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第65話 みんなと再会。

席に戻ると、アキラとセドリックの空気に変化が見えた。

穏やかに会話をして、笑っている。


「……アキラ様……!」


突然後ろからリューの声に、クッソびびった。

叫ぶのを我慢した事を褒めてほしいわ。

というか今までどこに居たんだ、この人。

まぁいなかったからこそ、アキラの告白が聞けたわけですけど。


「……ど、どうしましたか?」


セドリックを殺す勢いで殺気立って見つめるリューに、青ざめる私。

…これは嫉妬ですな。

両思い、乙。


セドリックがこっそり殺されても困るので、リューさんの背中をポンポンとして。


「あの2人は間違えてもリューさんが心配する様な仲にはなりませんから。」


と、釘をグッサリ刺した。


リューさんはブツブツと納得出来なさそうに私と共に席に向かった。


そこからはアキラの背後にべったりで。

ずっとセドリックを背後から睨みつけていたのだった。

……アキラさん、早よ告白でもして手綱を握っておいてほしい……。

この人ほっとくと危険。

混ぜるな、危険。

私はまた小さく息を吐いた。



それからセドリックはしばらくうちにいた。

……流石に3日過ぎたところで、サロンでくつろいでいるところを捕まえて質問をする。


「あんた、学校は……?」


「僕も療養中。」


「は?」


「……何か?」


「……ていうか何の用でうちにずっといるの?」


「避暑地で療養してるから。」


「……まだ夏には程遠いが?」


『避暑地』としても怪しい我が家。


セドリックは『にっこり』と私に微笑みかけて。


「……いだだだだ!!」


私にヘッドロックをかましてきた。

……こいつが私を好きだって話は、絶対嘘だと思う。


会話が不毛すぎるので、話題を変える。


「が、学園はどうなの?……みんな元気?」


セドリックはやっとヘッドロックを解き、私から離れる。


「元気だねぇ、きっと。……手紙来てない?」


「……そういえば、手紙の返事来てない……」


見るからにショボンとする私を、嬉しそうに笑いながら見つめる悪魔。


「……へぇ、来てないんだ。おかしいね?」


「……」


もしかすると、みんなエリナの魅了に……?

嫌な考えが頭をかすめる。

不安になり、俯いた。


「……そういえば、エリオットは元気?」


セドリックが明らかにさっきと違う反応で、私を見つめた。

びっくりしたというより、度肝を抜かれたというか。

ひどく驚いた顔で私を見つめている。


「……ていうかあんた、すごい人間らしくなったよね。表情とか……。前まですっごい悪魔みたいなやつだったのに……っていたたたた!!!やめっ!」


つい余計なことを言ってしまい、再び無言ヘッドロックである。

……はい、すいませんでした!!


ひたすら謝り倒して、魔の手から逃げる。

頭を痛そうにさする私に、鼻を鳴らし顎を突き出して私を見下ろしていたが。


「エステルがエリオットを気にするのは初めてじゃない?」


そう言って細く微笑んだ。


「……そうでしたっけ?」


「……自覚出てきていいことだ。しっかり励めよ。」


「……何様だよ!何を励むんだよ!」


「お前が励むのはただ一つ、婚約者の立場奪還作戦だろう?」


「……なんでそんな大ごとに!」


「自分の事になると、頭が足らなくなるのか、おい」


えらく深いため息と、すごいバカにした顔で私に詰め寄る。


「あ、後な。自覚した事はリオンにはいうなよ、まだ。今使い物にならなくなったら困るからな。」


「……その意味も全くわからんのだが……」


私は青ざめて立ちすくんだ。

セドリックはそんなのお構いになしにシラっとソファーに寛いでいた。


「……手紙、届いてないか見に行ってこい」


なぜか命令系。

ムカついたが、それより手紙のが気になったので素直にサロンを出た。

足の痛みもちゃんと治療してもらったので、もう痛みもなく快適に歩ける様になった。

サロンを抜けると、アキラのいる客間から声が聞こえてくる。


リューさんとアキラが2人で会話している様だが、なんだかリューさんの優しい声にホッコリする。

邪魔しない様に、会話を聞かない様に。

ソッと廊下を進んだ。


「エルー!今日の手紙、届いてないですか?」


「あ、お嬢様ちょうどよかった。」


私の声かけとほぼ同時に、エルが私に声をかけた。


思わず同時ってなんか気がめっちゃ合ってそうで、『えへへ』なんてちょっと照れくさくなる。

そんな私をよそに、エルが嬉しそうに私に言った。


「お嬢様、お客様がお付きになりました」


エルはニコニコ笑いながら、私に手を差し伸べて、エントランスに案内された。


「……エステル!」


エントランスには。


「コーディ!!それにリオンも!」


親友たちの顔を見て、自然と涙が溢れ、私は2人に抱きついた。


リオンが赤い顔で死にそうな表情で、目を白黒させるのに気がつくまで、私は2人を強く抱きしめた。


「……会いたかった!」


「私もよ、エステル……!」


コーディも目を真っ赤にして私を抱きしめた。


「……みんな学校は?」


そろそろテスト範囲とか気にしないといけない時期になるのでは?という不安で、学校のことばかり気にしてますが……。

そんな私の不安をよそに、2人はにっこりと笑い。


『療養中よ』

『療養中なんだ』


と声を合わせて言いました。

……あれ?どっかでさっき聞いた気がする……?


