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個営小隊-ランペイジ  作者: カイガラ商店
二章 愛し合うことは罪なのでしょうか
7/12

2-2 圧倒的な嵐

以下(ry

「……やっぱあいつも化け物だな。」


爽やかな草原に広がる巨大な魔方陣の中心でクレイスが呟く。この中で一番弱い私から見ればここに居る全員途方もない存在だが、そんなツッコミ意味ないだろう。


「そこに居るかのクレイスっ!!」


何やら目にもとまらぬスピードで叫びながら突撃してくるのはナリスみたいだ。

契約を交わされてから気づいたことだが、どうやら契約者の力によって私は強くなるらしい。どれだけ強くなったかと言えば、前が一として今が二千万倍には強くなった気がする。身体能力も強化された上、魔力はクレイスから無限に供給される。

そんな強くなった私では認識するのがほぼ無理なスピードで突っ込んでくるナリスは、突然倒れる。


「それどころじゃないわよ、少し落ち着きなさい。」


「はっ…早く拘束するなりなんとかして!私の忍術じゃあ長いこと持たないわよ!」


「すごいわねそれ、どうやってるの?」「は・や・く!!」


どうやら尚美の魔法らしい。何をしたのか分からないが、大量の汗を流しながら糸を操っている。端から見ればあやとりに本気になっている不器用な大人にしか見えない。が、ナリスを一時的にとはいえ無力化できるとは、尚美は正直舐めていたが化け物だった。


(精神操作の類だな、あの糸には触れるなよ。)


もう一つ契約による変化があった。クレイスの記憶から魔法の情報を受信出来るようになった。

見ただけでその魔法がどんな特性を持っているのか、注意する事が教えられる。たまに難しい話で頭が理解するのを拒む時があるがな。


「ミリア、やりなさい。」


「バックチョークッ!」


倒れた体を起こして組み付き、すぐに意識を取り戻したナリスが暴れ出す。が、何かを見つけたのか静かになる。

視線の先には魔方陣の中心のクレイスに向いている。流石に気づいたみたいだ。この事態に。


「時を……止めているのか?」


「そうみたいですよ、私達以外のこの世界の時の流れは止まっています。」


「……なるほどな、扉が開かなかったわけだ。」


時が止まれば、分子運動含め全てが静止する。川の流れを利用した水車をイメージしてみればわかりやすい。川は、流れ動いているからこそ水車を回す。だが川が枯れたら流れはなくなり水車は動かなくなる。

止まった物は壊れることはない。正確には、止まっている間はどんな衝撃に耐えることが出来る。実際には壊れてしまうような衝撃であろうと、時間が進まなければ壊れた状態になることは無い。

ナリスは部屋に閉じ込められたんだろう。扉が閉まれば完全な密室の完成を意味する個室で、のんきに寝ていたのだから。


(まあナリス含め私とクレイス以外閉じ込められていたんだけどね!それを自力で脱出するとかやっぱやべえこいつら。)


もう暴れないと感じたのかミリアは組付きを解いて、なぜが抱きつき直した。何がしたいんだ。


(大方、アリーシャから解除命令がないから形だけでも拘束しておきたいんじゃね?)


契約して得た事はまだまだたくさんあり、任意で相互テレパシーが出来るようになった。さっきの魔法に関する知識の供給もこの能力の副産物らしい。正直違いが分からん。


「で、何でこんなことをしているんだ?」


「畑を守るためよ。まだ未収穫の者やようやく軌道に乗ってきた果樹園も滅茶苦茶にされるのはいやだから。」


「別にそれくらいお前が守ればいいだろう。」


「明日から夕飯がゆでてないパスタになるけどいいかしら?」


暢気なものだ。畑とは、アリーシャの農園とクレイスの小麦畑らしい。小麦畑はともかく農園のほうはとんでもない規模で、従業員も百人越えの企業形態をとっているらしい。自分が作った物を壊されるのが嫌なんだろう。


(今は上を見させるな、お前が保護系統魔法かけてやってくれ。)


さっきはクレイスがかけてくれたある魔法は、脳の干渉を阻止するらしい。また契約で得た事の一つにクレイスの魔法を発動出来るようになっていた。どれもこれもアホみたいに魔力を使うからどのみち意味が無いと思っていたが、簡単な物ならいけるのか。


