第三十一話 雛、ゲームをする1
アーマードコア小説祭の方で短編書いていたので投稿遅れました、待っててくれた人にはとても申し訳ないです。
月は沈み、代わりに太陽が昇ってくる。朝がやってきた。
時刻は午前九時。
雛はレイテットの温もりに包まれて珍しく少し遅く起きた。それだけ雛にとってレイテットの温もりが心地良いのだ。
「こんな時間か」
レイテットの部屋にある目覚まし機能が止められた時計を見つめ、呟いた。
雛は身体を起こし、周りを見る。携帯ゲーム機が置かれた机、太陽の光が差し込む窓、壁に立て掛けられたドラグノフ、そしてよだれを垂らしながら寝ているレイテット。
今日は寝相を悪くしておらず、雛は無事にベッドで目を覚ますことが出来ていた。
「良い天気だ」
天気の良い窓の外を見つめる雛は独り言を呟いた。
そしてまだ寝ているレイテットの身体を揺さぶり、起こす。
「んぁ? なーに?」
レイテットは寝ぼけた口調で目を覚ました。雛は「朝だぞ」と言って、レイテットの身体を揺さぶり続ける。
雛の言葉を聞いて、レイテットは即座に上半身を起こす。
「朝だーっ!! 雛君おはよう!!」
途端に発せられた元気の良い声。雛はレイテットの元気の良い声を聞き、自然と笑みが表に出ていた。
完全にいつもの調子となったレイテットはベッドから抜け出し、立ち上がった。
「おはよう、レイテット」
ニッコリと笑みを浮かべたレイテットは少し身体を動かし、机に置いてある携帯ゲーム機を掴んだ。
「リビング行く?」
「どちらでも構わない」
「じゃあ、行こっか!」
雛はレイテットに手を引かれて、リビングに赴いた。
リビングには全裸姿の美保がテーブルの席に座っていた。
「おはよう」
「ま、また全裸ですか!?」
顔赤くしたレイテットの驚いた様子に対して、美保は軽く挨拶してからかうように笑う。
その横でレイテットと美保の様子を見ていた雛は何度も見た光景に特になにも言わず、クスリと笑っていた。
そして雛は美保に服を着させるために思い付いた危険な台詞を口に出す。
「あまり全裸でいるとその身体を貪るぞ」
雛の口から唐突に出た発言。
確かに雛の発言を聞き取った美保はたまらず自らの大事なところを隠し、自室へと引き下がって行った。
「雛君、今の冗談だよね?」
「もちろん冗談だ。俺は自衛官として同意のない性行為は行わない」
「そ、そうだよね」
顔を赤くしたままのレイテットはテーブルの席に座り、その隣に雛が座る。
程なくして美保が露出の少ないメイド服を着込んでリビングに戻ってきた。
「こほん。雛君、あまり獣になるのはダメよ?」
「俺は獣じゃない。自衛官だ」
「はぁ……そこでボケられてもなぁ」
呆れたように頭を抱えた美保は「まぁもう良いわ。この話は終わり」と雛の危険な発言の話を終わらせた。
「さぁてとぅい! 今日はなにする?」
「いや、今日は特にすることはない」
「じゃあ、ゲームやろうよ!」
雛の「特にすることはない」という言葉を聞き取った瞬間、レイテットは言いながらゲームを起動し始める。
携帯ゲーム機は比較的新しいものだ。携帯ゲーム機に入っているゲームソフトは今から三ヶ月前に発売されたアクションゲームだ。
「ふふん、これ私のお気に入りの一つなんだ!」
「どんなゲームだ?」
「うーんとね、元男の子の美少女が死なない力を用いておぞましい敵を倒していくの!」
「なるほど。性転換物か」
「そうそう」
レイテットはゲーム画面を雛に見せ、得意気に細かい操作説明を続ける。
説明を受けた雛は早速レイテットから携帯ゲーム機を渡され、自身の手でゲームを遊び始める。
「初見殺しとか所々であるから気を付けてね」
「了解した」
レイテットの言葉を聞き、雛は油断せずにゲームを進める。
序盤のチュートリアルは問題なく進めており、ちょっとした初見殺しは全部回避していく。そしてチュートリアルが終わり、ここからこのゲームの世界が明らかになる。
荒廃した異世界。出てくる敵はこの世のものとは思えないデザインのクリーチャー。か弱く見える美少女主人公。敵を倒すには頼りなさそうに見える武器。
雛はその世界観に少しぞっとしながらゲームをプレイし続けた。
「やれるのか?」
軽い不安が雛の脳裏を過る。
武器は落ちてあった短剣だけ。体力ゲージは目に見えず、画面内の血の広がりで主人公の体力を把握するしかない。メニュー画面を開けば、各種アイテムが見える。今持っているのは短剣と回復アイテムらしきものが三つ。
幸い操作感にストレスはなく、快適に操作出来る。
「やってみせるか。レイテット、このゲームちょっと借りても良いか?」
「ん? 良いよ。あ、なんなら全部攻略してみてよ!」
「分かった、やってみせる」
雛は初めて遊ぶゲームに没頭し始める。
おぞましいクリーチャーの出現。ゲーム本編に入ってから初めて遭遇する敵だ。
雛は美少女を操作して、敵の様子を窺う。そうしていると敵からの単純な攻撃が飛んできた。まだ操作に慣れていない雛は回避が出来ず、美少女に攻撃がヒットした。あっという間に画面に血が広がり、何回か攻撃を受けたところで操作している美少女は死亡した。
「意外と難しいな」
雛は思考し、もう一度挑み始めた。
攻撃と回避を考え、今度は積極的に攻撃していく。短剣でのチクチクとした小さい攻撃で、最初に遭遇した敵を撃破する。
そうして雛はゲームを進ませていく。
初見殺しと難易度の高い戦闘を繰り返し、美少女の死亡も繰り返していく。
思考と試行錯誤、経験。
雛はその三つを頼りにして敵の撃破と罠の突破をしていく。
ゲームをしてから十二時間が経った。
お昼ご飯と夕飯を食べ終え、ひたすらゲームで遊んでいる雛は既にラスボスに差し掛かっていた。
「これで最後か」
ラスボスだけあり、操作する美少女の装備は十分過ぎるほど整っていた。
最後の敵。ここまで遊んだ経験を活かして、雛は挑み始める。
敵の攻撃を見て、パターンを掴み、回避し続ける。そして隙が出来たところを見計らって攻撃を加える。うまくダメージが入っていることを確認し、続けて攻撃を続ける。
「トドメ」
雛の操作に従って美少女はラスボスを倒した。
ゲームクリア。画面に出てくるスタッフロールとエンディングを見て、雛はレイテットの部屋へと入った。
「レイテット、ゲーム終わった。楽しかったよ」
「え!? マジでもう終わったの?」
「あ、あぁ」
驚いた様子のレイテットは雛に詰め寄り、ゲーム画面を確認した。レイテットの瞳にスタッフロールが映り、雛がゲームクリアしたことを確信した。
「私でもまだクリアしてないのに、雛君速い……!」
「いや、そうでもないぞ?」
「むー、今度は私がクリアするからね! 雛君付き合ってよ」
「了解した」
頬を膨らませたレイテットは雛にゲームクリアするまで付き合うよう要求。雛はその要求を喜んで呑んだ。
突撃の二文字しかない戦術のレイテットに、雛はヒントを与えた。ヒントを理解したレイテットはゲームを進ませていった。
夜は深くなり、雛とレイテットは初めての夜更かしをしていく。
ゲームの日は続く。
ほのぼの回が少し続きます(・ω・)




