第十一話 理不尽な力
たぶんこれからも二日の一回のペースで投稿していくと思います、よろしくお願いします。
時刻は午後三時。
どこまでも青い空に昇る太陽は魔法を扱う『PODE』と、負傷というハンデを背負ったゼラを照らしていた。
「…………」
「…………」
ゼラは89式小銃を構えた。同時に『PODE』は魔法陣を展開した。
両者無言のまま攻撃する構えを取った。
「……!」
89式小銃の引き金が引かれた。先に攻撃したのはゼラだ。
弾丸は『PODE』に向かって行くが、『PODE』の魔法陣から出てきた厚い岩壁に弾かれてしまった。
ゼラは発砲をすぐに止めて『PODE』の背後に回り込むように移動を開始する。
それを見計らって『PODE』は岩壁を打消し、次に展開した魔法陣から熱線の放射を始めた。
「!?」
魔法陣から放射されている熱線は地面を焼いていきながらゼラに迫る。ゼラは勢いよく迫ってくる熱線をギリギリのところで回避、熱線はゼラを通過してショッピングモールを真っ二つに焼き切った。そのままショッピングモール内のガスが熱線で引火、爆発してショッピングモールは次々に起こる爆発に呑み込まれた。
「凄まじい攻撃力だ」
これが魔法の攻撃力か、とゼラはその目で見て魔法というものを実感していた。そして魔法を打破するために思考し始める。
どんなものにも必ず弱点は存在する。それを信じてゼラは下手に攻撃せずに『PODE』の放つ魔法をよく観察した。
『PODE』から魔法陣が展開される。その魔法陣からは先ほどと同じ熱線が現れた。しかし今度は地面を焼きながらではなく、直接ゼラに向かって熱線が飛んで来たのだ。
「!」
高速で飛んで来た熱線をゼラは右に回避、戦闘服の左一部が熱線によって焦げる。通り過ぎた熱線はショッピングモールの裏側にある建物を一気に溶かしていった。
『PODE』の魔法による攻撃力をゼラはしっかり見つめていた。そこで長期戦をするのは不利と見て、敵の観察から敵への攻撃に変える。
89式小銃の銃口をいつも通り『PODE』の『シールド細胞』に向けた。魔法を放たれる前に一瞬でしっかりと狙い、発砲を開始。
「……ウォール」
『PODE』がぶつぶつと呟き始めると、展開された魔法陣から厚い岩壁が出現し始める。5.56mm普通弾が厚い岩壁によって簡単に弾かれた。
「建物を一瞬で吹き飛ばす火力と弾丸を余裕で弾く壁、宙を飛べる力……か」
たった一人で到底撃破出来る『PODE』ではない。まさにチートのような力を持った敵。魔法という究極の力を行使する存在。
ゼラに勝てる要素はほとんどなかった。あったとしてもほんの少しだけである。
「……スプラッシュミラー」
『PODE』は魔法を唱えた。魔法陣が現れ、そこから光りの弾が発射される。無数の光弾は真っ直ぐゼラに向かって行く。ゼラはそれを回避するものの、ゼラから外れた光弾たちは反射されるようにゼラに戻って行った。
「!?」
流石に反射された光弾たちに反応しきれず、脚に三発、腕に一発の光弾が突き刺さった。
光弾は高温の熱量を持っており、ゼラは傷口を焼かれる感覚で苦しんだ。その焼かれる感覚はバカにならないほどの苦しみがある。しかしそれでもゼラは堪えて、耐えてみせた。痛みに怯んで隙を見せたら確実に光弾の餌食になるのだから。
「!!」
光弾が反射し、ゼラの周りを飛び交う。避けるのは難しいのが、ゼラは避けてみせた。反射して迫ってくる光弾の一つ一つを目で追い、身体を反射的に動かして回避を続ける。
「『デュアル』」
ゼラはスタイルを変えた。光弾を避けながらでは狙いを付けている暇がないからだ。『デュアル』ならば手数が多く、適当に引き金を引き続ければいずれ『シールド細胞』に当たる可能性がある。
この可能性にゼラは掛けた。
四方八方から襲い来る光弾を避けながら『デュアル』スタイルで発砲が続く。
「ウォール」
新しく展開された魔法陣から厚い岩壁が現れる。『デュアル』スタイルで放たれた弾丸はそれに弾かれる。無力な攻撃。簡単に弾かれてしまう。
ゼラは光弾を避けて、発砲して、それら二つをやりながら目の前にいる『PODE』を撃破するために頭を動かす。
「反射……」
『PODE』が放ち続ける光弾の反射を見て、ゼラは頭が働く。
厚い岩壁で前方の攻撃を完全に防いでいる。ならば反射させて別角度から『シールド細胞』を破壊すれば良い。ゼラは反射する光弾をヒントにして、この考えにまで至った。
「ナイフ」
ゼラは被弾覚悟で一度動きを止め、ナイフを取り出した。光弾が一気に脚に突き刺さる。
「うぐっ!?」
耐えきれる限界まで痛みが上ってくる。凄まじい痛みの激しさにゼラはたまらず声を出した。しかし意識を強く持ち、痛みに負けず立ち続けた。立ち続けるゼラはナイフを空に投げ、89式小銃でナイフの刃に狙いを付けた。
太陽の光りによってナイフの刃がゼラの燃えたぎる闘争心の如く煌めく。
「当たれよ!!」
今出せる力を指に集中し、ゼラは重く感じられる引き金を引いた。
発砲音が辺りに響き渡ると共にゼラの身体に発砲時の反動が重くのしかかる。
全力で放たれた一発の弾丸はナイフの刃にぶつかった。
そして跳弾した。
いびつな形に変形してしまった弾丸はゼラの計算通りに魔法陣から出ている岩壁の向こう側に飛んでいき、弾丸は『PODE』の体内に入り込み始める。弾丸は『シールド細胞』に向かって体内を駆けていく。
「ウォ……!?……」
『PODE』の様子がおかしくなり、光弾も岩壁も魔法陣も消えた。岩壁が消え、よく見えるようになった『PODE』の身体は崩壊していく。
跳弾した弾丸は『シールド細胞』に見事当たっていたのだ。『シールド細胞』を損傷して身体を保てなくなった『PODE』は蒸発を始めた。
ゼラは理不尽な力を持つ者に打ち勝ったのだ。
「終わった……」
限界を迎えたゼラの身体は薄れる声を吐いて、地面に膝を着いた。
空に投げたナイフが金属音を立てて地面に落ちる。
『PODE』が蒸発した。そこにはなにも残らない。光弾さえも消えた。
傷口を焼かれる凄まじい痛みの感覚が残っているゼラ。包帯で応急処置を施せるほどの力は残っていない。今のゼラに出来るのは黙って膝を着いていることだけ。
ゼラがそうしている間に時刻は過ぎて行く。
時刻は午後五時。合流時間だ。
夕日がナイフの刃を煌めかせ、ゼラを寂しく照らしている。
「…………」
薄れゆく意識の中、ゼラは『PODE』の言っていた言葉を振り返っていた。
「いじめられっ子」「雛ちゃん」と、その言葉たちはゼラにとって昔を思い出せるものがあった。
夕日に染まる空を見上げ、ゼラは思い出す。いじめを受けたことを。ピアノを弾いていたこと、弾けなくなったことを。ひたすらに偉い父親の言うことに従っていたことを。
魔法って種類にもよるけど結構チートだよね