「ナリス、上を見ずに少し頭を貸してくれないか。」


ああ、冷静に考えれば私は何をしているんだ。いや契約だから仕方ないんだけど。でもこの体はまだ受け入れていない。禁忌に触れるとしても元の体を手に入れてみせる。こんなフリフリのついたメイド服なんて今すぐ脱ぎ捨てたい。


「上?上には天使しか居ないじゃないか。あとさんつけろ。」


「っ?!ナリス…さん、あれが見えているのか?」


「ああ、ラッパを構えたまま雲の近くで止まってるな。」


(…どうやら必要ないみたいだ。少し待ってな。)



「どうやら対策は取られていたみたいです。」

「そう、なら呼んできなさい。」

「はっ、十六位はどうしましょう。」

「事が終われば開放されるわ。さあ行きましょう。」



「………来た。お前ら!指定した持ち場につけ!!」


義輝とミリアがじゃれあっていたとき、その和ましい空気は消え去った。

クレイスが叫び、それぞれが一瞬で陣のとある場所へ移動する。魔法陣の外円と内線の頂点へと。

ナリスは私と一緒に行動するように言われていたが、私は足手まとい以外にならないと思う。だから留守番がいいです。(だめです)まじかよ。

少し遅れて私とナリスが到着し、魔方陣が活性化の証の光を放つ。


「──ウル・ブラン   」


その光は膨れあがり、私達を包み込む。


「さあ、化け物の力を魅せてこい!」



体に包まれた光が、粘度を持って私を包む。動けない、体が締め付けられるようだ。

横のナリスは無事なのだろう。体が締め付けられるようで首を動かせないが、私よりは遙かに丈夫なはずだ。何事もなく到着を待っているんだろう。

足が何かを捉え、光の粘度が消えていく。

これが、転送魔法。時空すらも超える禁忌の一つか。

(思っていたより楽だったな。もっと引き裂かれるような痛みかと覚悟していたが……)

光が霧のように晴れていき、真っ白な空間が広がる。石造りの荘厳な建物に見えるが私の知る人間の文明では建築不可能な形をしている。重力を無視しているような、矛盾があるような作りだ。

見ているだけですかし不安になるような、形容しがたい不快感を感じる。


「…おい、どこだここは?」


「クレイスが言うに…天界、らしい。」


私は神などの存在を知っているが、こいつら人間…人間?いやうん知ってるかも。時間止めてる化け物や、その空間で自由に動く化け物達なら大丈夫だろう。


「ほう…それは楽しそうだな。」


何やら不穏な言葉を言った気がするから聞こえなかったふりでもしよう。


(全員着いたか?あとナリスには聞こえてないだろうから隣に居る奴が伝えてやってくれ。)

(流石に時間を止めながら時空越えのテレパシーはめんどいからこっちからの一方通行だ。)

(まあなんだ、そこは好きなだけ暴れることができる。本気だしていいぞ。んじゃ。)


それは、血に飢えた肉食獣を村に放つように恐ろしく、首をはねるような残酷な事だろう。今このことばを伝えたナリスですら、歓喜の恍惚とした笑みを浮かべているのだから。

ここが神の住処でも、侵入者達はそれを超える存在なのだから。


「待っていたぞ、下民共。」


大型の鳥が羽ばたくような音と、真っ白な羽が竜巻のように眼前に広がる。

飛ばされる前のクレイスの説明によれば……


いいか、これから神の軍勢がこの地上に攻撃してくる。何で分かるか?神に会ったことがあるからだよ。

最初の攻撃はラッパの断罪っていう無差別攻撃だ。これは畑に影響が出るから今こうして時間を止めている。この状態なら被害は出ない。説明は後でする。

俺はここに居ないと時間を止めれないから、お前らを天界へ送る。そこはべらぼうに広いし頑丈だ。うまい果物も沢山あるし、常に暮らしやすい気候だ。…どうでもいいか。お前らにはそこで神をぶっ潰してきてもらいたい。