「というか、今学園は大変な事になっている。

とてもじゃないが、授業どころではないんだ。」


リオンが深刻そうな顔をした。


「……な、何が起きたの?」


「エステル誘拐事件で、警備が手薄だと各貴族が自分の子供の安全を心配して、色々指摘されてさ。

警備強化で教室も寮もしばらく休みになりそうだよ……。

アーロン先生がまた頭を抱えていたよ。」


「アーロン先生!……そっか、それでうちに来れたのね。」


フニャっと私がホッとした笑顔を浮かべると。

リオンが気まずそうに、ソッと私から目を逸らした。


「マギーもビクターもこっちに向かってそうよ。マギーが一番気にしてたから、会ったら抱きしめてあげて……。」


私が嬉しそうにコーディを見ると、コーディが笑顔で頷いた。

マギーには悪い事をした。

きっと一番気が気じゃなかっただろう。

会ったらいっぱいギュッとしよう!


「そういえば、学園の臨時の休みってどれくらいある予定?」


「……このままだと2週間はありそうだから、しっかりエステルも療養できるね。」


リオンが私に微笑んだ。


「……あぁ、ホッとした。みんな普通だ。」


「……どういう意味だよ!」


リオンが私につっこんだ。

もうこれさえも私は嬉しくて感動する。

思わずギュッとリオンに抱きつく。


突然抱きつかれたリオンは、意味がわからずまた、目を白黒させて固まっていた。

散々迷って、意を決して。

ソッと私の背中に手を伸ばした時に。

その手はセドリックによって阻まれた。


「……正気に戻ったか、リオン。」


「……ええまぁ。てかそんなことしなくても理性は君よりあると思いますけどね。」


痛そうに自分の手をさすりながら、軽くセドリックを睨みつけてため息をつく。

それを見てセドリックは満足そうに口を歪ませて笑うのだった。


「……相変わらずで、安心した。」


私はみんなを見つめて、呟いた。

コーディが私に寄り添って、手を取った。


「エステルが無事で本当に良かった。

あなたの事だから、また無茶な事をしていないかとても心配だったわ。」


コーディの目からは涙がとめどなく流れ、私に添える手は震えていた。


「……ごめんね、心配かけて……。」


「……あと、手紙のハートに、なんの意味があるのかを知りたくて。

とうとう自分の気持ちに自覚でもしたのかと……」


コーディの言葉を最後まで言わせないように、セドリックがリオンの耳を塞いだのだった。

……あからさま過ぎる!

思わず顔が赤くなりましたが、コーディはただニコニコと嬉しそうに笑っていた。

そういう意味じゃないんですけど!


「私がいない間なんか起きた?」


「……何かとは?」


「こっちは怒涛の展開で全部伝え切れるかわからない……」


コーディは『まぁ?』と小さく呟いて、また笑った。


夜にはマギーもビクターもうちにやって来た。

ただビクターもリオンもうちに来ることは内緒らしく、『寮から動くな、間違ってもカーライト家を訪ねない様に』と、釘までさされたらしい。

うちに来てていいのかと尋ねたらバレなきゃ大丈夫だとリオンとビクターが顔を見合わせて言った。


「やはり、城の中はほぼ全員、魅了されているんだろうか……?」


「……魅了と言ってしまえば、そうかもしれないが…。でも僕から見ると……何か隠していて、逆らえない状況にいて、誰かのいう事を仕方なく聞いているという気もしている。」


と、なんだか恐ろしい見解を呟いた。

それって魅了よりやばい状態ですよね……?


