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【完結】POD Enemy  作者: D-delta
エピソード1 強く生きる雛

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第二十五話 地対空ミサイル破壊作戦4

更新遅れないようにがんばっているけど、うんまぁ、遅れちゃうね(汗)

 強かな風が吹く。

 周りの木々の葉が風で絶えずざわめき始めた。

 風が運んでくる硝煙の臭いは戦場を感じさせ、ただの人間が踏み込んではいけない領域を作り出していた。

 そしてその領域にゼラと一体の『PODE』がお互いに向き合い、立っている。

 ゼラは9mm拳銃を構え、他の兵士とは装備が違う『PODE』は特殊なナイフを両手に持って構えていた。


「…………」

「…………」


 どちらも言葉はない。ただ戦場をその身に感じ、相手の出方を窺っている。

 一分一秒の流れが遅くなる感覚を両者は感じている。

 一枚の木の葉が両者の間を行き過ぎていく。行き過ぎていく一瞬が戦いの口火を切る口実を作った。


「!」


 発砲音が響く。発砲音は木々の間を通り抜けて、木々の陰に隠れている彼女らの耳に届いていた。

その発砲音を起こしたのはゼラだ。ゼラが先に攻撃したのだ。

 9mm弾は風を切って、確実に『PODE』の『シールド細胞』目掛けて迫っている。ゼラの正確な狙いはアイーラと同様に標的を外すことがない。『シールド細胞』に当たるのは確実である。

 だが、普通ではない強運とでも言わせる現象を『PODE』は起こした。


「!?」


 ゼラはその現象を見て驚きを隠せない。

 それもそのはず、その『PODE』は特殊なナイフ――スペツナズナイフの刃で弾丸を弾いたのだ。通常、高速で飛ぶ弾丸は人の目で捉えきれはしない。弾丸を弾くことなど尚更出来るものではない。しかしゼラの目の前にいる『PODE』はそれをやってみせてしまった。


「……!」


『PODE』は静かにスペツナズナイフを構え直した。そのスペツナズナイフの刃は弾丸によって欠けているが、すぐさま元に戻った。なぜなら刃は『PODE』の身体の一部であり、欠けてもすぐさま再生出来るのだ。もちろん銃や各種装備、身体の一部が欠けても同じく再生出来る。

 そしてその再生の機能を担っているのが『シールド細胞』だ。

 このことをゼラは詳しく知っている。だから心臓部しか狙わない。


「!!」


 もう一度発砲音が響く。

 偶然なら二度は続かない。

 ゼラはそう思って、9mm拳銃の引き金を引いた。飛んでいく弾丸は正確に『シールド細胞』に向かって行く。

 しかし偶然ではなかった。またしても弾丸がスペツナズナイフの刃によって弾かれたのである。


「スペツナズ……これは一種の達人か」


『PODE』が弾丸を弾いた時、ゼラの目には一瞬肩の紋章が見えていた。その紋章はロシアの特殊部隊であるスペツナズのものだ。

 特殊部隊と言うだけあって、もはやただの兵士とは比べものにならない。そして強力な戦闘力を持っており、ゼラ以外の生存者ではとても太刀打ち出来たものではない。その上、敵はスペツナズナイフの扱いに慣れた達人だ。敵の得意な間合いに入れば高確率で死が待っている。

『PODE』はそんな達人とも呼べるスペツナズ隊員をミサイル車の他に取り込んでいたのだ。


「……!」

「!!」


 ゼラは敵の間合いに入らないよう、後退しながら9mm拳銃の引き金を引き続ける。

 しかし連続で二発撃ってもスペツナズナイフによって弾かれる。その上、欠けた刃は再生されてしまう。


「ダメか」


 何度撃っても『PODE』の『シールド細胞』には届かない。

 9mm拳銃のカートリッジ内の弾数は残り二発。リュックサック内のも含めて全部で十四発。ゼラにとって弾薬が心もとない状況だ。

 これ以上の発砲は弾薬の無駄だと判断したゼラは引き金を引かず、敵の様子を見た。


「…………」


 スペツナズ隊員をコピーした『PODE』はじっとゼラの様子を窺っている。

 敵からの視線をずっと浴びているゼラはリロードが出来ずにいる。リロードはリュックサックから弾薬を取り出し、一つずつカートリッジ内に収めていく方法しか出来ない。これでは敵からその隙を突かれ放題である。