途中、天使が妨害してくるけど気にするな。むかつく奴らばっかだから殺して構わん。



あれは天使だろう。


「神聖なる神の御庭、薄汚れた貴様らが踏み締めることは万死に値する。」


うわ、うぜぇ。


「この私、第十二天使たるクッr…?!」


竜巻が霧散していき、その主が姿を現す。白銀に耀く大きな翼、長く纏められた金の髪、純白の煌びやかな服に胸の赤黒い血。

横を見れば、片膝をつきどこからか取り出した大きなライフル銃を構えていた。


「今日のご飯は手羽先かな?」


「……旨くてもあれは食べたくない…。」


私もこのような冗談が言えると言うことはまだ余裕があるということなのだろうか?いや、こいつらに少なからず感化されていることにしよう。

目の前の名前も知らない天使は崩れ落ち、光へと消えていく。

もしかしたら簡単に事が終わるかもしれない。こんな気味の悪いところ、悪魔的にもさっさと退散したい。


「ふむ…結構距離があるな。」


「そうか?あっても数㎞じゃ。」


「まあ私を信じろ、砲兵の距離感覚は伊達では無いぞ。」


さっき、天使を殺した銃はどこかへ消えており、代わり横に何か大きな物が見える。


「これは…?」


「エクラノプラン…と呼ばれた物だ。飛行機だ。私の魔法は『文明の歯車』と名付けていてな、知っている機械を魔力で形作る事が出来る。」


何やら変な形の飛行機だが、これに乗って行くのか?

