表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/15

夫婦として舞う夜

王都の慈善晩餐会は、以前よりずっと息苦しく感じた。


理由は簡単だ。かつて婚約者として立った場所に、いまは別の男の妻として戻ってきたからだ。


会場へ入ると、視線が一斉に集まった。好奇心、軽蔑、探るような色。けれどルシアン公爵は私の腰にそっと手を添え、歩調を崩さない。


「顔を上げろ」


「命令ですか」


「助言だ」


私は小さく息を吐いて、まっすぐ前を見た。


セシルは白金のドレスで、相変わらず完璧な笑みを浮かべていた。隣のアルベルト殿下は、私を見るなり露骨に顔をしかめる。


「辺境暮らしにしては元気そうだな」


「おかげさまで、数字は王都より健康です」


殿下の顔が引きつる。セシルがすかさず口を挟んだ。


「今夜は争いではなく慈愛のための会ですわ」


なら横領をやめてから言ってほしい。


音楽が鳴り、第一舞踏が始まる。貴族社会では、公爵夫妻が断るわけにいかない。


ルシアン公爵が手を差し出した。


「踊れるか」


「悔しいですが」


手を取った瞬間、周囲のざわめきが遠くなる。


彼は驚くほど上手かった。無理に引かず、支えすぎず、私が一番綺麗に見える位置へ静かに導く。前世ではダンスの経験なんてなかったのに、いまの身体はちゃんと覚えていた。


「緊張している」


「分かりますか」


「君は帳簿を持っている時より、踊る時の方が硬い」


失礼だと思いながら、少しだけ笑えた。


曲の終盤、彼の顔が近づく。


「今夜、もし何か起きたら」


「はい」


「必ず私の後ろにいろ」


その言葉に返事をする前に、会場の奥で強い光が弾けた。


セシルが“奇跡”を始めたのだ。


けれどその光は、私の目にはひどく不自然な金色に見えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