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個営小隊-ランペイジ  作者: カイガラ商店
一章 合流
2/12

1-2、火蓋

誤字脱字は各自で脳内保管しておいてください。

適当に読み直して改訂する場合もありますが気にしないで忘れてください。


ある日、町で一人の男が失踪した。

カールスという青年で、ドリズランド共和国の中で最も格式高いとされるホテルに就職したことを誇りにしていた男だ。それだけだ。

男は市場で恒例のもめ事を起こした後、町外れのケーキ屋で道を尋ねていた。消息はそこから途絶えている。

当然警察が捜査に乗り出し、消息の途絶えたといわれている町外れのケーキ屋の主人、クレセント=ハート=ゼロの元に事情聴取をしにきていた。


「……まあ、予想通りですな。お手数おかけしました。」


警官は頭をかきながら、クレセント=ハート=ゼロ(クレイスと呼びな)に頭を下げその場を立ち去る。


「……帰りましたか?」


「ああ、「あんたに限ってこんなことはしないと思うが、一応ね。」ってよ。仕事とはいえ大変だな。」


ケーキ屋は本日休業日で仕込みだけがある。といっても魔法で生地や果物が傷まないようにするだけだが。


「まったく……クレイスなら記憶でも消して完全犯罪を成立させますのに。」


「なにそれ褒めてるの?けなしてるの?」


「えっ、褒めているつもりですが…?」


クレイスはあきれながら生地に魔法をかけていく。かける魔法は時間抑留、停止だ。ちなみにどちらも禁忌レベルの魔法である。


「掃除は終わったか?」


「はい、クレイスが終わり次第動きましょうか。」


クレイスの笑顔は獲物をいたぶる邪悪な表情が張り付いていた。



魔法、かつては科学に隠れて日の光を浴びることのなかった技術。

現在の社会においては科学と同様に不可欠の存在である。

生きている物は誰でも魔力を持っており、程度に差はあれど魔法を行使することができる。ライター、ペンライト程度なら誰であろうと魔法で代用できる。これは魔術と呼ばれる。名前の通り、生活用具の代用などが主な使用例だろう。

次に人体に傷をつけるような攻撃魔法、工業機械に組み込まれるような高性能な魔法など、努力次第では誰でも使用することができるが、ある程度才能が物を言う領域だ。軍事的に使用されてもおり、一般人が使用するには免許が必要になる。これは二次魔法と呼ばれている。

また、稀に遺伝子情報に組み込まれた特別な魔法を扱う者がいる。彼らは強力な、殺傷能力を持つ魔法を行使することができる。その魔法を血有魔法と呼ぶ。血有魔法は一族で遺伝する。

さらに全ての魔法の上が存在し、天変地異、次元生成、環式特異点の操作、召喚魔法、時間操作、などの禁忌がある。それらは神の奇跡とも呼ばれる。

扱える人は現代には存在せず、神の落とし子と呼ばれた過去の偉人数名が個人で扱えたのみ。

その一人は魔法の始祖、クレセント=ハート=ゼロである。




「────で、特徴は以上かな。」


「ああ、警察だけで無く探偵まで動いているとは…」


特徴は、まあ言ってしまえば普通だ。普通を探せばいいと言うことだ。

この町はとても単純な碁盤の目の形をしている。どこにいても視線は通り、隠れる所なんてない。また小さな町であり、噂が広がるのも一瞬だ。

探すとするなら町外れの森か、地下水道ぐらいだ。誘拐なんてこの町でやろうとするバカは居ないし家出なら探してやる気は無い。自殺なら回収はしてやろう。もしかしたら森に住みついた奴らの仕業かもしれない。

同僚が警察に失踪届を出したようで、その同僚がこの町を離れる前に話を聞けたのは楽でよかった。


「よし、行くか!」


愛車にまたがり(ママチャリ)微妙に古めかしい石畳の町並みを颯爽と駆け抜ける。風を切る音がさらにギアをあげろと叫んでくる。

まあ、魔法で飛んでいくほうが速いんだが。しかしこのペダルの重みや古典的な方法で動くコイツもなかなかいい物だ。エンジンを積んだ物とは違って振動も少ない、自然に優しい、何より楽しい。

自転車で全力で飛ばせばすぐに町外れにでて、石畳から叩かれた土の道が広がる。ここからは飛んでいこう。私はバイクレーサーと違って舗装されていない道を走れるわけでは無い。やってみるとわかるがあんな恐ろしいことよくやるもんだ。

近場の木に自転車を建てかけ、鞄から赤色のベレー帽を取り出す。

この前作ってもらった魔法具だ。私は血有魔法しか使えないから特別に飛行アイテムを作ってもらったわけだが、私の体格でこのベレー帽の形をした魔法具をつけるのは狙っているとしか言い様がないな。170でもあればお洒落に着こなせるだろうが、私は145のまな板だ。子供らしい可愛さが生み出されてしまう。大人扱いされたいなぁ。こんな身なりでも20は超えてるんだけどなぁ。