というかプロペラがない飛行機ってなんだ。それってただのロケットじゃないのか。


「ほら乗れ。早く帰りたいんだろ?」


とりあえずそんなことは置いておいて、密かにこれかっこいいと思う私が居た。




ここはどこだろう。

あっ、クレイスの言ってた天界か。ていうことは好きに動いていいんだね。でもまずは合流したいな。

おっ、あそこにいるのが天子さんだね。


「よく来たな、私は西方守護を仰せつかった第十天使、ヒクルニス。」


あれ?羽があるのに鳥の匂いはしない。といよりこの場所には匂いがないのかな。結構寂しいな。アリーシャになでなでしてもらえないくらい寂しい。

…クレイスからの連絡?……へぇ、そう。


「立ち去れ、獣王よ。神域をこれ以上汚してはならぬ。」


それじゃあ遊んじゃおう。目いっぱい遊ぼう。


「私はね、人形さんと遊ぶのが好きなんだ。」


「私がお母さんで、マックスは学校の同級生なの。でも親友のマリーがマックスの事が好きみたいなの。どうしてあげようかな?」


「答えは一つじゃないよ。わたしはね、壊れちゃった。好きなら離れなければいいの、ずっとずっと抱き着けばいいの。そうしてあげたらね、二人ともダメになってた。」


この前呼んでくれた本は、鬼ごっこだったなぁ。友達が二人で鬼ごっこをするの。

永遠に。


「それじゃあ私が鬼ね!」

イーチ、ニーイ、サーン、シー、ゴ

「……さっきから何を…」

ローク、ナナー、ハチ、キュー

「…ねえ


                逃げろよ




「……着きましたか。」


白い、その一言に尽きる。

他の仲間なら何か感想でもいうんだろうが、あいにく私は不器用だ。行動で示すとしよう。

正面には、西洋のデザインの剣が床に置かれている。


「獲物を持たぬ者との闘うつもりはなかった、が、神域を侵されるわけにはいかない。」


「自ら剣を与え、刃を交えようとしたと。」


「ああ、どうやら杞憂だったみたいだがね。」


彼は置いていた剣を床に突き刺し、腰の剣を抜く。

刀身は光輝いており、魔剣であり私の刀と同等の技物であることがうかがえる。


「我が名は第二天使、サークヒム。神よりエクスカリバーを授かりし守護天使だ。」


「私の真名は、酒呑童子。鬼の元頭領。」


相手が名を語る、それには私も名を語り答えるしかない。

第二天使と言えば、この天界で三番目の実力者と聞いた。誇りを掲げる、至高の剣士だろう。

礼節を踏まえ、才に溺れず、自らを磨き上げてきたのだろう。強い。


「私の生涯で、貴殿ほどの剣士と剣を交わすことが出来るとは思っていなかった。」


「それはこちらもです。天使にもあなたのような人が居るのですね。」


「…場所が違えば、茶でも出したのだがな。」


「我らは剣士、言葉は飾りでしょう。」


彼は笑い、剣を中段に構える。切っ先を相対する者にぶれなく構え、闘気を高ぶらせる。よどみがなく、まっすぐなここちよい殺気。

私も腰を落とし、居合の構えを取る。


「「さあ、死合おう、」」


全速で抜刀し、全力で振り下ろし、空間は衝撃に震えた。



「あらあら?天使もたいして強くないわね。」


私が何度も隙を見せたのに、それに一切気づかずに大技に頼るバカだった。その大技も大したこと無かった。

それにむかつくわこいつ。おのれの力に溺れるんじゃないわよ。


「さて、ミリアでも迎えに行きましょうか。」


「お姉さん、僕と遊ぼうよ。」


あら、まだ居たのね。いいわ、今度は吸血鬼らしく血でも啜って殺してやりましょうか。


「僕は、第一天使のラミエル。よろしくね。」




コツ、コツ、靴の床を叩く音。

コツ、コツ、私の感情の音。

コツ、コツ、死に逝く物へ、死神の音。

「待て!ここは神の生わす神殿だ!この第四天使、レアストの許可無しに通れると思うな!!」

目の前には、槍を構える物が居た。一丁前に形だけは立派だ。

許可?

ふざけるな。

「神より授かりし我が神槍レーヴァーティンの餌食……に…」

何も必要ない。私は罪だ。罪に罪を重ねてなんになる。

「………」

「…来るな……私に近寄るなっ!!」

振りかぶっても、いくら出来のいい槍でも、所詮この程度。

私の服にすら届きはしない。

雑に扱ったせいか、物は槍を投げ出し倒れ込んでいた。

「……綺麗な装飾ですね、お土産にちょうどいいです。」

手にとって分かったが、見た目より遙かに重い。五十トンはあるだろう。

これは持ち手によって形を変えるらしい。三叉の槍から刺叉のような形に変わった。クレイスなら、さぞ綺麗な形になるだろう。

「これ、貰っていきますね。」

「まっ待て!!それは……」

「どうしました?取り返さなくていいんですか?」

第四天使とあろう者が、腰を抜かして泣きそうな顔をしている。体は震えていて顔は恐怖に引きつっている。

「…あっ……ああ……」

私にここまで怯えているとは、ある意味賢いのかもしれない。そうだ、あの家の人数も増えて家事も大変になったから召使いでも雇ってみようか。

「料理、洗濯、掃除、どれか得意な物はありますか?」

「来ないで……近づかないで………!」

「まあ、教えればいいですか。」

刺叉で首を抑えて、こう言えばいいかな。

「私の隷属になるか、惨たらしく弄ばれるか、自殺か。選んでください。」





「…どうやら私は外れを引いたらしい。」

下族の上で、それを観察している。

私の守護する空間にやってきたそれは、大した力もなく、魔力が特別多いわけでもない、魔剣の所持者でもない。

現に今もおどおどと小心者のようにゆっくりと歩を進めている。

もっといたぶりがいのあるのが来てくれればよかったが、これも仕事か。

「一射必中、死ね。」

私の破壊魔法と炸裂魔法を組み合わせた、超高密度の光の矢だ。跡形もなく、消し飛べ。

矢は心臓を貫き、爆発した。爆風は広がり、縮小する。これで、終わったか。

「他の者の所へ行くか。」



「秘技、下弦の月…!」

相手の魔法をを吸収して、その魔力を自分の者にする技術だ。

私は戦闘よりも、やっぱりこんなのが向いている。

「忍の心得、お楽しみに。」


「前回これやるの忘れてた。」

ーいやこれただの暇つぶしなんですけど。あとそれ私のセリフ。

「すまんすまん。」

ーえー気を取り直して、今回はクレセント=ハートネット=ゼロ、クレイスさんです。

「この世界の魔法の祖やってます。たぶん不死身だと思う。趣味はケーキ作りです。」

ー趣味を仕事にしてるんですか。

「いや、収入は魔結晶っていう…まあ、魔力でできた鉱石の生成が仕事だ。」

ー魔結晶って…

「まあ食わなくても生きていけるからあんま意味ないけどな。」

ー…不死身って便利ですね。

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