辺境市場の公開精算
廃修道院と港の不正を締める場は、王城ではなく辺境市場にした。
市場の中央広場。商人も工房主も修道女も領兵も、みんな生活の顔で集まっている。ここで精算する方が、この土地の金の流れとして正しい気がしたのだ。
私は高台へ立ち、横領台帳の写しを掲げた。
「青銀街道、川港、慈恵修道院、旧税倉。これまで別々に見えていた損失は、すべて同じ流れでした」
数字を読むたび、広場のざわめきが重くなる。
抜かれた支援油、消えた香油、上乗せされた修繕費、偽の祝福石。そして、王都へ戻った私益。
リディアが商会側代表として前へ出た。
「港湾商会は新しい受領制度へ全面協力する。これ以上、辺境の名前で稼ぐ連中に好き勝手させない」
続いてクララが言う。
「慈恵修道院は支援帳簿を公開し、施療と孤児院の支出を毎月掲示します」
ベアトリスまで腕を組んで頷いた。
「隣国側も到着記録を公開するわ。片方だけ透明でも意味がないもの」
最後に、ルシアンが前へ出る。
「グレイフォード公爵家は、浄化網と街道の再建費を正式に負担する。ただし、その管理は私の妻エレノア・グレイフォードが統括する」
広場の視線が一気に私へ集まる。
少しだけ足が震えた。
でも逃げない。
「責任を持って、黒字にも浄化にもします」
私は言い切った。
「辺境の金も、祈りも、もう誰にも勝手に持ち出させません」
その瞬間、拍手が起こった。
派手ではない。けれど、王城の見せ物よりずっと確かな音だった。
私はようやく思う。ここまで来て、やっと“奪われた人”ではなく“守る側の人”になれたのだと。




