第十話 狩りの花
ドクターストレンジ観てたので投稿遅くなりました、すいません
ショッピングモール内に銃声が響く。
銃声はゼラと他のゼラニウムを取り込んだ『PODE』による銃撃戦が始まっていることを示していた。
肩に一発だけ被弾したゼラは逃げながら89式小銃を発砲している。対する『PODE』はゼラを追うようにしてスライム状の89式小銃を発砲していた。
まさに逃げるゼラは獲物、追いかける『PODE』は狩人だった。
「カバーしろ、ゼラニウム4を確実に仕留めてやれ」
「了解」
「楽しくなってくるぜ」
三体の『PODE』は物陰を利用して逃げているゼラを包囲するように散開し、ゼラになるべく撃つ隙を与えぬよう発砲を続ける。
『PODE』のコピーした89式小銃及び9mm拳銃はコピー元の銃と構造が全て同じ。違うところと言えば材質だけだが、その材質一つでコピー元の銃と比較すると殺傷力は劣っていた。しかし人間を殺すだけの殺傷力は十分にあり、コピーされた弾丸を肩に一発受けたゼラはそれを理解していた。
「……!」
銃撃の中を逃げるゼラは足音が三つのルートに別れて行くことに気付いた。
ゼラは別々の地点からの集中砲火や十字砲火を想定してなるべく分かれ道が多く、複雑な場所に逃げて行く。
もしもこれで一ヵ所に留まれば集中砲火で動けなくなり、一対三の不利な白兵戦に持ち込まれて死ぬかコピーした破砕手榴弾を投げ込まれて死ぬ。大きな広場で逃げ回れば、狙いやすく、幅広く動けるために十字砲火を形成されて死ぬ。単純な一本道を逃げれば基本的に弾丸を避けられない、そして銃弾を外すことがないため死ぬ。
仮に逃げるではなく、反撃に転じたとしても『PODE』を一体か二体殺して死ぬ。もしくは共倒れの確率が極めて高い。それもそのはず相手はただの人間をコピーした『PODE』ではない、ゼラニウムという名前を与えられている戦闘訓練を受けた自衛官を取り込んだ『PODE』なのだから。
「どこに逃げた!」
「こっちはいないぞ!」
「こっちにもいない!」
三体の『PODE』は視界から逃げたゼラを探すようにして、連携を取りながら慎重に道を進んでいく。まるで狩りを行っているかのようだ。
敵が探し待っている間に獲物と化しているゼラは小動物のように物音を立てずに動いた。
動き、静かに店内に入ったゼラは罠となる物を探し始める。その罠はとても些細なもので殺傷力はない。だが、戦闘中はその罠を最も活かすことが出来る。
「これで……」
罠となるものを見つけたゼラはポケットにその罠を入れ、わざと敵に見つかるようにして移動を開始した。後はその罠を展開し、より確実な反撃に繋げるだけである。
「ゼラニウム4!」
「見つけたよ、雛ちゃーん!」
「さぁさぁ逃げてみろよ!!」
逃げて行くゼラを見つけた三体の『PODE』は銃撃をしながら追いかける。その逃げている行為自体が罠とも知らずに。
ゼラは先ほどと同じく分かれ道の多いに場所へと逃げて行く。が、少し走るスピードを落とした。あまりに離れていると罠に掛かってくれないからだ。
銃弾がゼラに当たるか当たらないかのすれすれで飛んできている。いい加減『PODE』は追いかけながらの発砲に慣れて来ていたのだ。
「今だ」
ゼラは角を曲がったところで、罠をポケットから取り出す。罠を設置する直前に近場にあったガラスを蹴り割った。こうすることで罠が設置される音を消した。これで気付かれる可能性はほとんどない。
「逃げられると思うなよ」
先頭を走ってきた一体の『PODE』は罠があることに気付かず、ゼラに銃撃を浴びせながらそのまま走った。簡単に罠に引っ掛かった。
その罠というのは球体の形をした大量の小物を床に配置するものだ。簡単に仕掛けられ、足元を見ていないと小物で足を滑らせて転ばせることが出来る簡単な罠であるが、戦闘中での効果は高い。
足を滑らせて転んだ一体の『PODE』は必死に上半身を起こし、89式小銃を構えた。しかしその時には既に遅かった。
一体の『PODE』は一匹に変わり、狩人から獲物に変わっていたのだ。
「ゼラニウム4、ちょっとま――」
ゼラは問答無用で89式小銃の引き金を引き、一匹目の『PODE』を蒸発させた。
響く銃声と共に他の『PODE』が駆けつけてくる。
足音に反応して、ゼラは見つかる前に店内に隠れた。
「くそっ!」
「雛の坊ちゃまが……!」
他二体の『PODE』は警戒をより一層強くして、ゼラの捜索に掛かった。
もうこの時点で狩りをしているのは『PODE』ではなくなっていた。今狩りをしているのはゼラの方。そして獲物は『PODE』だ。
