第二十話 出発への準備
あちゃー、投稿遅くなりました(汗)
窓の外は暗闇となり、空には月の光りと星々の輝きがあった。
時刻は午後の八時を回っている。すっかり夜になっていた。
家の台所では美保が拾ってきた缶詰めを元にして料理を作っていた。
「お腹空いてきたー!」
「ごはんごはん」
催促するようにレイテットとアイーラはテーブルの席に着き、晩ご飯が出来るのを待っていた。
美保は困ったように笑顔を浮かべて「待っていてね、もうすぐでご飯出来上がるから」と母親のようであるかのように述べた。
美保が作っている料理は簡単に作れる鍋だ。鍋の中には五つの缶詰めから、魚と肉、そして豆の類が入っている。有り合わせのものばかりだが、その味付けは不味くない。
「味はどうかしら?」
美保は鍋の汁をスプーンですくい、その舌で味を確かめる。
味は醤油による味付けと元々味付けされていた魚の缶詰めにより、濃厚な味になっていた。
「うん、これで良いわね」
美保はその味に納得したように頷く。納得出来た美保は鍋を持っていき、テーブルの上へと置いた。濃厚な味付けによる鍋の香りがレイテットとアイーラの前を漂った。
「いただきまーす!」
「いただきマウス」
レイテットとアイーラは空腹に負けてすぐに鍋をつまみ始めた。
鍋をつまみ始めた二人を余所に、美保は部屋で寝ているゼラを起こしに行く。部屋の扉を開けて、寝ているゼラの様子を見る。
部屋のベッドでゼラはぐっすりと寝ている。その寝ているところに美保は近付いて「晩ご飯出来たよ」とゼラの耳元で囁いた。
「ん?」
ゼラは美保の声に目を覚ました。しっかりと目を開けて美保と目を合わせる。美保は笑みを浮かべて「立てる?」とゼラに問いかける。
美保の問いかけに対してコクリと頷いたゼラはベッドから抜け出し、寝る際に脱いでいた戦闘服を軽く着込んだ。
「起こしに来てくれてありがとうございます」
「あら、素直にお礼言われるの嬉しいわ。それじゃあリビングへいらっしゃい! 晩ご飯出来ているから」
そう言って美保はリビングの方に向かい、ゼラを手招いた。手招かれるままにゼラはリビングの方へ移動していく。
リビングに漂う鍋の匂いはゼラのお腹を確実に空かせた。その無表情からは想像出来ないほどリビングにいる誰にでも聞こえるくらいに腹の虫が大きく鳴った。
美保はクスリと笑い、テーブルの席に着いた。無表情のままのゼラもテーブルの席に着く。
「はい、箸」
美保からゼラに箸が渡される。渡された箸を使い、ゼラは鍋の中に入っている魚を手元にある小皿に移した。移した小皿の上で十分に熱を逃がし、丁度良くなったところで魚を口に入れる。魚の身を噛み締め、味を確かめていく。
「美味しい」
「また有り合わせのもので作ったから、お口に合ってなによりだわ」
無表情のままでゼラは素直な感想に述べる。その感想で美保は安心したように自らも小皿に移して鍋の具を食べていく。
鍋の具はあっという間に生存者たちのお腹に入って行く。そして鍋の具全てが食べ尽くされ、残った汁はレイテットが豪快に飲んでいく。
レイテットは汁の濃厚な味を喉と舌で感じていた。遂に鍋の中が空になったと同時に「ぷはー」と緩いレイテットの声が出てきた。
「ごちそうさまでしたー!!」
元気な声でレイテットは言う。その声に合わせて他の生存者も「ごちそうさま」を言った。
夜は深まり、午後十時を過ぎている。
生存者たちは寝る前の一服をしていた。レイテットとアイーラは家の外でタバコを吸っており、美保は自室にて持ってきた漫画を読み返している。
他の生存者たちが一服している中、ゼラだけは違った。ゼラには一服などしている余裕がなく、棚から取り出した地図をリビングのテーブルの上に広げていた。
