第十三話 大爆走
モチべが中々上がらないものですね
時刻は午後一時。
レイテット、アイーラ、美保の三人は民家ルートを進んでいた。
「あれ? こっちで合ってるっけ?」
みんなより先頭を進んでいたレイテットは道が分からなくなり、足を止めた。
その後ろで地図を憶えていた美保が「このルートで合っているわよ」と述べ、足を止めたレイテットより先を進んだ。
「あ、ちょっと待って! 先頭は私!」
「はいはい、お先にどうぞ」
レイテットは元気な様子で先頭に戻った。美保はその元気さに呆れるように笑った。アイーラはその二人の後ろでくすくすと小さく笑っていた。
和んだ雰囲気を持った彼女たちは『PODE』の障害を無しに、民家ルートを順調に進んでいく。今のところぬめりとした音も彼女たちは耳にしていない。それほど比較的安全なルートなのだ。
「足疲れた」
アイーラは足を疲れさせて車道の真ん中で立ち尽くしていた。仕方なくといった様子でレイテットは「ほいこらぁ!」と、一層の気合を入れて幼い身体をしたアイーラを難なく背負った。笑みを浮かべてレイテットはアイーラを背負いながら再度歩き出した。
彼女たちは無人の車道を堂々と歩いていき、民家ルートを進んでいく。
なんの襲撃もないまま数分が経った。
アイーラを背負ったレイテットと美保は民家が立ち並ぶ場所に到着した。
「着いた」
「着いたわね」
「着いたぁ!!」
アイーラ、美保、レイテットと続いて到着したことを呟いた。
目的地に到着した彼女らは早速ドアを破って一軒目の民家に入りこんだ。
家内の隅から隅まで探し、一つ目の目的物を彼女らは見つけた。
「一つ目発見!」
「誰持つ?」
アイーラの言うことに対して美保は「私が持つわ」と言って、目的物であるリュックサックを背負った。リュックサックは軽く、中身は空っぽだ。
「他になにかない? レイテット、アイーラ」
美保は確かめるように言い、レイテットはアイーラを背負いながらもう一度室内を念入りに調べる。レイテットの目にはこれといった物は見つからないが、アイーラはキッチンの戸棚を怪しそうに見つめていた。
「そこ、なにかない?」
アイーラがキッチンの戸棚に指を差した。美保はその戸棚を開く。開かれた棚の中には缶詰めが二つ入っていた。
早速缶詰めを手に入れたリュックサックの中に入れた。
「思わぬところで収穫があったわね。お手柄だわ、アイーラ」
「そうそう、よく見つけたね!」
二人から来る褒め言葉にアイーラは如何にも自信のある顔を浮かべた。
一軒目の用を済ませた彼女らは次の民家に足を進ませるため、外へ出た。
外では爆発音とは違う爆音が響いていた。その爆音の正体は車のエンジン音だ。複数のエンジン音が重なっており、爆音と化していたのだ。
「なんだろ?」
「もしかしたらまだ人がいるんじゃない?」
「それなら良いのだけれど……」
彼女らは爆音のする後ろに振り向いた。振り向いた先にいたのはスライム状の車――車をコピーした『PODE』だ。しかもズラリと並んでおり、数えれば二十台以上はあった。車をコピーした『PODE』たちはどれもエンジン音を鳴らして、鼻先を彼女らに向けている。
その車たちは全てショッピングモールに放置されていた車たちだ。
「うわ……」
「これ、ヤバくないっすか? 美保さん!」
「うぅ……はぁ、みんな散らばって逃げて!!」
美保の涙目混じりの声を皮切りに彼女らは一斉に散らばって走った。『PODE』たちはフルスロットルで爆走して彼女らの後を追いかける。
アイーラを背負ったレイテット美保は散らばって二つの方向に逃げた。
※
「ヤバい!」
美保は必死で逃げる。美保が逃げた先は車道が多い場所だ。足の疲れも『PODE』に有利な地形など頭から抜け落ち、逃げることしか頭になかった。
爆音が響き渡る。『PODE』が凄まじいエンジン音を出して美保を追いかけているのだ。そこに道路でのルールなど存在しない。左車線も右車線も歩道さえも『PODE』が占拠し、爆走を続けているのだ。
「車なんだからルールぐらい守りなさいよ!!」
一瞬後ろに振り向き、美保はルール無用の『PODE』に言い放った。それを『PODE』が正直に聞くはずがなく、ルール無用なまま『PODE』は爆走を続ける。
段々と美保と『PODE』の距離が縮まって行く。美保は逃げ続ける。エンジン音と爆走する音が美保に耳に入ってくる。
「ひぃ!」
美保は途中にあった民家に入り込み、二階に逃げた。美保が逃げ込んでいるところをしっかり見ていた知性がまるでない『PODE』はあれよあれよと吸い込まれるように美保が逃げ込んだ民家に突撃した。
もはやそこに安全運転の言葉はない。付近にあったなにもかもをなぎ倒して、民家に突撃していく。
「ヤバいヤバいヤバい!!」
美保は二階で息を殺して、車をコピーした『PODE』が突撃してくるドスンドスンという大きな音を聞いていた。
位置はもうバレている。『PODE』は少しの容赦もなく突撃していく。が、『PODE』たちは勝手に蒸発していた。突っ込んだことにより、心臓部である『シールド細胞』が損傷していたのだ。
建物の破片が突き刺さり、『シールド細胞』を損傷した個体。後ろから突っ込まれて『シールド細胞』を損傷した個体。横から轢かれて『シールド細胞』を損傷した個体。死因はそれぞれだが、もはや自業自得と言っても良い。
「あら?」
音が止んだ。なにが起こったのか、美保は確認のために一階に降りた。一階に降りれば『PODE』たちが蒸発した跡があった。
なにが起こったのかまるで分からない美保は苦笑い一つして、事故を起こして勝手に死んだと解釈した。
「とりあえず逃げましょっか」
深く考えないように自分自身に言い、美保はルールの大切さを再認識しながら『PODE』の突撃によって一層広くなった玄関から逃げて行った。
途中で力尽きました。レイテットが逃走するところは次話で書きます。