 故にゼラはリロードが出来ず、たった二発の弾丸で保たせるしかなかった。


「!!」


 風が強くなる。それと同時に『PODE』が一気にゼラに接近する。スペツナズナイフの刃にゼラのガスマスク姿が映った。

 木々の葉がざわめきを強くする。

 その一瞬のことである。

 ざわめきと強い風の勢いに乗って『PODE』がゼラの右目目掛けてスペツナズナイフの刃を突き出した。それは一秒にも満たない一瞬の突き、まさに一閃。死の突きである。

 ゼラは一瞬の攻撃を回避出来ず、突き刺された。その場で右目部分を突き刺されて立ち尽くしている。


「なぜだ」

「浅かったな」


 だが、ゼラの右目にスペツナズナイフの刃は突き刺さっていなかった。刃はゼラの右目直前で止まっている。後少しでも刃が進んでいればゼラの右目は突き刺され、失明しているところだ。全ては着用していたガスマスク、ゼラがギリギリのところで相手の腕を押さえていたことのおかげである。


「!」


 ゼラは『PODE』を蹴り、距離を離した。

 これ以上敵が優位な間合いで戦うのは危険。ゼラは先ほどの一閃を受け、身を以てそれを実感していた。


「少し距離を離したところで変わりはしない」


『PODE』は冷静に述べる。言ったことがハッタリではないように、スペツナズナイフの鋭利な先端がゼラに向いた。そして刃が飛ぶ。

 刃が飛んでくる。まさに予想しえない攻撃だ。刃が飛んでくることを知らないゼラにとって回避は困難である。しかしゼラは迫ってくる刃をギリギリのところで回避し、ガスマスクに傷が出来る程度に抑えた。

 この回避は厳しい訓練によって鍛え上げた身体とゼラの圧倒的な生存本能があって、初めて成し得ることが出来る業だ。


「危険なナイフだ」


 ゼラは呟く。

 飛んで行ったスペツナズナイフの刃が再生される。それは無限に刃を飛ばせることを意味していた。


「ならばもういい。一気にやる」


 このままでは無限に出てくるナイフを飛ばされ続け、いずれ殺される。流石のゼラでも永遠に回避し続けることなど出来ない。

 ゼラは一気に決着を付けるため、引き金を引いた。9mm拳銃から放たれた弾丸は『PODE』に飛んでいくが、平然とスペツナズナイフによって弾かれる。

 弾数は後一発。もはやゼラには後がない。


「終わりだ」


『PODE』はゼラとの戦いを終わらせる発言をした。その発言通り、『PODE』はゼラが狙いを定めている隙を突いて得意な間合いに一瞬で入り込んだ。しかも銃口を躱すようにしての一瞬の接近だ。狙えない上に弾丸が一発しかない状況では撃てない。

 完全に隙を突かれたゼラはすぐに態勢を変え、片手で9mm拳銃を持って銃口を『PODE』に向けた。


「!!」

「!?」


 一瞬の勝負。一秒にも満たない戦いが始まる。

『PODE』はボディアーマーとガスマスクの中間にある首に狙いを定め、スペツナズナイフの鋭利な先端を向けた。

 対するゼラは9mm拳銃の銃口を『シールド細胞』に向けた。もはや狙いは定めていない。身体が密着するほどの近接戦闘であり、狙いを定めている時間などないのだ。


「……!」

「!!」


『PODE』は一瞬の突きを繰り出した。確実に切っ先はゼラの首に向いている。もうゼラは攻撃から逃れられない。

 ゼラは切っ先を見つめ、生存本能のままに左手を盾にした。切っ先はゼラの左手の肉を切って貫通していく。

 左手から来る激しい痛み。

 ゼラはそれに耐えながら引き金を引く。発砲音が響くと共に弾丸が放たれる。弾丸はスペツナズナイフをすり抜けていき、心臓部である『シールド細胞』を貫いた。


「仲間よ……生きていてくれ」


『PODE』は最期の言葉を残し、倒れた。そして跡形もなく蒸発する。

 ゼラは戦いに勝ち、生き残った。ミサイル車の破壊にも成功している。だが、左手から来る痛みはゼラにとって尋常ではない。勝利を噛み締めている余裕はゼラにはなかった。


「ぐ、ぐあぁぁぁぁ!!」


 ゼラはその場に倒れ込んだ。左手を押さえて、痛みを抑えている。

 左手から来る激しい痛み。


「あぁぁぁぁぁ!!」


 ゼラの見ている風景はごく自然なものではなかった。

 なにもかも灰色の世界。音楽教室。ピアノ。自らの血で染まる鍵盤。左手に何度も刺さるハサミ。ゼラを取り囲んでいる小学生たち。小学生たちの好奇心でいっぱいな笑い声。

 ゼラは過去を鮮明に思い出していた。左手から来る痛みと共に。

 思い出したくない記憶。

 悪夢が再び訪れる。ゼラ――雛は左手の痛みによって悪夢へと誘われていく。


悪夢の始まり始まり

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