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偽聖女からの招待状

慈善晩餐会の裏に何かあると確信した私は、まず招待状そのものを調べた。


封蝋に触れると、薄い金色の上から黒い糸が絡んで見える。招待状にまで嘘がついているらしい。


「セシル嬢は、支援実績を自分の手柄にしたいのでしょう」


私は応接室で、ルシアン公爵とハロルドへそう告げた。


「ですが、それだけではありません。この文面、“黒霧浄化の奇跡を披露する”と書いてあります」


ルシアン公爵が目を細めた。


「辺境の現状を知らない者なら言えない文だ」


「いえ、知っているからこそ書けます。彼女は未着金の流れを知っている」


私は机に、井戸修繕費と王都寺院への献納記録を並べた。数字だけなら別の項目だが、触れた時に同じ黒い線でつながって見える。


「聖女候補の奇跡を演出するための宝石、護符、祭壇。全部が救済金の消えた先と重なります」


ハロルドが息を呑んだ。


「つまり、辺境の不足分で王都の奇跡を飾っていると」


「ええ。しかも堂々と」


ルシアン公爵はしばらく黙っていたが、やがて低く告げた。


「出席しよう」


「真正面から?」


「逃げれば向こうの思うつぼだ」


私はうなずいた。逃げるつもりはない。あの日みたいに、一方的に切り捨てられる側で終わるのは嫌だ。


その夜、準備のため資料室へ向かう途中で、公爵に呼び止められた。


「エレノア」


名前だけで足が止まる。


「王都へ戻れば、嫌な顔も言葉も浴びる。それでも行けるか」


私は少しだけ考えてから答えた。


「一人なら無理でした」


公爵の目がわずかに動く。


「でも今は、旦那様が隣にいてくれますから」


自分で言っておいて顔が熱くなった。


ルシアン公爵は珍しく、はっきりと笑った。


「なら、隣は空けておく」


その一言が、晩餐会よりずっと危険だった。


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