第十八話 お昼
うへー、PCと大会の準備してたら投稿遅れた(汗)
時刻は昼の十二時を過ぎた。
空は相変わらず、薄暗く雲が覆っている。その雲から雨が降り、外では雨粒が落ちる音が響いていた。
「…………」
ゼラは無言でしばらくの間、雨が降る窓の外を見ていた。雨粒の落ちる音でゼラは十分に心を落ち着かせ、雨粒の一つ一つを認識するようにして見ている。
そういう風にしてベッドに横になっているゼラはふと、リビングから漂って来る匂いに気付く。
「なんだ?」
上半身を少しだけ起き上がらせ、部屋の扉の方に向いた。すんすん、とゼラは匂いを嗅いだ。調理されたトマトの匂いがほのかに部屋にまで伝わってくる。
匂いが段々と近付いてくると、部屋の扉が開いた。
入ってきたのは赤いスープの入っているお皿を持った美保だ。その開かれた扉の先にはテーブルの席に着いてお昼ご飯を食べているレイテットとアイーラが見えた。レイテットはがっつくように食べ、アイーラはゆっくり味わうようにして食べていた。
「お待たせ、ゼラ君」
そう言って美保はスープの入ったお皿をゼラに近付けた。
ゼラはその赤いスープを見つめる。赤いスープには豆類や魚類の具が入っていた。
「結構有り合わせの物で作ったトマトスープだけど、食べてみて?」
美保は一緒に持ってきたスプーンでトマトスープをすくってゼラの口元にまで持っていた。ゼラはトマトスープから出る匂いにお腹を空かせ始め、たまらず口をつけた。
調理されたトマトの味が口の中に広がっていく。
「美味しい」
相変わらず表情にはでないが、その口で美味しいということを伝えた。
美保は「良かった」と笑顔を浮かべて言った。
「美保さん、後は自分で食べられるから大丈夫」
「本当? 自分で持てる?」
「大丈夫」
ゼラの言葉を聞いて、美保はスプーンをゼラに渡した。そのまま「なにかあったら呼んでよ」と言って、リビングの方に向かって行った。
ゼラはトマトスープを食べ続ける。豆と魚の身をしっかりと味わって行く。
ただ、美味しい、というのしかゼラにはなかった。それ以外に言うことが見当たらないのだ。
ベッドで上半身だけ起こした状態でゼラはトマトスープを食べ終える。
「美保さん」
ゼラが呼ぶと、リビングの方から「はーい」と声が聞こえてきた。
呼ばれた美保は部屋の扉を開けてゼラに寄っていく。空になったお皿をゼラは差出し、美保は「ちゃんと食べ終えたのね」と、ニッコリとした様子で空になったお皿を受け取った。
美保がお皿を持ってリビングの方へ向かって行くところで、入れ替わるようにレイテットが部屋に入ってきた。
「ゼラ君! 怪我大丈夫?」
「この通り、大丈夫だ」
ゼラが大丈夫であることを伝える。レイテットの心配する様子は一気に吹き飛び、いつもの底抜けに明るい表情になった。
「レイテット、あるだけの銃を持って来てくれないか?」
「良いけど、なにに使うの?」
「暇だから弾薬の確認と手入れをしたいだけだ」
「なるほど! 今持ってくるから待ってて!」
レイテットは部屋から飛び出ていった。ゼラはそのレイテットの様子に少しだけ笑った。
見当たるだけの銃と弾丸をかき集め、レイテットはゼラが寝ている部屋に元気な様子で「へーい! 持ってきたよ!」と戻ってきた。
レイテットが持ってきた銃は、アイーラのスコープ付きのAK47、レイテットの銃剣付きドラグノフ、リビングに置きっぱなしだったゼラの89式小銃と9mm拳銃だ。
レイテットが銃器を持ってきたところで、ゼラはベッドに座る態勢になった。最初にレイテットの銃剣付きのドラグノフを膝の上に置いた。
「おっ、私のからやるんだね!」
「まぁな」
美保の机の上に置いてあった一部血で汚れ、一部焼け焦げている戦闘服から布きれを取り出した。ゼラは布きれを持って手入れを開始する。
ドラグノフに付いてある銃剣を取り外し、その刃を慎重に拭いていく。拭けば切れ味が良くなる訳ではないが、ゼラのこだわりで隅々まで綺麗にしたかったのである。
銃剣を拭き終わり、次はドラグノフ本体の手入れにかかる。そこでふと疑問が過る。
なぜ狙撃や長距離に適した銃にスコープが付いておらず、銃剣が付いているのか?
