百三話 黒竜の魔導奏者
「消えろ、紛い物が」
真司は低く唸ると魔法陣を出現させて自らの姿を変えた。流線型の頭、二対の赤い目、三対の羽、手足には凶悪な爪が付いている。そして身体全体を覆う黒い鱗がその邪悪さを際立たせていた。
「グオォォォ!」
龍となった真司が吠える。
「ちょっと、この魔力本物?普通じゃありえないわよ!」
恵美が真司の魔力に驚く。
「これって、この間の俺と同じ?」
探が真司の姿と以前の自分を繋げる。
「アアアッ!」
真司が低く唸り恵美を引っ掻く。
「なにっ」
恵美としての変身が解け中の本性が現れる。
「あいつは!」
探が声を上げる。恵美になっていたものは三上軍団を名乗っていたアンダーウィザーズのメンバーだ。
「見られちゃあしょうがないですねぇ。私は烏欧次郎、アンダーウィザーズで魔導システムの商人をしております。と言っても今更自己紹介するまでもありませんか」
欧次郎が丁寧な口調で言う。
「っとと」
だが真司の爪に後退してしまい、いまいち締まらない。
「お前、なんで兄さんの振りをした!」
探が欧次郎に問い詰める。
「言ったでしょ、あなたは暴れ過ぎたんですよ。私の上司もカンカンでね、私にあなたを始末しろって言って来たんですよ。その際、あなたの周辺を調べるのも怠りませんでしたがね」
欧次郎が探を狙う理由を説明する。
「そのためにわざわざ手の込んだ真似を、いや、俺がやり過ぎたってのは本当か………」
探は俯いた。魔法使い達を倒してきたツケがここで回って来たのだ。今まで他の魔法使いを倒した探だがここで探自身が狙われてもおかしくはない。
「理由などどうでもいい、お前を消す!」
真司の爪が再び欧次郎に迫る。
「うわっ。先ほどと違って速い。ですがっ、当たりませんよ!」
欧次郎が攻撃を避けて叫ぶ。
「ぐっ」
だが探の弾丸が飛んだ。
「兄さんの姿でないなら容易に狙える!」
探が叫ぶ。
「言いますね。ならもう一度メタモルフォーゼを………くっ、速さだけは一丁前ですね」
欧次郎は再び索に変身しようとしたが真司の爪に阻まれて出来ない。
「ここは!」
欧次郎が魔弾を大量に飛ばす。
「ちぃっ」
「うわっ」
真司と探が驚くが当たってはいない。気がつくと前には欧次郎がいなかった。
「逃げた………」
探が呟く。
「逃げるなっ、俺と戦えー!」
真司の彷徨が闇に木霊した。