「早くしなければ……」
ゼラは前に予測した三つのポイントを再度確認し、自身の怪我した部分を確かめるように触った。
「身体が保てれば良いが、辛うじて行けるな」
怪我の部分を触ったゼラは明日に作戦を決行しても大丈夫、と判断して明日の動きについて考え始めた。独り静かなリビングで思考を巡らせる。
地対空ミサイル自体を破壊するのは簡単だ。ミサイル車をコピーした『PODE』の『シールド細胞』を破壊すればそれで終わる。しかしロシア兵を取り込んだ『PODE』がいれば話は別になる。もしも兵士をコピーした『PODE』がいるのであれば戦略上重要なミサイル車を防衛しているはずなのだ。
「防衛部隊の撃破か……」
ゼラは独り呟く。
ミサイル車をコピーした『PODE』を防衛しているであろう敵はロシア兵。ゼラが戦った圧倒的な力を有する魔法使いのようなタイプではない。そう、ただの兵士だ。
「しかし……」
ただの兵士だが、その実力は確かにある。訓練を積み、銃器の扱いになれた兵士をコピーした『PODE』は人の創作物をコピーした『PODE』や他のゼラニウムをコピーした『PODE』を除いて段違いに脅威になる。
そしてコピーされた各種装備は材質をコピー出来ない影響で劣化したものになっているとはいえ、各種装備の内で一番の脅威となり得る銃器の殺傷能力は確実に人を殺せるレベルにある。これが一番懸念していることだった。
ボディアーマーを着込んだゼラには銃弾がヒットしても当たり所によって無傷なことがある。しかしそれを着込んでいない彼女たちはどこに銃弾がヒットしても無傷ではいられない。最悪の場合、負傷したことを皮切りに死亡、あるいは全滅にまで発展しかねない。
「黙って一人で行くべきか」
ゼラは思考する。一人の自衛官として彼女たちの安全を考慮しなければならない。彼女たちは銃器こそ持っているもののあくまで戦わなくてもいい人間であり、戦力に数えてはならない。
人数が足りなくなればミサイル車破壊の成功率は下がってしまう側面もある。しかしゼラは彼女たちを死亡させる訳にはいかなかった。一人の自衛官として、「弱い人間の味方になれ」と強く教えられた者として。
「……一人で作戦を決行しよう」
ゼラ自身は死ぬ覚悟を出来ている。このままこの家で緩やかに過ごすのも良いかもしれないとゼラは頭の片隅で思っているが、自衛官という立場にいる以上それは許されない。
「この家も絶対に安全じゃないし、『PODE』の襲撃してくる可能性もある。その可能性による緩やかな死を待つよりは行って死んだ方がまだマシだ」
ゼラの意志と決意は岩のように強く固まる。
すぐにゼラは準備を始めた。リビングに彼女たちがいない間にリュックサックに必要な物を入れて行く。
「これで良いか」
納得したようにゼラは必要な物を入れたリュックサックのファスナーを閉じた。中に入っているのは9mm拳銃本体とその弾薬、負傷した時用の包帯、食糧である缶詰め、正確な道を行くための最新の地図だ。
誰にも内緒で明日の早朝にすぐ出発出来る準備を終える。
準備を終えたゼラは明日の早朝にすぐ出発出来るようにイスに座り、その目を閉じた。
騒がしい声でレイテットとアイーラが外から戻ってきても気にすることなく、ゼラは目を閉じ続ける。完全にゼラは寝入っていた。
そしてレイテットもアイーラも美保も寝静まり、時間は過ぎていく。空にある三日月状の月が地平線の向こうに落ちていき、代わりに太陽が上がってくる。
それは朝が来ることを意味していた。
時刻は午前四時。単独による地対空ミサイル破壊作戦は決行されようとしていた。
更新速度を速めたいところですが、中々難しいところですね