みんなが揃った時点で、すぐアキラを紹介した。

アキラはひどく緊張していてずっと俯いていたが、アキラの話をみんながストンと受け入れたので、逆に呆気にとられていた。

この人たちの順応力。

まぁ私もすぐ信じてしまいますけども……。


リオンについては妙にしっくり来た様で、魔族な格好しているリューさんを見ても、先に魔族ではないのでは?と見破ったぐらいだった。

……なんて鋭いんだ。


リオンはエーコが学園でも、エリナに変わってズケズケと介入している事を疑問に思っていた様だ。

時折見せるエーコの表情に、精霊ではない空気を感じていたと……。

意外にリオンは鋭い感性を持っている。

どっちかというと、ビクターの方が野生の勘的なやつが鋭そうなのに。

と、脳筋で判断してはいけませんが。


「エーコ様は今は聖女の側近という形になっている。なので、えらく学園の経営などにも口を出して来ていてさ。聖女の言葉だと言われたら、学園も逆らえなさそうだし……。

今回の警備についても、えらく関わっている様だね。」


「……エーコ様?」


「……そうだよ、エーコ様って呼ばなきゃだよ?」


リオンが嫌そうに笑う。

我を見て、釣られ笑いでひきつる私。


「聖女様の側近だから、様つけないとなのね……。うちに来た時メイドって言ってたのに。」


なんとも複雑な感情に、コメカミをかく。

言いたいことが言えない、そんな感じ。

でも今の話で、状況は悪くなっているのがわかる。


「……エリオット王子はどうしてる?」


私の質問に一瞬みんなの動きが止まり、顔を見合わせていた。

その様子に、私も怪訝な表情になる。


「……なんかあった?」


リオンが言いにくそうに、ビクターを見た。

ビクターが一瞬ためらったが、口を開いた。


「殿下はエリナにべったりだ。信頼してるのか脅されているのかは確認できないけどな。

ただ、はたから見ると…『仲睦まじい婚約者同士』に見える。」


一瞬。

私の呼吸が止まりそうになる。


「……そっか。」


誰にも気づかれない様に平常心を保とうとする。

だけど。

私は震えていた様だ。

そっとコーディとマギーが私に寄り添ってくれる。


仕方のないことだ。

最後の会話で私はとても最低だった。


嫉妬にかられて、エリオットを『王子』と呼んだ。

彼はどんな顔をしていたんだろう。


自覚した胸は、またチリチリと焦がれていく。

後悔してももう遅いのに……。


「とりあえず、サマンサ先生にも手紙をかいたんだけど……、サマンサ先生は元気?」


平常心に努め、淡々と話を進めていく。

今は自分の反省をしている場合じゃない。

そう言い聞かせながら。


「サマンサ先生、そういえばエステルが誘拐されたあたりから見てないんだよね……。エリナもほとんど教室に来ないし、来てもエリオット殿下にべったりだし。」


なぜ『べったり』をブーメランして来たんだ、ビクターよ。

そんな言いたいか、『べったり』と。


思わずビクターを見開いた目ヂカラで見つめる私。

殺気を感じたのか、思わずキョロキョロと辺りを見渡す。

私の方に目線を送る時には、そっと目を伏せるので多分気がつかれてない。


今度マギーとイチャイチャしてたら、もう見て見ぬ振りしてやらないんだから。

無意識に私の恨みを買ったビクターだった。


「……手紙届いたんだろうか……」


まさかサマンサ先生に何かあったりしないよね?

なんとなく嫌な予感が走る。


とりあえずダラダラとセドリックに協力してもらい、ここまでの流れをすべて説明していく。

私たちがすべきこと、協力してほしいことなどをみんなで話し合った。


そしてやっとエリナノートのコピーをアキラに読んでもらう。

エリナが書いたゲームの内容に間違いはないが、エリナ主観のノートは、エリナの願望も含まれていたらしい。

エリナがヒロインじゃないとして。

なぜ彼女は必死にヒロインになろうとしていたのか……。

そしてなぜ私たちは姿が入れ替わっていたんだろうかと……。


「エステルがヒロインなのかな?」


リオンがそう言ったけど。

私はその言葉に静かに首を振る。


「私はヒロインではないよ。悪役令嬢でもない。

エステル・カーライトっていう、ただの人間。」


そう言って、自分で笑ってしまった。


「ヒロインなんていない。」


セドリックが言った。


その言葉に、みんななんだかホッとした顔をしていた。

まるで自分の世界が色づいて見える様な。

私があの時感じた気持ちを、今みんなが感じているのかもしれない。


ふと、サロンに魔法陣が現れた。


みんな慌てて身構えて、男子が女子を守る形で一か所に移動する。

魔法陣がシュワシュワと音を立てて、人の姿を映し出す。


マギーが指差して目を見張った。

みんな魔法陣の人型を見つめていた。

その人型はぼやんと二つに分かれ、姿を表した。


「アーロン先生……と、サマンサ先生……!?」


魔法陣から現れた人型は、見慣れた赤毛の女性を抱えた白銀の男性へとカタチづいた。


ドサリと鈍い音がして、サマンサ先生とアーロン先生は倒れ込んだ。

私は慌ててエルを呼び、お父様を呼びに行ってもらう。


ビクターとリオンがサマンサ先生とアーロン先生を抱き起す。


サマンサ先生は微かに、アキラの名前を呟き、意識を失った。


「……すまん、少し休ませてくれ……」


アーロン先生もそういうと、頭から崩れた。

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