表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
31/40

隣国伯爵夫人と共同監査

ベアトリス伯爵夫人は、有能な同盟者であると同時に実に容赦がなかった。


「甘いわね、エレノア。税倉へ手を出した時点で、相手はもう修道院だけで済ませる気がない」


彼女は自国側から集めた交易帳と、港の荷駄記録を机へ叩きつけた。そこには、廃修道院跡地へ向かう夜間輸送の記録が細かく残っている。


「うちの御者たちは酒癖は悪いけど、荷の重さには正直なのよ」


素晴らしい証言だ。


私は伯爵夫人と並んで帳簿を照合した。夜間便で運ばれたのは香油、祝福塩、灯料、それに鉄箱。数は多くないが、月ごとにぴたりと同じ。これは市場取引ではなく、定期的な儀式運用の流れだ。


「王都側の秘書官が港を使い、教会側の司祭が倉と修道院を押さえる」


「そこへ辺境の浄化網が利用される、と」


ベアトリスが頷く。


「大人って本当に、儲け話になると見苦しいわね」


まったく同感だ。


その時、ルシアンが窓際から振り返った。


「王都の監査官アンリから返答が来た。アウグスタ司祭は、資格停止中のセシルと資金授受の接点がある」


やはり繋がった。


私は机の上の帳簿を閉じる。


「なら、港、税倉、修道院跡地。全部同じ線上です」


「今夜動く?」


ベアトリスが当然のように訊く。


「できれば明朝に正規手順で」


「あなた、本当に真面目ね」


「不正を潰す時ほど、手順が必要なんです」


その答えに、ルシアンが少しだけ誇らしそうな顔をした。やめてほしい。仕事中にそんな顔をされると、私は一瞬だけ計算速度が落ちる。


共同監査の名目はすぐ整えた。隣国との交易物資が絡む以上、ベアトリスも正式に立ち会える。正面から開けてしまえば、あとで“盗み見した”とは言わせない。


夜、私は監査書類の最後の頁へ署名した。


もうすぐだ。


帳簿の黒い線の先へ、ようやく手が届く。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