエストポーチを腰に着けている。もちろん武器であるスコープ付きのAK47も持ってきており、準備万端である。

 変わって美保はいつものメイド服を着込み、着替えと出かけるのに必要なものを詰め込んだリュックサックを背負っている。そのリュックサックの中には美保の武器である折りたたみ式のスコップや食糧となる缶詰めと人数分の水筒も入っている。


「雛君、準備は?」

「もう出来ている」


 雛の持つリュックサックにはマークした地図、怪我した時のための包帯、残り十四発の9mm弾が入っている。雛が告げた通りに既に準備は出来ていた。


「じゃあ出発しちゃおう!」

「あぁ、出発しようか」


 レイテットの声に出発を促され、生存者たちは玄関に赴いた。

 先頭に立っているレイテットが玄関の扉を開く。扉を開いた先には灰色の雲と薄く明るいホルムスクの町が見える。

 静かに風が吹く。

 風の吹く音だけが聞こえてくる。しかし航空機の放つ飛行音は聞こえてこない。ヘリの音も聞こえてこない。人間の足音でさえ聞こえてこない。敵である『PODE』のぬめりとした音も聞こえてこない。


「静かだ」


 雛はボソリと呟く。

 ここはまさしく誰も訪れない静かな場所だ。


「さぁ、みんな行くよ!」

「そうだな」

「おー」

「あんまりはしゃぐと怪我するわよ?」


 賑やかな雰囲気で生存者たちはその静かな場所を進み、第一目標地点である民家を目指す。

 かくして武器調達作戦は開始された。


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