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一撃機士と貧乏性なお嬢様——プラス変態達  作者: 張林
二章 白という存在
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二章 二撃目 大会への誘い

 大島の外れの方は、一般層が主に住んでいる。

 中心街で売られるような高いものや輸入品などは中々庶民に手は出せない。そんな庶民達が利用するのは、日用品や雑貨などを手頃な価格で販売する商店街などだ。


 そんな商店街を並んで歩く黒髪の男女。

「本当にここにあるのか?」

 黒髪の男——ナナイが言った。


 隣を歩く艶やかな黒髪をサイドポニーにした、変態していなければ自然な美しさを持つ少女——アエネアは胸を張り、メイド服を胸で押し上げて答えた。

「そのはずです。前に一度だけ行ったことがありますので」

 アエネアら自信たっぷりな様子だったが、


「なら、なんでさっきから同じところを何回も歩く羽目になってるんだよ!」

 ナナイは不満を込めてツッコミを入れる。ナナイが怒るのも無理はなかった。なにせ今歩いている商店街は直線の一本道ではなく、いくつもの店が集まり複雑に道が枝分かれしているのだ。


 暇を持て余したナナイにアエネアが、美味しいお茶が飲める喫茶店があると誘ってから数時間。

 二人は絶賛迷子になっていた。


「もう一度聞くけどさ、アエネアが行こうとしている喫茶店……ちゃんと分かってるよな?」

 非難の意味で、ナナイは言う。

「はい、ちゃんと覚えていますから大丈夫なはずです」


 その時のことを思い出したのだろう、とろけた表情になるアエネア。

 口元からよだれを垂らすアエネアを見て、嫌な予感がしてナナイは聞いた。

「聞きたいんだが、その時のことを話してもらえる?」

 アエネアは不思議そうに小首を傾げながらも、ナナイの質問に答えた。


「前に行った時は、お嬢様に連れて行っていただいたんです。落ち着いた雰囲気があって、木を削って作られた看板のお店でした」

 アエネアがそこまで言ったあたりで、ナナイは足を止める。ナナイがなぜ止まったのか疑問に思うことなく、アエネアは話を続けたわ


「中でも素晴らしかったのは、お茶が美味しくて、お嬢様の飲んでいたお茶を一口いただけたことでした。あの時は天国のような気持ちになれました、お嬢様が直接口をつけたカップを、私が舐めまわしてもいいということなんですから。でもどうしてか、そこからの記憶が飛んでいて……」

(店の位置をよく覚えてないのは、ローゼが殴ったからか? まあ、何にしても)


 ナナイが止まったのは一軒の店の前。落ち着いた雰囲気があり、木を削ったらしき看板がかかっている。

 さほどから何回も前を通った店だった。

「おい、アエネア。その店はこれだろ?」


「えっ? ああ! 本当です。このお店です!」

「はあ。よく覚えてない店を、人に案内させようと——ッ?!」

「どうかしましたか?」


 背に感じる視線、体を緊張感が支配する。何者かに見られているような気がして、ナナイは辺りを見回した。道行く人に、こちらを注視している人がいないことを確認して、ナナイは警戒を解いた。