その疑問をぶつけるようにしてゼラはレイテットに訊いた。
「気になったのだが、レイテットのドラグノフはなぜスコープが外されているんだ?」
「私よりアイーラの方が狙撃上手いから」
欲しい答えが返ってこなかった。
ゼラは質問を変えて再度訊いた。
「質問を変える。このドラグノフは狙撃や長距離射撃に向いているんだ、なぜこれをアイーラに渡さないでレイテットが接近戦で使っているんだ?」
「だって私のおじいちゃんが持っていた銃に似てるんだもん! これは私が使わないと思ったから、私が使ってるの!」
「祖父が使っていた銃?」
ゼラは首を傾げる。そのゼラの様子にレイテットは答えた。
「そう、おじいちゃんが使ってた銃! 私のおじいちゃん強かったし、優しかったし、その銃で私や私の家族をいじめてくるような悪い連中を追っ払ってくれたのよ!」
「思い出深いんだな、それでドラグノフを使うのか……」
「そうそう! それに私は射撃下手くそだからおじいちゃんの銃みたいに銃剣付けているんだ!」
元気な様子でレイテットは説明を終えた。ゼラはそういう理由なのかと、納得して手入れを再開した。
武器を使う理由は人それぞれだ。それ故にこれが効率的というのを指摘するのは無粋だと思い、なにも言わずにゼラは納得したのだ。
「汚っ!」
「ずいぶん長い間、手入れをしていなかったみたいだ」
パーツ単位に分解したドラグノフは酷く汚かった。特に弾丸を発射させる部分には煤や埃が相当溜まっており、明らかに性能低下を促すほどになっていた。
ゼラはそれを布きれで拭き取って行く。
ゼラとレイテットが納得するまでドラグノフを綺麗にし続ける。そしてゼラとレイテットが納得するところまで綺麗にすると、ドラグノフの手入れを終えた。
「これで良いな」
「うんうん、Okay!」
ドラグノフを元の形に戻し、レイテットに渡した。レイテットは綺麗になった銃剣付きのドラグノフを大事そうに持っていつもながらの元気な表情を浮かべていた。
「ドラグノフの弾数は何発だ?」
ゼラが訊く。レイテットは「全部で三十八発!」と答えた。
ドラグノフの弾数の確認を終えて、次にAK47の手入れを始めた。
AK47もドラグノフ同様にパーツ単位ごとに分解していく。
「汚っ!」
「予想はしていたが、これも酷い汚れようだな」
パーツの汚れ具合もドラグノフと同様にAK47も相当汚い。これも隅々まで綺麗にして、手入れをあっという間に終えた。
次に弾数の確認をしていく。AK47の7.62mm弾を一発一発丁寧に数える。二人が把握出来た範囲で弾数は丁度五十発だ。
「アイーラのは終わり! 次はゼラ君のだね!」
「そうだが、先に弾数を確認させてくれ」
「はいよ!」
ゼラとレイテットは89式小銃の5.56mm普通弾の確認を始めた。しかし数えるほどもないどころか、一発も5.56mm普通弾は無かった。
「ないね」
「駐車場で戦っていた時に全て使い切ってしまったか」
5.56mm普通弾が無いことに気付いたゼラとレイテットは弾数を数えるのをやめた。
ゼラは残弾ゼロの89式小銃は使えないとして、手入れをしないで次の9mm拳銃の弾数を数え始める。
カートリッジに入っている弾丸を含めて数えていく。残弾は二十二発ほどだ。
「おおっ、これはまだあったね」
「あぁ、これは手入れをしよう」
弾数の確認を終えて、ゼラは9mm拳銃の手入れを始めた。
パーツ単位に分解していく。9mm拳銃は前にも手入れをしているため、パーツはそれほど汚くはなかった。
ゼラは布きれで少し汚れたパーツを軽く拭いていく。パーツの隅の隅まで拭いていき、すぐに手入れは終わった。9mm拳銃を元の形に戻してゼラは自身の戦闘服の上に置いた。
「暇つぶし……終わったな」
全ての銃の残弾確認と手入れを終えたゼラは呟いた。レイテットは「案外早かったね」と言った。
「まぁ今は休んでなよ、なにかあったら呼ぶからさ!」
「それもそうだな」
「うんうん! じゃあ私、美保さんのところに戻ってるねー!」
レイテットは元気な様子で手入れの終わったドラグノフとAK47を抱えて、部屋から出て行った。
バタン、と扉が閉まる音を最後にゼラはベッドに横になった。
暇つぶしもなくなったところでゼラに残されたことは身体を休めることだけだ。
「…………」
無言のままゼラは身体を休ませるため、目を閉じてもう一度眠りについた。