ため息をつきながら、この体格のおかげで子供料金で本が買えるじゃないか、と自分自身に納得させながらベレー帽をかぶり、魔力を通して起動する。体が風に包まれ、私の体の重量がなくなる。こいつはじゃじゃ馬で、使い馴れるのには時間がかかった。何度地面に顔をぶつけ、醜態を晒したことか。

まあ、その甲斐あって今こうして高速に空を飛べているわけだが。

だいたいレシプロ機の限界速度くらいは出てるか。これでも製作者曰くまだ遅いらしい。試算では音速は出るらしい。

目的の森の上に到着し、魔力の探索を始める。生きているものには大体魔力が存在しておりそれを探知することで大体の居場所がわかる。


「…………人間の生体反応がやけに多いな。ピクニックでもしてるのか?」


森の中央付近に五百人近くの反応が感じられる。

中でも中くらいの反応が一つ、私と同レベルの反応が一つ。これは面白そうだ。


「…先手必勝……弾道観測射撃用意…!ってにゅや?!」


「やあ、この時間に外に居るなんて珍しいじゃん。忍法、雲隠れの巻。」


飛行している私の体を綿菓子のような雲が包み込み、不意の事に私はそれを思いっきり口の中に入れてしまう。落下自体は止まって雲の中を漂っているが、ん、これ本当に綿菓子みたいだな。甘くておいしい。