「……何でもない。さっ、店に入るか」

 心配そうにナナイを見てくるアエネアに背を向け、趣のある木の扉を開けて店に入る。


「視線、ですか?」

「そうなんだよ、ここ最近な」

 カウンター席ではない席に座り、机を挟んで座ったアエネアに言った。


 ナナイはここ最近、視線を感じることに悩んでいた。どこにいても誰かに見られるような気がして、外出した時は特に強くなるのだ。

 それを説明して、手に持ったカップに入ったコーヒーを口に含む。


 コーヒーは初めて飲んだのだが、最初は苦くて好きになれそうになかった。砂糖をそれなり入れたら美味しく飲めたが。

 砂糖を入れずにコーヒーを味わっていたアエネアが答える。


「もしかして変質者かもしれません! ナナイ君に一方的な感情を向けて、覗き見しているのかもしれないです」

 同じことしてる人(アエネア)が言うと説得力が違う。

「だとしても、犯人を見つけられそうも無いんだよなぁ。いつも視線を感じる時は誰の気配もしなかったし」


 何か物を盗られるようなことは無いので、あまり気にしないように生活している。むしろ、ローゼはこんな気持ちで生活しているのかと不憫に思ったくらいだ。

「そうですねえ。でしたらこの前の下着泥棒の時のように、罠を張ってみますか?」


「それもいいけど機兵が今壊れてるんだよな。もし変態が下着泥棒(ハイア)みたいな化け物だったら、俺ら二人じゃ手に負えないしよ」

 機兵と生身で戦える化け物が、そう何人もいるとは思いたく無い。それでも前例があるのだ、害が無いのなら特に何かする必要は無いだろう。


「しかし、いいなこの店。このコーヒーとか言うの、砂糖を入れたら意外と美味しく飲めるし、静かで落ち着ける店だな」

 カップを机に置いて、一緒に頼んだクッキーを一枚口に放り込んだ。

「何よりも、ただなんて最高だよな」

「ええ、本当にです。お金がない私達には最高のお店です」


「ふざけるなよお前ら!!」


 和やかなコーヒータイムを破壊するように、一括が飛んでくる。

 顔を上げると、額に青筋を浮かべた無精髭のおっさん——パブアキンが立っていた。

 オールバックの頭部には包帯が巻かれ、格好も執事服ではなく喫茶店の店長に相応しい服装をしている。

 二人がやってきたのは、パブアキンの店だ。


「さも当たり前のことのように、無銭飲食発言をしてるんじゃあねえ!」

「え!?」「えっ!」

「分かってるのに、驚いたふりもするな!」


「悪かったよ。悪いと思ってる。でも金がないんだ。ムシャムシャバクバクゴクゴク」

「そうです。一銭もないなら、無銭飲食すしかないですね。パクパクモグモグコクコク」

 味わうこともぜず、口にクッキーを詰め込みコーヒーで流し込む二人。


「せめて味わええええ!!」

 パブアキンの悲痛な叫びが、二人しか客のいない喫茶店に響き渡るのだった。


 少し経ってパブアキンが二人の机に、新たに入れられたコーヒーの入ったカップを置いた。

「それ飲んだら帰れよ」

「いいのか?! タダで飲んでも!?」

「いいから早く飲め、そして帰れ。仕事の邪魔だ」

 そう言ったパブアキンはカウンターの向こうに戻っていく。そこで客が二人しかいなかったのを思い出したのか、もう磨かれているであろうカップを磨き始めた。


「よかったなアエネア、タダだってよ。明日も明後日も毎日来よう」

「はいナナイ君! これで虫ばかりのご飯からおさらばですね、感慨深いです」

「今すぐ帰れお前ら!!」


 本当に追い出されそうになったので、二人はパブアキンをからかうのをやめてコーヒーを味わった。せめてものおちょくりとして、チビチビとコーヒーを飲んで少しでも長居しようと考えながら。


「そういえばお前ら、仕事はどうした仕事は。特にアエネア、ローゼはどうしたんだ?」

 やることが無くて暇なのかパブアキンが聞いてくる。

「私はお嬢様に追い出されてしまったんです。しばらくお嬢様から離れないと、接近禁止令が出されてしまうんです」

(何やったんだよ。だいたい予想つくけどさ)


「俺は機兵が壊れてるから、機士として出来ることはないし。雑用だってインスラリスとミカが終わらせるから、俺に出来る仕事はないんだよ」

 ナナイの機兵は既に屋敷の倉庫に運ばれている。ナナイの機兵——ローゼのもだが、この前の戦闘でボロボロになっていて、かなりの修復作業を行わないと戦闘に使うことはできないだろう。


 ローゼが修復に使えるパーツを購入するのを、そう簡単に許可するとは思えない。

「新しい機兵がいるかなあ。はあ」

 ナナイが嘆息した瞬間、

「話は聞かせてもらいましたよ、ナナイさん!」


 ボサボサの白髪にメガネを掛けた、そばかすのついた顔が愛嬌があって可愛らしい少女——ラトレイが、カウンターの下から姿を見せ言った。


「へっべええええ!?」

 突然カウンターしたから出てきたラトレイに驚き、驚き過ぎなリアクションで飛び跳ねた後、パブアキンは意識を失って倒れた。

 ナナイからだと見えないが、おそらく倒れたパブアキンを見下ろして、

「大丈夫ですか?」


 素っ気ない心配の言葉を言って、反応がないと知ると華麗にスルーしてナナイ達に向き直る。

「機兵が無くてお困りの様子のナナイさん!」

 ラトレイは真っ白なコートのポケットから一枚の紙を取り出し、ナナイ達に見えるよう広げる。


「大会に出場しませんか!?」

「いきなり現れて、いきなりどうしたラトレイ」


 とある大会へと、ナナイ達を誘うのだった。

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