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【完結】POD Enemy  作者: D-delta
エピソード1 強く生きる雛

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第十四話 大逃走

 街中に爆音が響き渡る。爆音を発生させている『PODE』だ。数は十二台。そのどれもが車をコピーしており、アイーラを背負って逃げているレイテットを追いかけていた。


「レイテット、家の中に入って入って!」


 アイーラが後ろに振り向くとエンジン音を高らかに出して『PODE』が近付いていた。後少しで衝突事故の発生である。

「はいはい!!」とアイーラに従い、レイテットは進路を変更して民家内に駆け込んだ。レイテットの後ろを追いかけるようにして『PODE』たちは民家に突撃を開始した。


「レイテット、裏の方から逃げて!」


『PODE』たちが突撃してくる姿をしっかりと目に入れたアイーラは顔を青ざめさせて叫んだ。

 アイーラの叫び声を間近で聞き取ったレイテットは馬の如く全力疾走を始めた。黄色と白のグラデーションが入ったポニーテールがなびく。レイテットは裏の扉から飛び出した。

 ドスンドスンと、ぶつかる音を立てて『PODE』たちは民家に突撃。玄関を破壊し、堂々と中に上がり込んだ。


「うぉ!? マジ?」


 車をコピーした『PODE』二体は建物の破片で『シールド細胞』を損傷し、勝手に蒸発した。しかしその後ろにいるトラックをコピーした『PODE』は建物の破片など物ともせず、民家に大穴を開けてレイテットを追いかけ続けた。それをしっかり見ていたアイーラは驚いた。

 トラックが開けた大穴を『PODE』たちが次々と走り通って行く。残った数は十台だ。


「レイテット、来るよ来るよ!」

「分かってるよ! 次の指示をお願い!」


 指示を待っているレイテットに応えるため、アイーラは付近に目を向ける。どこが良い逃げ場なのかを一瞬で見て、判断をしていく。


「あれ!」


 アイーラはレイテットに見えるよう、次の逃げ場に指を差した。指を差した先にはあるのは先ほどより少し大きい民家だ。

「了解!」と返事を大きくしたレイテットは轢かれまいと言わんばかりにジグザグで逃げ、次の民家に駆け込んだ。


「二階に上がって、レイテット! そこから狙撃する」

「はーい!」


 アイーラを背負ってレイテットは二階へと上がった。そこでアイーラはレイテットの背から降りて、自分の足で『PODE』たちがよく見える窓側の方に移動した。窓は開いており、狙撃するには丁度良い。


「任せたよ、アイーラ」

「十分に任せてよ」


 アイーラはそう言って、AK47を構えた。スコープを覗き、爆走している敵の心臓部を見据える。そして連続で引き金を引いた。一発ずつ確実に『PODE』たちは『シールド細胞』を射抜かれていく。銃声が続き、残りが四台となるものの、その時にはもうレイテットたちのいる民家に突撃していた。

 トラックを先頭にして、民家に大穴が開く。その大穴を通って『PODE』たちは民家を行き過ぎた。


「レイテット、今の内に脱出!」

「はいはーい!」


 アイーラの指示に従ってレイテットはアイーラを背負って壊れた階段から飛び降り、『PODE』が作った大穴から逃げ出した。

『PODE』たちはその場で反転して、レイテットたちを追いかける。


「アイーラ! 次の逃げ場所は!?」

「もう逃げない、ここからはもう迎撃する」


 アイーラはニッと笑い、後ろから追いかけてくる『PODE』たちを見た。レイテットは走りながらアイーラの言うことに応えるようにしてニヤリと笑い、足を止める。


「どうやって迎撃する?」

「タチャンカスタイルで」


 アイーラは即答した。

 タチャンカとは二頭から四頭立ての荷馬車または無蓋馬車に重機関銃を取り付けた兵器のことだ。そのタチャンカを見立てたスタイルは、体力お化けのレイテットが馬の役割を、正確な狙撃を得意とするアイーラが射手の役割を担うものだ。


「んじゃ、行くよ? アイーラ!」

「良いよ」


 レイテットはアイーラを背負いながら後ろ向きに走り出した。視界には『PODE』がいる、走る先も見えない、それでも走り続ける。アイーラのことを信じているレイテットに恐怖心はなかった。

 アイーラはレイテットが走っている間にAK47で狙いを定め、引き金を引く。最初の一発は先頭のトラック型に命中し、蒸発した。


「次」


 次の心臓部に狙いを定め、全速力で迫ってくる『PODE』たちの心臓部に向けて引き金を引いた。次々と『PODE』は蒸発していく。

 最後の『PODE』が二人の目前に迫ってくる。後少しで衝突するというところで、アイーラは恐れもなしに引き金を引く。最後に残った『PODE』の身体に弾丸が入って行き、『シールド細胞』を完全に貫いた。


「仕留めた」

「よし。最後の奴仕留めたし、美保さんと合流しよう?」

「うん」


 アイーラを背負ったレイテットは合流するため、美保の名前を大きく出しながら走り出した。

 その発せられた大声に気付いた美保は声のする方へ向かい、無事にレイテットと合流した。


「いたいた、美保さん!」

「無事だった?」


 心配そうにレイテットとアイーラは訊く。対して美保は「大丈夫、それよりそろそろ時間だから合流場所まで行きましょう」と笑顔を見せて答えた。

 その笑顔に心配という文字は吹き飛び、合流地点に向かう。結局収穫は缶詰め二つにリュックサック一つだ。


「目的の物は一つしか手に入らなかったけど、大丈夫かな?」

「そこは大丈夫、ウエストポーチとショルダーバッグを代用しましょう」

「あー、なるほど。そうですね!」


 レイテットの心配に対して美保は言い、レイテットは納得した。

 和んだ雰囲気で彼女たちは合流地点にまで足を運ぶ。

 美保が持つ腕時計の針は午後五時に近付いている。彼女らは遅れないように走り、合流地点にまで急いだ。そして合流地点に到着した。時計の針は午後五時きっかりである。


「あれ?」


 レイテットはゼラの姿が見えないことに首を傾げる。


「ゼラ君、いないね」


 アイーラはゼラを探すようにして辺りをキョロキョロするが、姿は見えない。

 疑問に思った美保は、なにかあったのではと、心配と不安が出始めていた。


「ねぇ、ゼラ君を探しにいかない?」


 レイテットが提案を始める。レイテットもゼラが時間通りに来ないことで不安になっていたのだ。

 美保はレイテットの提案に頷く。しかしアイーラは「すれ違いが起きたらどうする?」と反対意見を出した。ここですれ違いを起こせばいらぬ危険を呼んでしまう可能性があるからだ。


「でも……もしも、ゼラ君が大変な目にあっていたらどうするの? 私は嫌だよ、ここで待ってるだけなんて」


 レイテットの真っ直ぐな瞳がアイーラを見つめる。その瞳は正義感で溢れ、誰も見捨てないと強く訴えかけていた。アイーラはその真っ直ぐさに負けて「じゃあ、助けに行こう」と意見を変えた。


「もしもすれ違いが起きて危険な目にあっても私が守るよ」


 レイテットの真っ直ぐな気持ちを補助するように、なにより誰にも心配を掛けられないようにアイーラは言った。

 美保もレイテットも〝頼もしい〟という気持ちでアイーラの言葉を信じた。


「それじゃあゼラ君救出作戦開始!」

「おー」

「おー!」


 レイテットの行動の意を示す掛け声に合わせて、アイーラも美保も掛け声を出した。

 彼女らはゼラを救出するため、ショッピングモールへと走り出した。


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