「ふぅははは!この佐子倉家六代目頭目、佐子倉尚美の気配は感取れなかったみたいだな!」


「もぐもぐもぐもぐ………」


「……おーい?って何食べてんの?!」


いや普通においしい。少し改良すれば商品化できるだろ。

「いや、まな板の君からこんな綿菓子を生み出す魔法が出てくるとは思わなくてね。つい。」

最初は羽虫のごとく潰してやろうと思ったが、この綿菓子に免じて許してやろう。私より5mm小さいくせにいいものを作る。


「まあそれはいいとして。」「よくない!!私は魔力があんまりないからこの雲回収しないといけないんだよ!!それを食べちゃってさー!!」

るから。」


「まったく……で、なんでこんな時間にこんなん処にいるわけさ?あと、あんたの攻撃は森が焼失するからやめなさい。」


「例の失踪事件さ。面白そうだから嗅ぎまわってる。さっき装填していたのは徹甲弾だから問題ない。」


何も分かってないけどね。


「…噂をすればなんとやら、目的地上空だ。」


反応はこの真下、飛び降りるか。ベレー帽への魔力供給を停止

綿雲から飛び降り、着地と同時に魔力を錬る。


「…禍禍しいわね。」


横に尚美が降り、雲を食べながら降りてくる。そうやって回収するのか。

私一人でも十分だが、まあいい。トリッキーな魔法は尚美の得意とするものだ。謎ときには役立つだろう。

さて、見渡しても何も無いただの森に見えるが、ある空間に手を伸ばせば指が消えていくようになる。魔法が行使されているようだ。


「………ナリス、ちょっとこれ…」


尚美が私の名前を呼び、そちらを振り向けば、艶のある美味しそうなリンゴの木が群生していた。

そして、その木は、人の気配を出していた。


「100……いえ、200はあるわね。」


目についた一つの木に近づき、実をもぐ。


「………………そこか…」


「ナリス?!」


私の後方、ゲート付近に向かって魔弾を投射する。空中に赤色の閃光が無数に走る。とりあえず三百門あれば炙り出せるだろう。

魔弾はいろいろ混ぜておいた。爆発し、木々を貫通してゆく。ゲートが魔力の供給過多を起こし砕けたガラスのように瓦解していく。


「…みーつかーちゃった?」


「突然何をするかと思ったら…ゲートがあったのね。頬をかすめたわよ!」


幹を貫かれた木が軋みながら倒れていき、その隙間から太陽の光が差し込む。

私が攻撃したエリアの真ん中に、褐色の肌とマントを纏った女が光に照らされながら立っていた。


「この私のミラージュを破るなんて、なかなかやるじゃない。」


「そこに居るのは気配で分かっていたが、犯人と決まっていたわけでは無いからな。この木が教えてくれるまでわな。」


実をもいだ時、彼女の記憶が少し流れてきた。そこに事の経緯やあの女な事が刻まれていた。

そしてこの気配、上空で感じた中くらいの気配だろう。そこそこのやり手だろうが、相手との力量差すら把握できないレベルなら話にならないな。


「御免なさいね。私戦闘は苦手なの。」


「……逃がすとでも?」


「荒事は好きじゃないのよね」


次弾を装填、弾種拡散弾、砲門400門。空中に私の魔力を溜め込んで今か今かと解放の時を待っている。尚美もしぶしぶクナイを構えたようだ。

私の明確な脅しを振り払うかのように彼女は背中に、悪魔の象徴である大きなコウモリの羽を生やす。


「悪魔か、立派な羽だな。」


「そうでしょう。貴女のスピードじゃあ追いつけないわよ。」


「ああ、錬金術師に渡せばいい金になりそうだ。」


「あげないわよ、それじゃあね。おちびさん。」


羽ばたき、あっという間に空に飛び出す。

なるほど確かに私では追い付けないスピードだ。

私では追い付けないな。


「逃がさないわよ!」


颯爽と空を走る人影。尚美はニンジャだ。スピードだけなら誰にも負けないだろう。彼女は足の行く先々に先ほどの綿雲を作り出し、あっという間に悪魔の背後に迫る。

短距離の高速移動の魔法を連続で出すことによりあの速度を実現しているわけだが、下から見る分には少し間抜けな光景だ。


「そう簡単に捕まらないわよ!」


悪魔は右に回転しながら移動し、尚美の背後につく。尚美も負けじと曲芸のような動きでつかみにかかる。


「空縫い」


急旋回する悪魔に食いすがり、紐のついたクナイを明後日の方向に投げレールを作り出し、高速で移動し悪魔の正面に回り込む。回り込むと同時に手裏剣を投げ進路を制限する。


「……あのくらい私も飛べたらなぁ。」


「しつこいわね…っ!?」


背後を鬱陶しそうに一瞥して、悪魔は前をむき直す。

抜き身の刀をを振りかぶる鬼の居る所を。


「よくやった!」


「うぉりゃぁぁ″!!」


刀の背で悪魔をなぎ払い、鬼はそのまま悪魔の後に続いて森に落ちていく。

突然のことで理解が及ばないのだろう、それか痛みで頭が回らないのだろう。回避行動の類を忘れているぞ。照準を修正する必要がない位にな。

どうやら私のことを忘れているようだ。


「弾種変更!拘束弾!斉射!!」


なんとも失礼な奴だ。

私の周囲から待機していた魔弾達が、轟音とともによろけている悪魔に向かっていく。

着弾寸前、弾達は霧散し球体状の膜を形成する。


「ぐっ……なっ…なによこれ…」


「お前を捕まえるための簡易的な檻さ。名前は…めんどくさい、玉でいいか。」


空中で鬼が尚美の出していたレールにつかまり、それを足掛かりに悪魔の封じた玉に飛び乗る。


「それは特別製でね、内部からの干渉はできないが、外部の干渉は受ける。」


鬼は手を振りかぶり、その手には鞘に収まった刀が握られており、叩きつけた。

つんざく轟音と共に玉はたたきつけられ、大地を振るわせる。当然中に居る悪魔はピンボールのようにあちこちを叩きつけられ、死んでいてもおかしくないだろう。

悪魔だから死ぬことは無いだろうが、どのみち回収する必要がある。面倒だが行くか。放っておいたら鬼が暴走して玉を壊すかもしれない。

さて、大いに活躍してくれた鬼だが、実は私の仲間の一人だ。さっきのニンジャの尚美も私の仲間だ。鬼はなぜか探知できないから居ることに気づけなかったけどな。




森の入り口には詰め所がある。

リンクエリアNo.258、迷落の森。

リンクエリアとは今居る世界を現世とし、魔界、天国、地獄、の確認されている異世界へつながる門が開く場所。

森は広大で、この詰め所一つごときでは迷い込む者を防ぎきれない。ゲートの影響で磁界も滅茶苦茶、太陽の光もまともにささない。そのため自殺の名所とも言われる。


「おーい……また誰も居ねぇ。」


詰め所の管轄は、実ははっきりしていない。誰が、どのように、いつ、何のために、作られたのか誰も知らない。

詰め所の中は、部屋の中心にテーブルと椅子があり、壁沿いに本棚が一つとクローゼットが一つ、小さな台所がある。

つい昨日まで使われていたかのようにきれいに整頓されており、本棚の片隅には栞の挟まった小説もおかれている。


「勝手に見るぞー。」


本棚にはどういうわけか、この森に入った者の情報が入れられている。キノコを採りに来た者から、自殺を確認された者まで。そして、今、森に入ろうとしている自分の名前も。

辞書のように規則的に並べられた名前の中に、失踪して今捜索中の男の名前があった。


「昨日の夜8時……目的なし…か……」


おおかた予想がついていただけにつまらない。

目的なし、つまり自らの意思では無い事を表している。ふらっと立ち寄っただけの者でも、蝶に惹かれたやら気になったからとか、何かしらの理由は書いてある物だ。


「さっきの音だと、別のやつも動いているようだな……」


まあ期待はしていない。むしろ余計な仕事を増やされるよりかましだ。

俺は自分の役割と目的がこなせるなら文句は無いが、予定外の仕事を増やされるのは我慢ならない。


「こんな所か、ありがとな。」


本棚に本を戻し、今、いやずっと居ない詰め所の主に向かって礼を言う。

この詰め所にはこれまで何度も訪ねた。時々夜を過ごすこともあった。が一度も姿を見たどころか生活感すら見えない。結界を張ってみたり探索してみたりしたが、見つからなかった。

しかし、速いときには五分程度で内容が更新されている。いったい誰がどうやって、何のためにこれを続けているか分からない。


「いつかその姿、拝ませてもらうからな。」


さあ仕事の始まりだ。

詰め所を後にするとき、風が優しく頬を撫でた。


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