足音を立て、必死にゼラを探している『PODE』は殺されまいとしていた。対してゼラは静かに息を潜め、足音を聴いていた。どのタイミングで店から出るか見計らっていたのだ。
「雛! いじめられっ子みたいにかくれんぼなんてしてないで早く出てこい!」
「そうだ、出てこい!」
『PODE』たちは叫んだり、足音を立てている。
その物音を聞き取り、ゼラは獲物の位置を把握していた。
足音がだんだん離れていく。それを見計らってゼラは外を念入りに確認し、店から出た。周りに『PODE』はいない。
「どこだ、雛!」
『PODE』の声がゼラの耳に入る。ゼラは『PODE』が勝手に立てる物音を頼りにして、安全に狙撃出来るポイントへ静かに移動していく。
『PODE』はゼラが移動していることに気付いていない。
難なくゼラは狙撃出来るポイントにまで到着。89式小銃に付いている二脚を展開し、伏せて安定した狙撃を開始した。アイアンサイト越しに『シールド細胞』を見つめ、引き金を引く。突然響いた銃声と共に弾丸は飛び、二匹目を蒸発させた。
「どこだ!?」
最後の一匹となった『PODE』は狙撃してきた方向に射撃した。銃弾は狙撃ポイントに飛んでいく。
ゼラは伏せた状態であり、そう簡単に態勢を直すことは出来ない。
「……!」
飛んできた銃弾は態勢を直している最中のゼラの太ももを貫いた。痛みがゼラに襲い掛かり、貫かれたところから血が流れ出た。
しかしゼラは痛くても血が出ても獲物を仕留めるために我慢し、態勢を直した。
『PODE』はゼラのいるポイントに走った。
「そこで大人しくしてろよ?」
89式小銃の銃口を前に向け、ゼラのいるポイントに慎重に接近。そしてポイントに到着した。
銃口がゼラのいるであろう場所に向くが、そこに誰もいない。
「どこに行った!?」
「ここだ」
『PODE』の言うことにゼラはその背後から返答した。
声に反応して最後の一匹は振り向こうとするが、ゼラが背後から組み付いて阻止した。
「お前で最後だ」
ゼラはナイフを取り出し、獲物のスライム状の身体に手ごとナイフを入れていく。そしてナイフの刃が『シールド細胞』に突き刺さり、切り裂いた。
「いじめられっ子めが!」
最後に『PODE』がゼラを憎むように言い残し、蒸発していった。
戦闘は終わった。
戦闘を終えたゼラは出血している傷口を押さえながら二階の店を漁った。
「あった」
ゼラは目的の物であるリュックサックを見つけた。リュックサックは大小様々な物が置いてあった。ゼラはその中で一番大きなリュックサックを持った。
リュックサックを持ったゼラは出血を止めるため、一階にある店に移動する。そこで包帯を手に入れ、付近にあったベンチに座った。
「ん……」
ゼラはボディアーマーを外し、戦闘服を脱いだ。下着姿となり、訓練によって鍛え上げられた逞しい身体が表に出てきた。
被弾した肩と太ももに包帯を巻いていく。
巻き終わったゼラは余った包帯をリュックサックに入れた。そのまま戦闘服、ボディアーマーを着用する。
「……戻るか」
時刻は午後の三時だ。合流時間は午後の五時。
今から戻れば合流地点を確保出来ると、ゼラは思考を動かす。そして身体を動かしてベンチから立ち上がる。もちろん無理をしない程度にだ。
無理をしない程度にゆっくりとした足取りでゼラはショッピングモールから出た。
昼の日光が負傷したゼラを照らす。が、照らしているのはゼラだけではない。
「……?」
駐車場の地面に映る一つの影。それに気付いたゼラは警戒するように視線を動かす。が、正面にも左にも右にもいない。残るは上だけだ。
ゼラは太陽が輝く上空を見上げた。そこに一つの人影。
「なるほど……そういうことまで出来るのか」
人影は宙に浮いていた。
宙に浮かぶ人影はゼラに気付かれたことを知り、地上に降りてくる。太陽の輝きによって見えなかった姿がよく見えてきた。
「ここまで出来るとは正直に驚きだ」
ゼラは一人呟く。
見えてきたものは緑一色、二つの核細胞を有した魔法使い――『PODE』だった。魔方陣を足場として魔法使いの姿をしている『PODE』は浮いていた。
明らかに現実世界に存在するものをコピーしているものではない。そうなれば、人の創作物をコピーした個体となる。
「…………」
ゼラは無言のまま気合を入れた。怪我の負担を忘れるようにして、全身に力を入れる。戦闘が始まろうとしている中、怪我の負担など邪魔でしかない。
スライム状のローブに包まれた『PODE』の冷たい目、そしてゼラの闘志と殺意に満ちた目が睨み合う。
負傷したゼラに追い打ちを掛けるような三度目の戦闘が始まった。
やっぱり映画は面白いですね♪




